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クズの槍使いが自由に生きて英雄になる方法~手配No.1072 ソード=マスター~  作者: 木庭 秋水


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第3話 不思議な槍

次回の投稿は、このまま5話まで連続投稿します。




 扉は、人の背の倍はあろうかという高さがあった。


 無駄に威圧感を振りまいている。


 金属で補強された木製で、そこかしこに彫り物が施されていた。衛兵のハルバードを拾って叩くと、ゴンゴンと重い音が返ってくる。けっこう分厚い。


 鍵は……。うん、かかっていないな。


 扉を押せば、番がギギギと軋みながらゆっくりと開いていく。


 腰をため、グッと下半身に力を入れて目いっぱい押す必要はあったが、抵抗することなく扉は口を開いた。


 おーし。こういうのは宝物庫って決まってんだ。何があるかな~。


 ワクワクが止まらない。


 人を呼びつけておいて、こんな目に合わせてくれるような奴からは、誠意というものを徴収する必要がある。


 強奪? 強盗? 知ったことではない。


 そうとも、これは当然の権利だ。


 ってぇことで。


 例え小国と言えども一国の宝物庫。しがない冒険者を喜ばせてくれるお宝くらいは溜め込んでいるだろう。


 スキップをしながら奥へと進んだ。


 ……のだが。


「……くそ。大ハズレだ」


 心躍らせながら入った部屋は、綺麗に整えられた品の良い小さな部屋。


 これが何を意味するのか。


 期待したものは『何もない』ということを意味するんだよ、チクショーめ。


 宝箱? ──ない。溢れ出た金貨? ──ない。棚に綺麗に並べられた高価そうな装飾品? ──ない。


 ない、ない、ない。


 なん・にも・ないっ!


 あるのは、たった一つの台座に飾られた『小綺麗な緋色の槍』一本。


 それだけだ。


 このガザ王国は古の槍聖ラーベの起こした国だと聞く。それなりの槍の一本くらいあってもおかしくない。


 だが、一本……。


 力が抜けた。


 槍の長さは二メートルちょっと……二メートル半までいかないくらいか。


 穂先だけで五十センチってところで、シャフトとグリップには何やらよくわからん文字? (がら)? そんなんがビッシリと彫り込まれている。


 ────G〇▼G▼■R△KS────


 文字ってのは、わかるように書くべきだと思うんだ。意匠が懲りすぎていて、うまく読めねぇよ。


 たぶん銘……だよな?


 よくわからん。ググレカス?


 ああ、くそ。もう、なんでもいいや。


 ここまでやったのに、宝石の一握りもなしかよ。


 あまりの貧果に泣けてくる。


 だが、何もないよりはマシだ。小綺麗だし、多少の値くらいつくだろう。


 槍に手を伸ばし────握る。


 その時だった。


 槍がいきなり光りだした。そして、見る見る間に輝きを増す。


 ぬぉっ。なんなんだよ、これ。


 反射的に槍を放った……つもりだったが、手から離れない。一方で、輝きはますます強くなっていく。


 クソッ、なんてこった。こんなトラップで終わるとは……。


 ふがいなくて涙が出てくらあ。


 思わず涙がちょちょ切れた。


 しかし槍の輝きは、俺の気持ちなど無視してどんどん強くなっていく。そろそろ目を開けているのもつらくなってきた。


 そして、次の瞬間────。


≪…………♪≫


 な、なんだ??


 胸に流れ込む一瞬の感情。


 喜び? 信愛?


 だが────。


 スン。


 それまでのことが嘘だったように、槍は一気に輝くのをやめた。


 そして、それと同時に流れ込む何かも消える。


 あまりに強烈な光だったので、目はまだチカつく。目を擦りながら、握ったままの槍を見てみる。


 え? なにこれ。


 先ほどまでは何もなかったはずだった。


 だが、シャフト部分に俺の名が光って浮かんでいる。


 さっきから一体なんなんだよ? マジで勘弁してくれ。


 いきなり光るだけでも異常なのに、今度は俺の名前? なんで、俺の名前が?


 そう思った瞬間、光って浮かんでいた文字も消えた。


 同時に、槍そのものが周囲に溶けるようにして消えていく。


 嘘だろ。こんなんありか……。


 思った時には、影も形もなくなった。


 訳が分からなかった。


 だが、それ以上に絶望させたのは、これで今日の稼ぎゼロが決まったという現実だった。


 なんてこった。ここがせめて普通の宝物庫なら……。


 がっくりと膝から力が抜ける。


 普通の宝物庫なら、他にもなにがしかあったはずなんだ。だが、ここにはもう観葉植物しか残っていない。


 こんなもの俺にどうしろと。


 いっそキャベツでも植えてくれていたら、今晩の飯にぐらいはなったかもしれないのに。


 青虫じゃねぇんだ、青虫じゃ。こんなもの食えネェヨ。こんちくしょう。今日は厄日だ。


 こんな部屋になど、もう用はない。


 さっさと部屋を出る。


 だが、捨てる神ありゃ拾う神あり。視界に入るその輝きに、思わず目を奪われ頬がゆるんだ。


 ……なんだ。あるじゃないか。


 心躍った。


 入口に転がっている二人の衛兵……立派な鎧を着ている。横にはハルバードも転がっている。


 神はいた。


 ウッキウキで、手前の男の鎧に手をかける。


 男の裸になんぞ興味はない。が、着ている物は別。


 とはいえ、欲張っちゃいけない。


 両方剥いて片方担いだら、一発で疑われる。ここは一式で我慢だ。


 だけど、これ……普通には売れない。紋章ついているし。


 町の武器屋なんかに持ち込んだら、即通報。報奨金を手にして喜んでいるオヤジの顔が目に浮かぶ。


 ってことで、あれだな。あそこしかない。


 手は止めず、ひたすら『解体作業』。


 ただ、さっきまでと違って気分はアゲアゲ。悪い気分じゃなかった。

お読みいただきありがとうございました。


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もちろん、リアクションだけでも結構ですので、ぜひよろしくお願いします! 無茶苦茶作者のモチベーションが変わります。




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