第2話 ガザの宝物庫
次回の投稿は、このまま5話まで連続投稿します。
ぬ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛~~~~ッ!
廊下に飛び出した俺を待っていたのは衛兵の群れだった。隊長格の者が咥えた笛を吹き散らす。
だぁぁぁぁ、無茶しやがって~~~。
──右、──左、──左、──右。
力の限りに逃げまくった。
このくらいで俺をどうこうできると思うなよ? 盗賊団のアジトを襲ったときの『テメー殺す』感は、こんなもんぢゃねーよ。
石の螺旋階段を五段飛ばしで駆けあがり、窓から外に抜けては塔の外壁を這い降りる。再び建物に入って隠れ、石の階段を飛び下りた。
どんだけ湧き出てくんだってーの。少しは自重しやがれ。
それに……ここはなんだ?
本来なら、地下に逃げるなんてするべきじゃない。
だがやむを得ず降りたら、レンガ壁に石畳の小奇麗な通路が続いていた。一定の間隔で、両壁に松明もかかっている。
下も……。
キレイに掃かれていて小石ひとつ落ちていない。そんな石畳の廊下が、奥の方まで続いている。
なんだ、ここ。
松明の煙がかすかに流れている。
入ってきた場所の他にも、どこか外に繋がっている所があるようだ。
一階に戻れる階段がもう一つある?
俺を探す声が、後ろから聞こえてくる。
戻るのは止めた方がいいな……。
奥へと進んでいく。
カツカツと鳴る足音が、思いのほか響いた。レンガの壁で反響している。
ちっ。
こんな狭い道で囲まれたら、さすがの俺様でも終わってしまう。
仕方がない。
革靴を脱ぐ。靴ひもをつなげて首からぶら下げた。足の裏は汚れるし冷たいしで、おもっくそテンションが下がるが仕方がない。
できれば脱ぎたくない。でも、大量の衛兵との鬼ごっこはもっと嫌だ。
とりあえず、そのまま奥へと進んだ。
曲がり角で、敵にバッティングしないことだけを祈る。
ん? 明るい……。
少し進むと、開けた空間が見えてきた。これまでの薄暗い松明の明かりとは違う感じ。たぶん、外光だ。
気配を消しながら近づいてみる。ちょっとしたホールみたいになっていた。
小奇麗な部屋で、B1から1Fまで突き抜けている。光はそこから入っていた。
ただ、妙に小奇麗すぎる……。
それに、地下にある部屋にしては、なんというか『品』がありすぎる。
石畳の床の上には赤い絨毯が敷かれ、ホールの白壁にはタペストリーもかかっている。観葉植物も飾られ、あまつさえ小さいが水路まであった。
壁には石の獅子。きれいな水をジョロジョロと吐き、それが跨いで通れる程度の水路を通って流れている。
そして……あれだよな。
チラリと視線を向ければ、やたら荘厳な扉。
こんな小国の王城には、不似合い極まりない。
その扉の両脇には、謁見の間と同じように、ハルバードを持った衛兵が一人ずつ立っている。
なんだ、ここ?
いや、その前に。とりあえず衛兵が二人……と。
どうしてくれようか。
まともに戦ってもいいが……騒ぎを聞きつけた他の衛兵どもに駆けつけられたら厄介だ。
とりあえず、懐をまさぐる。
と……あった。
良い物残ってんじゃん。
日々サバイバルな生活をしていると、いざという時の備えは欠かせない。
感触でわかる。これは──眠り玉だ。
この前、モンスターの巣を襲った時に使った。
胸元から手を引き抜くと、間違いなく眠り玉。
都合がいいことに火もある。
壁に松明が燃えている。導火線に火をつけるくらいは訳ない。
おーし、この手でいこう。そうしよう。
メーカーの謳い文句では『不眠症の魔神も眠る』だ。
たかが人間二人くらい、イチコロでなくてはならない。まあ、今まで失敗したことはないが。
でももし、ここで失敗するようなら過剰宣伝。メーカーの工場燃やして成敗だ。
ここ一番で役に立たないものなど、この世に必要ない。
ナムサンッ!
ハゲから教えてもらった祈りの言葉をつぶやき、眠り玉を放った。東方からやってきたとか言っていたが、今でも元気にしているだろうか。
地面に落ちる前から、眠り玉はモウモウと煙を上げる。
静けさに包まれるホールを、ゆっくりと飛んでいった。扉横に立つ衛兵ふたりは、突然のことにポカンと呆けたままだった。
「げほっげほっ。な、なんだ?」
なんとか声をあげたのが聞こえてくる。すでに視界はかなり白くなっていて、相手の姿は見えない。
しかし、その直後。
玉の吐く煙の勢いは一気に強まり────。
ドシャ。ドシャッ。
二つの大きな何かが倒れこむ。そんな音が聞こえてきた。
よーし。いっちょあがりぃ。やるじゃないか。
工場よ、今回も無事生き残ったな。また買ってやるから、しっかり作っておけよ。
事がうまくいくと足取りも軽くなるというもの。ルンルン気分で、床に転がる衛兵の間を抜ける。
しかし……なんだな。
呆れるほどにデカい。
扉を見上げていたら、首が痛くなった。
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