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クズの槍使いが自由に生きて英雄になる方法~手配No.1072 ソード=マスター~  作者: 木庭 秋水


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第28話 繁栄の門

明日8:00に次話投稿します。




「ニヤニヤと気持ち悪いの」


 4Fへ降りる階段に着く頃には、フィリも回復していた。


 それを証明するかのように、ご機嫌な俺に手厳しい悪態をぶちかましてくる。


 だが、いまの俺は寛大だ。


 フィリの悪態くらいなんともないぜ。


「今晩の飯はゴージャスにいくぞ。肉……ぜったい、肉だ! 兄さんのところで一番でかい、棍棒みたいな肉を食うぞ! しばらく豆は食いたくない!」


「……ずっとお豆だったの?」


「おう! 食えればよしのソードさんも、豪華な飯が嫌いな訳ではないんだよ。フィリちゃん」


 スチャっと右手でサムズアップ。


「ふーん」


 わかったようなわかっていないような顔で相槌を打つ。


 まあ、これから嫌でも俺の言葉の意味がわかるようになる。


 そんな『幸せな顔』ができるのも、今日までだ。


 昨晩はハルクの親父に甘やかされたようだが、今後の日々は『強制サバイバル』。


 フィリの奴も、すぐに『旨い飯』のありがたみを知るだろう。


 そんなクダラナイ会話を交わしながら階段を下りると、すぐに『あっ、そういうこと……』と理解せずにはいられなかった。


 階段を降りたら、そこは『迷宮』ではなかったから。


 ただ、まっすぐに伸びる通路。


 壁のランプに照らされて、少し奥にはもう扉が見えている。


 その扉は、どんな冗談だとツッコミ待ちの『桃』の形。


 金色に輝くクソでかい桃の門が出迎えてくれていた。


 兄さんから話を聞いていなければ、俺は今この瞬間、怒り狂って発狂していたことだろう。たぶん、間違いなく。


「……桃なの」


 フィリも、目を真ん丸にして呆然としている。


 悪態ばかり吐く口をポカンと開け、今ばかりはなかなかにプリティーだった。


 前傾姿勢になってまじまじと見ているフィリのケツが、目の前に浮かんでいる。


 側まで近づいたのにも気づいていない。


「ホレ。ぼさっとしてないで先に進むぞ」


 パチン。


 ケツを叩いてやった。


「きゃん。お尻を叩くななの────ッ」


 バネ仕掛けの人形のように反応したフィリが即座に振り向き、ぎゃーぎゃーと騒ぎ始める。


 無視した。


「騒ぐな、馬鹿者。ほれ、行くぞ」


 こんな場所で遊んでいる時間などない。


 今日はぜったい肉。


 譲れない闘いが、俺を待っているのだ。




 輝く『金色の桃』。


 御大層に、角の生えたモンスターと戦うファイターの姿も彫られている。


 側には『犬』『猿』『雉』。


 聞いていた通りの門だった。


 まあ、ここまでなら苦笑いの一つでも零すだけだ。


 問題はここから。


 扉を開き、潜った先で鳴り響く『拍手』と『クラッカー』。


 思わず大事な愛槍を、地面に叩きつけるところだった。……ギリギリで踏みとどまったが。


 フィリの奴も、言葉もなく再びポカンと大口を開けていた。それでも羽だけは絶えず動いていたのは、妖精の習性なのだろうか。


 とにかく『大歓迎』された。


 覆面のおっさんが一人に、戦士が二人。聖職者が二人に、魔法使いが二人。


 冷静な目で見ると、それぞれがかなりの達人だと思われた。


 でも、そんな方々が万歳三唱で出迎えるものだから、どうしても……アレだ。


 彼らがギルド職員だというのも、聞いていた通りだった。


 だが、俺は彼らについて勘違いをしていた。


 本物のカンカーラ『へ』の壁だと思っていた。


 だが、違う。


 彼らは、本物のカンカーラ『から』の壁だった。


 何かの間違いで、下のモンスターが上がってきた時の防波堤らしい。


 実際に、そんな事になったことはないとのこと。


 だが、なくすことの出来ないお役目なのだとか。


 ガリメデのギルドは、意外にもきちんと仕事をしているようだった。


 大概のギルドの仕事は、もっと雑だと聞いている。


 そして、彼らから渡された『グリーンメダルリボン』。


 木製の小箱に入った緑色のリボンだった。


 中央に金色のメダルがあしらわれている。メダルには魔力が込められていて、『特定の装置』の作動キーになっているとのこと。


 つまり、繁栄の門を潜った玄室のさらに奥。


『本物のカンカーラ』へ降りるためのキーアイテムだ。




 まだ呆然としているフィリを頭の上に乗せ、奥へと進む。


 玄室を抜けた先も分かれ道などなく一直線。


 すぐに突き当たった。


 そこにあったのは、今まで嫌というほど潜った木製の扉ではなく、巨大な金網の扉。


 奥も見える。巨大な滑車があった。


 そして、金網の扉の横にはボタンが一つ。


 押してみれば、腹の底に来る重低音を響かせながら装置が動き始めた。


「な、なんなの?!」


 フィリの奴は完全にビビってしまっている。


 俺の髪の中に隠れるように伏せてしまっていた。さっきから、おもっくそ髪を握りしめられていて非常に痛い。


 ハゲないでくれと祈るばかりだ。


 そして、祈っていると金網の向こうに現れる部屋。


 どうやらこの装置は、小さな部屋を上下動させる装置らしい。


 兄さんが言っていた『エレベーター』で間違いなさそうだった。


 普通なら警戒心マックスで、ここで立ち往生だろう。


 しかし、兄さんに奢ったエールは無駄ではなかった。


 さっさと乗り込み、下に降りる。


 エレベーターの内部には5つのボタンがあった。


 おそらく、5Fから9Fに対応している。


 ……と、ここまではよし。


 とりあえず5Fで腕試し……とエレベーターを降りた直後、兄さんの言葉を思い出すことになった。


 曰く……。


『1F~4Fで詰まったり死んだりするのは論外。それを越えられる者が死ぬのが、本物のカンカーラだ』

お読みいただきありがとうございました。


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