第27話 三つ目の鍵
本日21:00に投稿します。
朝起きて準備を終えても、フィリの奴はまだ目をコシコシと擦りあくびを連発している。
ハルクの親父と、相当遅くまで遊んでいたようだ。
こちらの気力まで持っていかれかけるが、グッと耐える。
そして、しばらくは頭の上に乗せて歩いた。
「ふみゅ……。まだ眠いの」
「馬鹿者め。お前はまだわかっとらんな?」
「何をなの?」
眠気まなこのままのフィリ。
まだふみゅふみゅ言っている。これだからお子ちゃまは。
「いいか? 俺と一緒に来るってことは、金がないのは日常茶飯だと思えよ? つまり、今晩飯を食いたいなら、キリキリ働け」
「…………甲斐性なさ過ぎて笑えないの」
ふぅと、エラソーにため息など。
なんたる言い草だ。
俺は間違っていないはずだ……たぶん。
「うるせー。ってぇことで、今日は『雉の鍵』とやらを取りに行く。んで、あわよくば4Fの『繁栄の門』を突破だ。そこを越えたら実入りにも期待できる。気合い入れていくぞ」
「仕方ないの。ご飯なしは、さすがにヤダの」
ぼやくフィリを頭に乗せたまま、歩く足を少し早めた。
すべては金のために。
宝箱に収まったお宝が脳裏に浮かぶと、足取りは自然と軽くなった。
『雉の鍵』のある部屋は、3F北東の奥にあった。
坑道のような道の先、ぶ厚い古びた木製の扉が出迎えてくれる。もう何度も見た、番が『良い音』を出す扉だ。
俺もフィリも身構えながらモンスターに備えたが、見事に空振り。
ひどく静かなお出迎えだった。
多くの玄室がそうであったように岩盤層をくり抜いたような造りなのは変わりなく、広さも特別広くない。
この部屋が今までの部屋と違うのは、きわめて『魔法魔法している』ということ。
部屋の中にランプは設置されていない。
それでも十分に明るい。
長くいると目が痛くなりそうな『青白い光』。
そんな光で部屋の中は満たされていた。
「ソードが言ってたの、あれなの?」
部屋の中央には魔法陣が描かれている。作動していると訴えかけるように、青白い輝きを放っていた。
陣の周りにも、人の背丈ほどある柱が四本。
その柱の上には水晶球が置かれている。
四つの水晶球も、魔法陣同様に青白い光を放っていた。
だが、フィリが指さしているのは、魔法陣の中央で浮かんでいるそこそこデカいブツだ。
「ああ、あれだろうな。……うん、間違いない。中に鍵が『埋まって』いる」
チャックの兄さんが言っていた通り、ひと抱えはありそうな八面体のクリスタルの中央に、鍵は『置かれて』いた。
確かに、これを町まで持ち帰るのは一苦労だろう。
ここに魔術師を連れてこい──そう教えてくれた兄さんには感謝しかない。
透明な羽を細かく動かしながら、フィリはクリスタルの周りをぐるぐると回る。顎に指を添えながら、小さな眉間にしわを作って一生懸命に考えている。
「……う~ん、うん。大丈夫なの。行けると思うの。取り出す?」
クリスタルの周りを回っていたフィリが、こちらを振り向き確認してきた。
俺の答えは一つだ。
「ああ。行けそうなら行ってくれ。任せた」
「わかったの」
頷く俺に元気に答えるフィリ。
再び眉間にしわを寄せ、精神を集中し始める。
そして、俺には意味がわからない呪文のような言葉をつぶやき始めた。
クリスタルは、明確に反応を示す。
明滅していた光は、力を失うように弱くなった。
それを見て、フィリは力強く言葉を放つ。
するとクリスタルの中にあった鍵は、フィリの言葉? 命令? に従うように、ゆっくりと動き始めた。まるでゼリーの中を突き抜けてくるように、ヌルリと移動している。
そして、ついにはクリスタルの外に飛出し、空中に浮かんだ。
フィリが、チラリとこちらに視線を向けてくる。
俺に『取れ』と言っているようだった。
額には玉の汗が大量に浮かんでいる。見た目より、余裕はなさそうだ。
促されるまま、魔法陣の中に俺も入った。そして、浮かんだ鍵を掴む。
それを見たフィリは、
「はふぅ────」
大きなため息を吐きながら体中から力を抜いた。
クリスタルは、そんなフィリに呼応するように再び力強く明滅を始める。まるで何事もなかったかのように。
ただ、クリスタルの中に鍵はもうない。
飛ぶのも億劫になったのか、地面にへたり込んでいるフィリ。
「ご苦労さん」
声を掛けると、頭の上に乗せて玄室を後にした。
これで鍵は三つ揃った。
あとは、繁栄の門を目指すだけだ。
お読みいただきありがとうございました。
できましたら、すぐ下にある評価フォームからポイント・感想などをいただけましたら幸いです。良かったら良かった、悪かったなら悪かったとそのまま評価していただければ結構です。
もちろん、リアクションだけでも結構ですので、ぜひよろしくお願いします! 無茶苦茶作者のモチベーションが変わります。




