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クズの槍使いが自由に生きて英雄になる方法~手配No.1072 ソード=マスター~  作者: 木庭 秋水


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第19話 おかみさん

もう一話連投します。




 ポチの奴が現出してから三日程、カンカーラに潜るのを休止した。


 んで、地上での暮らしを満喫している。


 ポチの奴……、景気よく”吸い”やがって……。


 ある程度は回復した。しかし、全快とはいかない。


 そんなこんなで、はや三日だが……そろそろなんとかならんものか。


 あまりサボっていると、いよいよ飯が道端の雑草になる。


 つか、それ以前に。


 ハルクの親父が契約書片手に良い笑みを浮かべるところを思い浮かべると、背筋を走るものがある。


 真面目に、そろそろなんとかしたい。


 とはいえ、玄室ごと焼き尽くすような炎を二連発だ。


 その代償だと思えば、そりゃそうだよなあとは思うが……。


 なんつーか、体の芯が重く、あきらかに絶好調とは言い難い。


 こんな状態で迷宮に特攻するのは、素人以前に自殺志願者だと言ってもいい。


 それに、炎を使わなくてもポチを出せば、結構なペースで体力を消耗していく。


 これは、そう見て間違いない。ポチを振り回すと、それだけでなんか”チューチュー”されている感覚があるし。


 多分、あいつは宿主の生命力を使って現出しているんだろう。


 まあでも、出しただけでビンビン感じるあの魔力や、あの炎に焼かれなかった超強力な炎耐久性付与なんかを考えれば、そうだろうなあと納得しかない。


 とはいえ、現実問題として、ポチの奴は俺の体力を馬鹿食いする。


 これは間違いない。そしてそれだけに、いくら強力でもポチを常用するわけにはいかない。


 そんなことをしたら、あっという間にこっちが干からびる。


 ということで、この三日間。


 ガリメデの町を散策しながら、新しい相棒を探していた。体を休めるのにちょうどよかったし良い休暇にもなった。


 ガリメデの町には、冒険者の間で有名な『ボッター商店』がある。


 この店は、嘘か真かむかし魔法使いがカンカーラに立て籠もった頃からある老舗中の老舗だ。


 ただ、この店は古いという以上に別のことで有名でもある。


 それは『ボッタクリ』。


 その昔は、カンカーラから持ち帰られたアイテムの鑑定料が『買い取り価格と同額』だったという。


 そして鬼畜なことに、未鑑定の品は買い取りを拒否されたのだとか。


 当時、カンカーラの近くに町も村もなく、迷宮すぐ近くの商店はこのボッター商店しかなかった。


 そのため冒険者たちは、このボッター商店を泣く泣く利用するしかなかった。より強力な装備やアイテムを使って、自身の探索を有利にするために。


 結果、しばらくして、カンカーラ1Fのエントランスに野良の鑑定屋が店を出す事態にまでなったという話だ。


『ねぐらと酒場とエントランスの鑑定屋があれば、冒険はできる』


 現在でさえ、酒に酔った冒険者たちが面白おかしく口にする。


 その言葉のルーツなのだとか。


 そんなボッター商店だが、今ではクルーニー、クルーゾーというドワーフの兄弟がやっている。


 ただ現在では、かつてのようなアコギな商売ができるはずもなく、特別特徴のない店に成り下がってしまっている。


 実際、何も語るところがなかった。


 今のガリメデ・ナンバーワン商店は、最近ここにも支店を出した大商会『シルバーオッド』の店だろうとハルクの親父が言っていた。


 で、そのシルバーオッド商会の店にも行ってみたのだが……。


 こっちはこっちで……まあ、高い。


 もんのすごく高い。


 確かに置かれている商品はどれも一級品で、見た感じ『怪しい品』なんて一つもなかった。


 だが、ちょっと良いなあと思うと、手が届くような金額ではなかった。


 ……で、結局いつもの中古屋巡り。


 何軒か回り、何とか使い物になりそうな槍を見つけた。


 武器がないと、流石に話にならない。


 中古のくせにそこそこ値が張ったが、やむを得なかった。


 あとはロングソードを一本。


 いざという時に、ショートソードではなんとも心許ない。


 痛感させられた。


 ある程度のリーチは絶対いる。包丁代わりのショートソードは袋の中にしまい、普段使わなくとも腰に一本ロングソードを差しておく。


 今回得た教訓だ。


 同じ過ちを繰り返す奴は、長生きできない。特に冒険者なんかをやっていると。


 泣く泣くの出費となったが涙を呑む。


 再びずいぶんと軽くなってしまった財布を握りしめ、今日も今日とてハニービー。残り少なくなったエールをチビチビと舐めながら、一番安いレンズ豆の煮物を食んでいる訳である。


「ソードさん、なんか不機嫌です」


 黒いサラサラのロングヘアを揺らしながら、少し首を傾げるメイド服の少女。


 なぜメイド服なのかは甚だ疑問だが、彼女こそは何とびっくり兄さんの奥様だ。


 体格ばかりか、色々なところが小さいうえに童顔。


 しかも、前髪をぱっつり切り落としているので、なおロリィである。


 そして、ビックリの十六歳。


 実年齢でも兄さんとの年齢差を考えると十分ヤバい。だが、それ以上に若く見えることが、なおヤバい。


 兄さんは、すでに何度も聴取を受けたらしい。まず最初に、誘拐犯のラインからスタートするのがデフォだと目を赤くしていた。


 かくいう俺も、最初に彼女を紹介された時、思わず兄さんに「マジで?」と聞いてしまったから他人のことは言えない。


「俺にも色々あるんだよ……」


 と、空笑いをしていた兄さんの顔が頭から離れない。


 本来は色気たっぷりボンキュッボンの方が好みだそうだが、それを口にすると最低三日は家庭が冷え込むらしく、鉄の意志をもって口を噤んでいるのだとか。


 そんな兄さんの奥様が、おそらくは不景気な顔をしているのだろう俺の顔をまじまじと見て、尋ねてくる。


 のそのそと豆をつつくフォークを置き、それに応えた。


「そりゃあね。酒場に来ているのにこうして豆しか食えず酒もおかわりできないとくれば、大概の奴は機嫌の一つも悪くなるってもんだよ。リズちゃん」


「リズちゃんって呼ばないでください。おかみさんです」


 フンスと鼻を小さく鳴らし抗議をしてくる。


 うん、やっぱりロリィだ。

お読みいただきありがとうございました。


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