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クズの槍使いが自由に生きて英雄になる方法~手配No.1072 ソード=マスター~  作者: 木庭 秋水


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第17話 盗賊団まねき猫

本日23:00に次話投稿します。




 すぐに玄室とわかるそこに、モンスターの影はない。


 だが、色からしてそれほど古くなさそうな1m×0.5mほどの木製の看板が地面に打ち込まれている。


 更に奥には木製の扉。


 そこそこご立派で、新しい。フロア探索をしていて見かけた他の扉とは、まったく違う色をしている。


 ま~た、これ見よがしな……。


 で、なんだって?


 とりあえず扉は置いておく。看板を読む。


 と、バチッと目が覚めた。


 こ・れ・は……。


 ダダ下がっていたテンションが爆アガリ。


 信じる神などいないが、神様ありがとうと思わず手を合わせてしまう。


『盗賊団まねき猫本部 ぜひ、お茶でも飲んでいかないか? 我々は君を歓迎する』


 頭の悪そうな汚い文字で……、もとい力強い文字で書かれている。


 きっと、『献上された』素晴らしいお宝があるに違いない。


 足長な、素敵なおじさま方が僕を待っている……。


 そうとしか思えなかった。


 まして、歓迎すると書いてある。


 これで寄らないのは失礼というものだ。


 寄ろう。行こう。そうしよう。


 即決する。


 今日の稼ぎを考えると、これは天からの恵みというものだ。


 貧しき者よ、ここで今日の糧を得なさい……。


 きっと、そう言っているのである。


 そういや……。


 改めて思い返すと盗賊崩れには2Fでも会ったが、3Fに降りてきてからそれっぽいのに会う回数が増えた気がする。


 そいつらはもれなく全員裸踊りの刑に処したが、どうやらここが巣のようだ。


 奴らの装備品なぞゴミの隣で碌に金にならないが、その巣ともなれば多少は期待値も上がる。


 さて、気を引き締めようか。


 看板の奥の扉へと、静かに近づく。


 中からは何者かの気配がした。ご在宅のようだった。


 ということで、まずはノック。


 他人の家を訪ねたのだ。ノックぐらいはするのが礼儀というもの。


 ポールアックスを振りかぶり、思い切り扉にドンッ。


 ドバキャ、ボキ、バキ────ッ。……ゴトッ。


 おんやぁ~??


 最初の音は想定内の良い音だ。


 だが、その後に続いた音がいただけない。


 というか、今この場面では絶対にしちゃいけない音だった気がする……。


 足元に転がったポールアックス君の首を、呆然と見つめる。


 ああ、なんということでしょう。


 グリニアからここまでの間、頑張ってくれたポールアックス君。突然の暇乞い。


 勘弁してとすがる時間もなかった。


 あまりのことに、脳みそが処理を拒否して現実逃避を始めた。自分でもわかる。


 退職届をいきなり出して当日辞める、悪魔のごとき所業……。絶望した。


 顔を静かにあげれば、パッと見二~三十人の強面のおっさんたちと目が合った。半壊した扉の向こうにいる。


 おっさんたちとの出会いの瞬間。


 恋に落ちそうだよ、バカ野郎。


 涙が出てきた……。


 突然の出来ごとに、目を見開いたまま固まっているおっさんズ。


「…………ボンジョルノ? じゃ!」


 片手を上げて颯爽と踵を返す。


 できることなど、それしかない。ただひたすら、何事もなかったかのように背を向けた。


 冗談じゃない。シャレにならんわ。


 そのまま猛ダッシュ。


 当然だ。グズグズしていたら()られる。


 しかしながら…………。


「ナニしとんじゃ、ワレ────ッ!!」「カチコミか、ゴラァ!!」


 はい。


 当たり前と言えば、当たり前の反応が返ってきました。


 顔を見ずとも分かる声って、きっとこういう声だと思うの。


 そんな力強いお声掛けが、背中に向かって無数に全力でぶん投げられた。




 だぁ~~~~~ッ。


 まずい、マズイ、Mazui。


 なんで、こんな時に壊れんの? 昨日ちゃんと整備してやったじゃんか!


 首元からベッキリ折れて、ただの棒。


 そんな相棒を手に、心の中でむせび泣く。


 背中からは、お怒り中のおっさんズの足音が。


 聞きたくない。


 聞きたくないが聞こえる。


 無策に止まったら、フクロぐらいじゃ済まされない勢いだ。


 こんな状態では、柄だけになったポールアックスでも捨てられない。


 いま持っている武器と呼べそうなものは、包丁代わりのショートソードがただ一本。


 集団戦で使うにはちと厳しい。リーチが足りねぇ。


 これを使うくらいなら、折れたポールアックスの方がまだマシだ。


 ぬ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛────ッ!


 とりあえずは走る。


 力の限り全力で!


 まずは逃げの一手。これしかない。


 いきなり一対多数なんて冗談じゃない。


 相手がたとえボンクラでも、万が一が起こる。


 硬い鱗のない人間は、囲まれたらどんだけ腕の差があっても終わりなのだ。


 一対多数は、やるにしても囲まれないように万全の対策を練ってからやるものである。決して、一番最初に選ぶ選択肢ではない。


「待てやゴラ、小僧────ッ!!」


 ましてや、こんな囲む気満々の相手になぞ。


 とはいえ、やらねばならない状況ってのも『稀によくある』ことであり……。


 失敗。


 この先は袋小路だった。


「はぁはぁ。手間とらせやがって。だが、それももう終わりだ」


「テメー死んだぞ? あんなマネしといてタダで済むとは思ってねぇだろうな?」


「…………」


 比較的狭い玄室に追い込まれてしまった。


 もう仕方がないので覚悟を決める。


 壁を背に構え、相手を観察する。


 追ってきたおっさんどもは十人だった。


 壊れかけのうえにボロボロのハードレザーを着込んだ連中で、パッと見で武器はショートソードが三人に、ブロードソードが五人。


 残り二人……は、見えないがおそらくはダガー。


 聞くに値しない脅し文句を並べたて、おっさんらは囲むようにジリジリと動く。


 こちらも、折れているとはいえ一尋(ひとひろ)近くあるポールアックスの柄を逆に持ち、尻の鋭い部分を槍の穂先に見立てて突きだす。


 もう腹を括るしかない。


「へっ。そんなものでどうしようって────」


 ヒュッ────。


『んだ』と続けようとするおっさんに、先手で突きを見舞った。


 ……が、ガキッ────。


 すぐに、おっさんの両脇からブロードソードを持った連中のサポートが入って、防がれてしまう。


 目の前のおっさんは何が起こったのか分からないような顔をしていた。だが、すぐに理解し、顔を真っ赤にしてこちらを睨みつけてきた。


「……テメー。楽に死ねると思うなよ?」


 そして、再びオリジナリティに欠ける脅し文句。


 元々、楽に死なせる気なんかないくせによく言う。


 だが……、さすがにちっとばかりマズい。


 視点は動かさないまま、『広さ』を測る。


 駄目だ。


 ここで一対多は、力量差だけでは埋められない。


 魔法みたく一度で複数に攻撃する手段があれば話は変わってくるが……無い物ねだりだ。


 でも、こんなムサいおっさんどもに首をとられるのは激しく遺憾。


 美人の女盗賊にエロい拷問をされて最期は腹上死というなら、ワンチャン受け入れを検討してもいい。


 だが、こんなおっさんどもに集られて死ぬなぞ非っ常に不本意である。


 断固拒否。全力で却下だ。


 とは言うものの、どうしよっかな……。


 この状態で倒し切れるか?


 考えていた、そんな時だった。今までに感じたことのない感覚に襲われる。


≪…………♪♪≫


 自分ではない”何か”が意識の中に割り込んでくる。


 そして、”そいつ”はなぜかとても嬉々としていた。

お読みいただきありがとうございました。


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