第16話 ゾンビ
あと1話連投します。
「死体のくせに、飯を食おうとすんじゃねぇ────ッ!」
ゾンビは生者の肉を求める。
だが、厄介なのは麻痺毒を持っていることぐらいか。
ヤバい細菌天国の毒トカゲなんかと比べれば、えらく清潔に感じてしまう不思議。
まあ実際は、ゾンビの口の中も細菌天国なわけだが……。
とはいえ、もらう状態異常は麻痺がほとんどだから、そう感じてしまう。
……ただ、毒トカゲなんかよりも、やっぱゾンビの方が戦いたくない。
まず臭いし、なによりこいつに殺されると『ゾンビの呪い』が伝播する。
殺されたら、ほぼ間違いなくゾンビになる。
『今日から君も仲間だよっ♪』ってなものだ。
マジ迷惑極まりない。
故に見つけたら即成敗。
これは冒険者のイロハのイ。こんなのに大繁殖されたら敵わんからな。
とはいえ、そこまでヤバいのかと言われると答えに悩んでしまう困ったちゃん。
見た目の気色悪さと臭さは閉口ものだが、それほど強くないのが良いところ。
というわけで、ノソノソと動く汚物のお掃除。ただし、使う道具はほうきや雑巾ではなく、鉄の斧だ────。
「臭ぇ────ッ! 迅速に、今すぐ、ただちに! 土に還れや、このクソボケどもが!」
ポールアックスを振りかぶり、手前三体の首を狙う。まとめて刎ねた。
腐っているので柔らかいし、動きも遅い。
だから、その姿にビビッて腰が引けなければ、大して難しい相手ではない。
その代わりと言ってはなんだが、団体さんに出会う確率が高いのが難点だ。
どうしても対多数戦を強要される。
でも、今回は”たった”の六体だ。
余裕である。鼻をつまみながら戦ってもおつりがくる。
……で。
ベチャ────。
「死体なら死体らしく良い子で寝んねしてろ、まったく」
最後の一体を頭頂から真っ二つ。
終了だ。
これが、ゾンビを原料にして更なる魔法処理をされると、こうはいかない。
死ぬほど厄介になる。だが、ゾンビの段階ではこんなものだ。
大量のゾンビを『床』でさらに腐らせ、幾重にも魔法処理をして作る泥型アンデッドの『ヌンビ』。
そのヌンビを作る過程で、腐肉から分かれた骨格部分に、呪いと更なる魔法処理を重ねるとできる『スカーレットナイト』……。
こいつらは、原料のゾンビとは比較にならんほどに強くなる。
そのくせ倒してもまったく金にならんので、心底戦いたくない相手だ。
それと比べれば、ただ臭いだけのゾンビなんぞ、余裕も余裕……まあ、出くわさないに越したことはないのだが。
とはいえ、これでめでたしめでたしって訳にもいかない。
カンカーラに籠っているパーなんとかって魔術師……死霊術も使うのか?
ゾンビからゾンビを作る場合を除けば、ゾンビを作るには死霊術を使うと聞く。
死霊術は黒魔法の一種。
同じ魔術師たちからも忌避されることが多いらしいが、間違いなく魔術の一分野という位置づけで存在している体系だ。
そして、ゾンビが湧いている以上、最初の一体は絶対なにがしかの方法で用意されている。
すなわち、その手段を持っている何者かが、そこにいるということ。
とはいえ、冒険者の遺体は遺体回収サービスの連中が可能な限り回収する。
だから、意外に放置される死体の数は少ない。
その少ない遺体も、大概はあっという間にモンスターのエサになる。
ゾンビを量産できるほどの遺体の調達は……難しいはず。
仮に、この迷宮の土壌自体にゾンビの呪いがかかっているとしても、新たに発生するゾンビの数なんかたかが知れている。
……となれば、謎の迷宮が意味不明に生やし続けているのだろうか?
それとも、墓でもあるのだろうか?
墓があれば、墓の土壌にゾンビの呪いをかければ、『新鮮な』ゾンビを次々に生やすことも可能と言えば可能だが……。
……ん~。
わ゛か゛ん゛ね゛。
慣れないことをするものではない。頭が痛くなってきた。
ということで、考えるのをやめる。
そろそろ今日の探索をあがる時間だし、丁度良い。
キモい動く死体が発生する理由よりも、今日の晩飯に何を食おうかを考える方が幸せだ。
しかしカンカーラは、俺に「もっと仕事をしないか?」と囁いた。
ゾンビのことで頭をいっぱいにしながら3Fのフロアを彷徨っていたら、少し前に大きな空間があるのを見つけてしまった。
『玄室』だった。
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