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クズの槍使いが自由に生きて英雄になる方法~手配No.1072 ソード=マスター~  作者: 木庭 秋水


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第12話 カンカーラ1F②

今日20:00頃2話連投します。




「ピケェ──ッ!」


「待てや、俺の昼飯──ッ!」


 ポールアクスを振り回しながら獰獰(ドウドウ)を壁際に追いつめる。そして────。


「もらったぁ────ッ」


「クェッ?!」


 首に一撃。刎ねた。


 っしゃあ! いただきます!


 獰獰(ドウドウ)は体高1メートル半くらいの鳥型モンスターだ。ただし、飛べない。ずんぐりした見た目に反して気性は獰猛。


 だが、すこぶる肉がうまい。レストランによっては、直で買い取ってくれるところもある程だ。


 ちゃっちゃと血抜きを済ませて肉を切り分ける。


 と言っても大半は廃棄せざるを得ないのが、クソもったいねぇ。できれば今日の晩飯に……いや、駄目だ。


 今日は狩り目的ではないから、グッと我慢だ。


 フレッシュな香り立つ生肉を抱えて迷宮探索なんかしたら……。


 考えるだに身の毛がよだつ。


 荷物が重くなるのもアレだが……、間違いなくモンスターどもが怒涛の勢いで押し寄せてくる。


 勿体ないが、そんな『懇親会』は流石に遠慮こうむりたい。


 ってぇことで、切り分けた一塊をポールアクスの尻に刺して、起こした火で炙る。


 味付けは塩だけだ。


 というか、塩があるだけでも豪勢だ。


 そりゃあ、きちんと料理すればもっとうまくなる。


 なるが、迷宮の中でそれを望むのは贅沢すぎるってもんだ。戦士兼料理人みたいな奴でもいれば話は変わってくるだろうが、普通は叶わぬ望みってもんだ。


 肉が焼けるのを待つ。


 その間、いくつかのパーティが通り過ぎた。みんな場違いなものを見るような蔑んだ目をして、何も言わずに横を通っていった。


 でも、気にしない。


 生き残り、食い、また生き残る────これが俺にとって生きるということ。


 格好よく生きようなんて、これっぽっちも思っていない。


 上品で格好いい人生?


 親ガチャ大失敗した人間が望むには、贅沢が過ぎるってもんだ。


 今、こうして飯を食うことができている。それだけで充分だろ。


 あのクソ親どもは、見つけたらこの世の地獄を見せてやろうと思う。でも、こんなでも生きていてつまらないと思ったことは不思議とない。


 要は考え方ひとつ。


 面白おかしく生きて、最期が来たら笑って死ぬ。


 それでいい。


 という訳で、さしずめ今俺がやるべきことは、腹いっぱい食うことだ。


 目の前で良い匂いを発している獰獰(ドウドウ)の塩焼きを、口いっぱいに頬張る。それがすべきこと。


 それにしても、迷宮の中に獰獰(ドウドウ)がいるとは……。


 普通は草原。だから、捕まえようと思うと一苦労だ。なにせ見た目に反して足がバリ速い。


 でも、こんなところにいるなら、ここで狩りをすればいい。


 良い狩場を見つけられて、今日はラッキーだ。


 ハグハグムグ。ぅあちっち。うん、やっぱ旨い。




 飯を食った後も探索を続ける。


 迷宮上層部で遭遇しがちなモンスターたち……ゴブリン、コボルドなどはやはりこの迷宮にもいて、それらと戦いながら一階を広く探索していく。


 ただ、まだ下へ降りる階段は見つからない。


 しばらく、そんな戦いを繰り返しながら探索をしていたら、人間と戦うことにもなった。


 戦闘初心者に毛が生えた程度の奴らだったが、揃いも揃って死んだ目をした奴ばかり。


 自分の能力に失望し、心折れて冒険をやめた冒険者たち。あるいは、冒険者をやめて冒険者を襲う者へと転職した半端者ども……。


 たぶん、そんなところだろう。


 だが、奴らは今日いい勉強が出来たはずだ。


 ────死んだ目をしたまま、生きた目をしている者を狩ることはできない。


 心折れて腐った冒険者崩れごときが、俺様を襲おうなど片腹痛いにも程がある。


 一人残らずぶっ飛ばし、裸に剥いてやった。


 裸一貫からやり直すがよいという、僅かばかりのおせっかいだ。


 むろん、剥いたものは明日には中古のアイテムショップに並ぶ。


 授業料はきちんと頂く。俺の流儀だ。


 他にも、触手が気色悪いテンタクルズローパー、やたらツラが良くてむかつく人面狂犬のイケメン犬……。呪文を使う巻物ヤローもいた。


 一階から色々なものに遭遇した。


 この迷宮……、結構モンスターの種類は豊富なようだ。


 探索を再開してしばらく経ったころ……岩壁(いわかべ)に偽装されているものの、これ見よがしにある隙間を見つけた。


 よくよく見ると扉だった。


 岩壁に偽装された扉だ。


 中は小部屋になっていて、台座には一本の鍵。


 犬の意匠が施された真鍮製の鍵だった。


 普通ならゴミとして無視するところだ。でも、こうまであからさまだと無視することもできない。


 とりあえずは革袋の中へ。


 しかし、……なんだ。


 一言、言いたい。


 もっとうまく隠せ。


 俺でも、もう少しうまく偽装する。というか、偽装しといてああもこれ見よがしとはどういう了見なのかと。


 そりゃあ、迷宮に謎はつきものだ。


 だが、こんなの『発見させたい人格』と『隠したい人格』を持った二重人格者が設計したとしか思えん。


 こんな訳のわからん場所は、正直初めてだ。

お読みいただきありがとうございました。


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