第12話 カンカーラ1F②
今日20:00頃2話連投します。
「ピケェ──ッ!」
「待てや、俺の昼飯──ッ!」
ポールアクスを振り回しながら獰獰を壁際に追いつめる。そして────。
「もらったぁ────ッ」
「クェッ?!」
首に一撃。刎ねた。
っしゃあ! いただきます!
獰獰は体高1メートル半くらいの鳥型モンスターだ。ただし、飛べない。ずんぐりした見た目に反して気性は獰猛。
だが、すこぶる肉がうまい。レストランによっては、直で買い取ってくれるところもある程だ。
ちゃっちゃと血抜きを済ませて肉を切り分ける。
と言っても大半は廃棄せざるを得ないのが、クソもったいねぇ。できれば今日の晩飯に……いや、駄目だ。
今日は狩り目的ではないから、グッと我慢だ。
フレッシュな香り立つ生肉を抱えて迷宮探索なんかしたら……。
考えるだに身の毛がよだつ。
荷物が重くなるのもアレだが……、間違いなくモンスターどもが怒涛の勢いで押し寄せてくる。
勿体ないが、そんな『懇親会』は流石に遠慮こうむりたい。
ってぇことで、切り分けた一塊をポールアクスの尻に刺して、起こした火で炙る。
味付けは塩だけだ。
というか、塩があるだけでも豪勢だ。
そりゃあ、きちんと料理すればもっとうまくなる。
なるが、迷宮の中でそれを望むのは贅沢すぎるってもんだ。戦士兼料理人みたいな奴でもいれば話は変わってくるだろうが、普通は叶わぬ望みってもんだ。
肉が焼けるのを待つ。
その間、いくつかのパーティが通り過ぎた。みんな場違いなものを見るような蔑んだ目をして、何も言わずに横を通っていった。
でも、気にしない。
生き残り、食い、また生き残る────これが俺にとって生きるということ。
格好よく生きようなんて、これっぽっちも思っていない。
上品で格好いい人生?
親ガチャ大失敗した人間が望むには、贅沢が過ぎるってもんだ。
今、こうして飯を食うことができている。それだけで充分だろ。
あのクソ親どもは、見つけたらこの世の地獄を見せてやろうと思う。でも、こんなでも生きていてつまらないと思ったことは不思議とない。
要は考え方ひとつ。
面白おかしく生きて、最期が来たら笑って死ぬ。
それでいい。
という訳で、さしずめ今俺がやるべきことは、腹いっぱい食うことだ。
目の前で良い匂いを発している獰獰の塩焼きを、口いっぱいに頬張る。それがすべきこと。
それにしても、迷宮の中に獰獰がいるとは……。
普通は草原。だから、捕まえようと思うと一苦労だ。なにせ見た目に反して足がバリ速い。
でも、こんなところにいるなら、ここで狩りをすればいい。
良い狩場を見つけられて、今日はラッキーだ。
ハグハグムグ。ぅあちっち。うん、やっぱ旨い。
飯を食った後も探索を続ける。
迷宮上層部で遭遇しがちなモンスターたち……ゴブリン、コボルドなどはやはりこの迷宮にもいて、それらと戦いながら一階を広く探索していく。
ただ、まだ下へ降りる階段は見つからない。
しばらく、そんな戦いを繰り返しながら探索をしていたら、人間と戦うことにもなった。
戦闘初心者に毛が生えた程度の奴らだったが、揃いも揃って死んだ目をした奴ばかり。
自分の能力に失望し、心折れて冒険をやめた冒険者たち。あるいは、冒険者をやめて冒険者を襲う者へと転職した半端者ども……。
たぶん、そんなところだろう。
だが、奴らは今日いい勉強が出来たはずだ。
────死んだ目をしたまま、生きた目をしている者を狩ることはできない。
心折れて腐った冒険者崩れごときが、俺様を襲おうなど片腹痛いにも程がある。
一人残らずぶっ飛ばし、裸に剥いてやった。
裸一貫からやり直すがよいという、僅かばかりのおせっかいだ。
むろん、剥いたものは明日には中古のアイテムショップに並ぶ。
授業料はきちんと頂く。俺の流儀だ。
他にも、触手が気色悪いテンタクルズローパー、やたらツラが良くてむかつく人面狂犬のイケメン犬……。呪文を使う巻物ヤローもいた。
一階から色々なものに遭遇した。
この迷宮……、結構モンスターの種類は豊富なようだ。
探索を再開してしばらく経ったころ……岩壁に偽装されているものの、これ見よがしにある隙間を見つけた。
よくよく見ると扉だった。
岩壁に偽装された扉だ。
中は小部屋になっていて、台座には一本の鍵。
犬の意匠が施された真鍮製の鍵だった。
普通ならゴミとして無視するところだ。でも、こうまであからさまだと無視することもできない。
とりあえずは革袋の中へ。
しかし、……なんだ。
一言、言いたい。
もっとうまく隠せ。
俺でも、もう少しうまく偽装する。というか、偽装しといてああもこれ見よがしとはどういう了見なのかと。
そりゃあ、迷宮に謎はつきものだ。
だが、こんなの『発見させたい人格』と『隠したい人格』を持った二重人格者が設計したとしか思えん。
こんな訳のわからん場所は、正直初めてだ。
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