第11話 カンカーラ1F①
あと1話連投します。
中古のハーフプレートを着込み、腰の後ろには使い込んだショートソードを一本。手には、年季の入ったポールアックス。
本当は槍が欲しかったんだが……。
いや、無い物ねだりか。ねぇものはねぇ。
みんな、ガリメデまでの旅路も一緒に歩いた相棒たちだ。
とはいえ、早いとこ中古品専門からは卒業したい。
そのためにゃあ、一にも二にも稼がないと。ああ、世知辛い。
ま、今日がその第一歩となると信じよう。
頑張れ、ソード。負けるな、ソード。
よし、じゃ出発!
冒険者登録を済ませた翌日の朝、ハルクの親父に今日も『バルクの朝飯』とやらを出された。
有難さに再び涙を流しながら、『カンカーラの鉄の掟』を教えてもらう。
まだ行けるはもう行けない────。
まだ行けるかどうかを考えた、『その瞬間』こそが引き返し時なのだという。
これは、古の悪い魔法使いがカンカーラに立て籠もった時に生まれた言葉なのだとか。
挑んだ冒険者たちが実地で学んで、合言葉のように広がった『教え』らしい。
この言葉を笑った者から実際に死んでいったとのことで、なかなかに容赦ない。
笑い飛ばそうと思った瞬間、ゴクリと唾を飲む羽目になった。
遺体になって教会に運ばれたり、モンスターのKUSOになったりしたくなければ、何を忘れてもこの言葉は忘れるなと何度も忠告された。
これを話していた時だけは、ハルクの親父もいつになく真剣な顔をしていた。
貴重な話を聞いた後、親父に礼を言ってバルクを出た。町の中央部に向かって今日も歩く。
「カンカーラ……どんなもんかね」
そんな言葉が無意識に口から漏れた。
ガリメデの城は、中央広場を抜けて更に少し北に行ったところにある。広大な土地を石造りの城壁で囲んだ大きな城だった。
資金力ってものを、まざまざと見せつけられた。城壁の外には堀も巡らされていて極めて壮大。
大きな跳ね橋を渡り城内に入ると、高い尖塔が何本も立ち並んでいた。何とも言えない威圧感を感じる。
王族が住む本城は奥の方にあるが、俺たちがそちらに行くことは許されていない。
カンカーラの迷宮は、宮廷魔術師団によって二十四時間体制で管理されている。だから俺たち冒険者も、二十四時間いつでもカンカーラに入ることができる。
しかし、王族がいる本城へ向かうルートは、衛兵たちによって同じく二十四時間厳重に守られている。
ちょっとでもそちらに向かえば、すぐに囲まれるから注意するようにと、ギルドでも警告された。
実際現場を自分の目で見れば、ルート自体も石の壁と分厚い扉で区切られていて、ちょっくら観光に……なんてことはほぼ不可能なように思えた。
きちんと、勝手にはいけないようになっている。
と言っても、不都合は何もない。
用があるのはカンカーラの迷宮だ。城そのものじゃない。
迷宮の入口は、城の敷地内の中でも東の端の方にあった。
モンスターを吐く迷宮の上に城を作った狂人どもでも、本城を真上に建てない程度の正気は持ち合わせていたらしい。
カツ、カツ、カツ────。
ブーツの底が石の階段を叩き、音が響く。
カンカーラ迷宮の入口は、まるでちょっとした祠のようだった。
入口のある小さな建物の横には二階建ての建物もあった。
そこには宮廷魔術師たちが詰めているようだったが、俺たちが迷宮に出入りしていても誰も出てこない。おそらく上から見てはいるだろうが、完全無視だ。
朝一ということもあり、他の冒険者たちの姿もたくさんあった。
エルフやドワーフ、ノームと言った亜人種たちの姿もちらほらと確認できる。
それぞれの職業も多彩だ。戦士、魔術師に神職についていそうな者、トレジャーハンターっぽいのもいる。
入口を降りてすぐのところに結構広い空間があり、そこが待ち合わせ場所に使われているらしい。
ソロ同士でパーティを組むケース、複数のパーティー同士が組むケースなど色々あるとのことだが、カンカーラに入るために人と人が待ち合わせるには都合がいい場所なのだとか。
階段を下りると、聞いていた通りに広い空間があった。
岩壁にもたれて目を閉じている者、地面に座り込んで所在無げにしている者などさまざまいたが、誰もが誰かを待っているように見える。
結構な人数がいた。
もっとも、いまが一番出入りの激しい時間帯ということもあり、こんな風になっているのかもしれない。
そんな者たちを横目で見ながら、迷宮のエントランスと言っても過言ではないその場所を抜ける。
結構、明るいな……。
ここまでもそうだったが、薄暗くはあるものの、それなりに視界は利いていた。
通常、洞窟の探索では『松明やランプ、魔光石といったアイテム』か『光の魔法を使える者』など……なにがしかの光源を用意する。
だが今日は、使わずともそれなりに見えた。十分とは言わないまでも、まあなんとかと言える程度には見える。
……それにしても、なんだろうね。これ。
まだ潜ってすぐというのは承知しているが、『人工物の地下を歩いている感覚』がものすごい。
迷宮を歩いている気がしない。
『幅三~四メートルの正方形の通路』が延々と続いている。固い地層をくり抜き、木で補強したような道が結構な範囲に広がっており、迷宮の道というより坑道と言われた方がしっくりとくる。
しかも、一定間隔で魔光石のランプが壁に埋め込まれていて人工物感バリバリである。
宮廷魔術師たちが管理しているという話だが、本当に『管理』されているようだった。
ひたすら奥へと進んでいく。
もちろんマッピングをしながらだ。でも、少なくともこの階層は、マッピングが必要なほどに複雑な作りをしていない気がする。
フロアの広さはそこそこある。
二又の道、交差路などももちろんある。だが、あきらかに整然としていて余程に方向音痴でなければ迷いそうもない。
そんなことを考えながら交差路を左に折れたとき、はるか奥の薄暗い闇の中に『大型の鳥のようなもの』を見た。
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