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クズの槍使いが自由に生きて英雄になる方法~手配No.1072 ソード=マスター~  作者: 木庭 秋水


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第10話 冒険者ギルド③

本日19:00頃に2話連投します。


「本部長!」


 白衣のおっさんが慌てて頭を下げた。


 って、このおっさん、さっきからパニクってばっかだな。


 だが、ちょっとそっちは置いておこう。今は、オールバックのおっさんの方だ。


「あんたは?」


 尋ねると、眼光の鋭さをスッと隠して、ゆったりと一礼してきた。


「失礼。私はフランク。ここの本部長をしている者です。職員が騒がしくして申し訳ありません」


 本部長……また、ドえらいのが出てきたな。


 本部長ってことはNo.2だ。上にはギルドマスターしかいない。


「いや。まあ、あれは仕方ないさ。気にしていない」


「そうですか。なら、よいのですが……」


 再び少し厳しい目になって、本部長のおっさんは白衣のおっさんの方を見る。


「利用者が不安になるような応対は好ましくないな」


「はっ。申し訳ありません。しかし……」


「ん? どうかしたのかね?」


「はい。本部長、こちらを……」


 白衣のおっさんは、少し考えてから本部長のおっさんを部屋の中に招いた。そして、先ほどまで見ていた魔法ディスプレイの前を譲る。


 少し怪訝そうにしながら、本部長のおっさんは画面を覗き込んだ。


「これは……」


 白衣のおっさんは何も説明していない。


 いないが、本部長フランクはすぐに、白衣のおっさんが何を見せたいのかを理解した。そして、視線だけをすぐ横にいる白衣のおっさんに向けて単刀直入に問う。


「なぜ、こんなことに?」


「わかりません。こんなものを見たのは初めてです」


「私も、こんなものは初めて見たな」


「通常通りに測定しただけなのですが……」


「うーむ」


 本部長のおっさんも、難しい顔をして考え込んでしまった。


 室内は一瞬沈黙した。


 そんな空気を破って尋ねてみる。


「なあ。もう一度作り直すってわけには……」


 だが、これには本部長のおっさんが静かに首を横に振る。


「いきません。貴方のデータはすでに登録されてしまっている。ということは、もう一枚を作ろうとしても機械が受け付けてくれません」


 だよなあ……。


 ダメもとだったがやっぱり駄目か。さっきの受け付けの姉ちゃんも言っていたしなあ。


 だが、ということは何か? 俺のカードはずっと『コレ』ってこと?


 うぇ……。


 いや、待てよ。これって、それ以前の問題じゃね?


「なあ。これ……きちんと普通に動くのか?」


 聞くさ。聞かずにはおれんわ。


 まともに動かなかったら、手書きの冒険者カードの方がマシって話になってしまうじゃないか。どんだけ働いてもレベル1のままとか勘弁してくれ。


 俺の切実な問いかけには、白衣の方のおっさんが答えてくれる。


 でも……。


「エラーを吐いている訳ではないので、おそらくは……」


 おそらくかよ……冗談じゃねぇぞ。


 だがその時、眉根にしわを寄せながらジッと画面を見ていた本部長のおっさんが呟く。


「ソードさんのカードのこの現象……『コレ』が原因かもしれない」


 その言葉に、白衣のおっさんも俺も再びディスプレイの画面を見る。


「『コレ』です」


 本部長のおっさんは画面の上の方を指さした。


『状態:槍の祝福』────。


「このような状態は、長年ギルドの職員をしてきましたが見たことも聞いたこともありません。『コレ』……のような気がします」


 本部長のおっさんは改めて言った。


 さっきは気づかなかったが……。


 確かに、こんな状態異常なんて聞いたことがない。でも……。


「……祝福ってあるし、悪さなんてするのか?」


 思ったことを素直に口にした。


 だが、これには白衣のおっさんが首を縦に振る。


「祝福と言っても、必ずしもポジティブな効果とは限りませんよ。物によっては『呪い』に近い効果を発揮するものもあるかもしれません。これがそうかまではわかりかねますが……」


「そんなものあるの?」


 そう聞くと、白衣のおっさんは眼鏡をクイッと持ち上げながら技術者らしい顔をして説明し始めてしまう。


「はい。例えば、かつて英雄サマラが受けた『邪神の言祝ぎ』などは近いと思います。他にも────」


「…………」


 すまん。俺が悪かった。難しい話は勘弁してくれ。


 ま、まあ、でも、そういうのがあるというのはわかったよ。うん。


「ソードさん。ちょっとよろしいですか?」


 その時、俺の心を汲んだわけではないだろうが、本部長のおっさんが俺を呼んだ。それにより、より詳しい説明をしかけた白衣のおっさんの口が止まる。


 ナイスだ。おっさん。


「ああ、もちろん」


 喜んで、そちらに耳を傾けた。あのまま難しい話を続けられていたら、泣くところだった。


「通常、我がギルドのカードはこのようなものではないのですが、先ほどご説明したようにもう一度作り直すということはできません。申し訳ないのですが、このカードをお使いいただくという訳にはいかないでしょうか?」


 丁寧な説明とともに、深く頭を下げてくる。


 こういう風に下手に出られると、俺はちと弱い。自分でもチョロイなーと思わなくもないのだが、どうしても「ま、いっか」って気になってしまう。


 それに……今回ばかりはあまり深く探られても困るところもある。


『槍』──だからな。


 状態変化の中に『槍』?


 こんなの、絶対この前の『アレ』だろ。あんなのを説明するわけにはいかない。


 だから、俺に選択肢などない。


「……しょうがないわな。でも、これまともに動くんか? 表示がおかしいだけなら良しとしてもいいんだが、正常に作動しないってことだと流石に困るんだが」


「それは確かに……。ん? いや、おそらく大丈夫でしょう。ここを見てもらえますか」


 本部長のおっさんが俺を手招いた。


 それに従い、もう一度ディスプレイの画面を見てみると……。


「これは……」


 ディスプレイに表示されている『いま作ったばかりの俺のカード』のデータなのに、経験値のところに『100』と表示されていた。


 確かさっきは『0』だった……と思う。


 俺の後ろから画面を覗きこむ白衣のおっさんが呟く。


「おそらく、ソードさんが本部長の提案を受け入れたから……でしょうね」


 なるほど。経験値……というか貢献値?


 いずれにしても加算されたって訳だ。つまり、動いてはいる……と。


「わかった。これでいいよ」


 俺は、このふざけた冒険者カードを受け入れることにした。


 こうなってくると、本部長が顔を出したのはラッキーだった。


 組織の上の方に、この件を知っている人間がいるのは心強い。なにかあっても、話は通じやすいだろう。


 そんなこんなで大騒ぎになった俺の冒険者カード作成だが、とりあえずは様子見ということに落ち着いた。


 実際のところ、経験値がきちんと加算されてレベルさえ上がっていってくれれば、それほど致命的なことにはならない。


 だから、経験値が加算されたことが確認できたので、ならばとりあえずは……ということにしたのだ。


 もう、さすがに疲れたよ……。朝から、どれだけ経っているのかと。


 ゴネてもうま味なんてなさそうだったし、『貸し(いち)』にしておく方が賢明ってもんだ。


 とりあえず、今日やるべきことは無事完了。冒険者ギルドを後にする。


 この後は、アイテムショップに寄って必要なものをいくらか買っておけばいいだろう。その後は、バルクに戻って武器防具の整備だ。


 カンカーラのお宝が俺を待っている。

お読みいただきありがとうございました。


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