フミヨの御伽噺15 そして死体は捻じくれた
ロクロウとフタバちゃんの二重生活が始まって一年ほど経った頃です。
「女子会?」
フタバちゃんはキキに尋ね返しました。
「そうよ、女子会。フタバちゃんも来る?」
キキははしゃいだ様子で言いました。
「楽しいわよ?みんなでお茶飲んでお菓子食べてお話しするの。もちろん恋バナとかよ?」
キキは胸の前で手を合わせて身をよじります。
「そのう、本当の?本物の女の子たち?」
「そうよ。みんな女子高生なの」
フタバちゃんは驚きつつも甲高い声で、
「えーっ、行ってみたーい」
と答えました。
「いいわよ。じゃ今度一緒に行こ。一応、参加費だけど、五万円ね」
「えっー 五万円かぁ」
フタバちゃんの世を忍ぶ仮の姿であるロクロウは公務員です。毎月決まったお給料は貰えますが、決して高給取りというわけではありません。
「どうする?凄ぉく楽しいよ?」
「うん。行く」
フタバちゃんは答えました。とにかく一度行ってみて、嫌ならもう行かなければいいのです。
翌週。平日の午後七時からという結構早い時間帯でしたが勤務シフトも上手く調整でき、フタバちゃんは初めての女子会に参加することができました。
そこに待っていたのは!まごうことなき女子高生ではありませんか!
フタバちゃんは驚きと喜びで少し言動がおかしくなってしまったほどでした。みんなでジュースを飲み、お菓子を食べ、楽しくおしゃべりをしました。
学校の先生の悪口から部活のこと、塾のこと、親がとてもうるさいこと。
「ねぇねぇ、みんなで写真撮らない?」
フタバちゃんは提案しましたが、一緒に来ていたキキにそっと窘められました。写真撮影は禁止なのです。そのかわり、自分の携帯を誰かに渡すと他の子の姿が映らないように写真を撮ってくれるのです。
フタバちゃんは夢中になりました。あっと言う間に2時間が過ぎ、女子会が終了しました。みんなでお手紙交換をしてから、「バイバイまたね」をします。先に女の子たちが帰り、三十分してから変身女子(フタバちゃんとキキ、あともう一人モエちゃんという変身女子が参加していました)が帰ることになっています。女の子たちが帰ったあともフタバちゃんは夢見心地でキキと感想を言い合いました。
フタバちゃんは夢中になりました。お給料もボーナスも、可能な限りこの「女子会」のために使うようになりました。
そんなある日。いつものように女子会に参加したフタバちゃんは、一緒に参加した変身女子たちと会の余韻を楽しんでいたのですが、そこで事件は起こりました。
いかにも人相の良くない若い男たちがドヤドヤと部屋に入っくるではありませんか。フタバちゃんは職業柄すぐにたちの良くない連中だと分かりました。
彼らはフタバちゃんたち変身女子に向かってスマートフォンを向け写真を何枚も撮りました。そして小さな紙片を見せました。
私はセーラー服が好きです。私はお化粧するのが好きです。 ふたば
フタバちゃんの書いた手紙です。他の変身女子の手紙も持っているようでした。
男たちはこれを世間にばらまかれたくなければ百万円を支払えと言いました。他の変身女子は青くなって震えています。
でもフタバちゃんは違います。フタバちゃんは立ち上がって一人の男を得意の一本背負いで投げ飛ばすと、男の持っていたフタバちゃんの書いた手紙を奪い取り、一気に部屋を出ました。
しかし敵もさるもの、部屋の外にも仲間がいたのです。フタバちゃんは階段を駆け上がります。体力には自信のあるフタバちゃんです。あっと言う間に最上階にたどり着きました。
ドアを開けて外に出ると、
ビョォォォー
夜風が短いスカートを揺らします。雑居ビルの屋上です。ドアの向こうから男たちの声が迫ってきます。
とっさにフタバは隣のビルに飛び移って逃げようと考えました。
そして追い詰められた鹿が断崖絶壁から飛ぶように、隣のビルの屋上めがけてジャンプしました。
近く見えて実は遠い隣のビル。ほんの二三メートルに見えた距離は実は十メートル近くあったのです。
フタバちゃんは無意識のうちに、空中で受け身の姿勢を取りました。そして横受け身を取ろうと身体を捻ったまま、地面に叩きつけられたのです。
このようにして女装した捻れた死体が出来上がったのです。




