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探偵アケチの黙視録  作者: 弐乃
落ちる警官
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フミヨの御伽噺13 帰ってきた少女

 ロクロウの隣に腰掛けたセーラー天使は汗臭く、息からはアルコールとニコチンの薫りが漂ってきます。

 それでもロクロウはその香りがちっとも嫌ではありません。

 むしろ極上の香水のような、何か知らん人間の本能を刺激する類の、特殊な幻惑臭に思われました。

「あなた、オネェには見えないわね。でもあたしを見る目つきは他の人と違ってた。何て言うのかしら、あたしのこと尊重してくれてるって分かったの」

 ロクロウは着飾ることなく素直に本心を告げた。

「いや、セーラー服、似合ってるなぁと思って」

 ロクロウの言葉に「やんっ!もうっ!嬉しいっ!」と身悶えするセーラー天使。

「あたしキキよ。よろしくね」

「あ、そのう、フタバです。よろしく」

「フタバちゃんね?あなたもセーラー服、着てみる?可愛いセーラー服がたぁ~くさんあるのよ」

「あっー でもー」

 ロクロウは躊躇います。それはそうでしょう。ロクロウにもここが人生の分かれ目と、本能的に分かっています。

 一度は運良く抜け出すことができた世界。もう一度そこに戻ればもう抜け出すことはできません。死ぬまでそこで生きていく。その覚悟が必要なのです。ロクロウが躊躇うのも当然でしょう。

 しかし運命の神様はどこまでも執拗でした。ロクロウの好きなもの。欲しがっているもの。どうしても断れないものをよくよく知っているのです。

「セーラー服に着替えてさ、お茶しようよ!ね!?」

 キキの誘いは強引で、かつロクロウの弱いところをグイグイと突いてきます。

 キキは甲高い嗄れ声でキャッキャッと騒ぎながら、ロクロウの手や背中、腿の辺りに触れながらロクロウを誘います。運命の神というより、立ち直りかけていたロクロウを再びあのめくるめく世界に引きずり込もうとする悪魔という方がピッタリかもしれません。

 結局ロクロウは断りきれずに、近くのマンションの一室に案内されました。

「あらぁキキ、早いじゃない?ん?なによう、彼氏さん?」

「違うわよ、新人君よ。ママ、この子に合う服出してあげて。ちょっとエッチな名門女子校の感じでね」

 ママと呼ばれた四十前後の男に身体をペタペタ触られ、「ヤダぁ、この人良い身体」とか囁かれながら、ロクロウはアッと言う間に服を剥ぎ取られ丸裸にされてしまいます。

「さぁ、これに着替えて」

 ロクロウはただ荒い息をつきながら、口を半開きにしてママの出してきた下着と衣装を見つめました。

 ロクロウは熱に浮かされたようなボウッとした表情でそれらを身に着けました。

 鏡に映る自分の姿にロクロウは思わずため息を漏らしました。


 フタバちゃんだー


 そうです。鏡の中にはあの懐かしいフタバちゃんがいました。


 可愛いー


 ロクロウは腰をうねらせ、ウインクをし、投げキスをしながら鏡の中のフタバちゃんに見惚れました。

「うわぁ!すごく可愛いよぉ!フタバちゃん!」

 キキがピョンピョンと飛び跳ねるようにしながらロクロウの耳元で言いました。


 可愛いー フタバちゃん可愛いー


「もう、ちょっとヤダぁ!」

 ママがフタバちゃんの腰辺りを笑いながら軽く叩きます。

「あらっ!?もう!フタバちゃんたら!」

 キキも口元を押さえながら笑います。この時、フタバちゃんのスカートは、怒張した男性器のせいで高く盛り上がっていたのです。

 しばらくしてようやく少し落ち着きを取り戻したフタバちゃんはキキちゃんとお散歩に出かけました。

 少女言葉で会話しながら歩く二人。その可愛さにすれ違う人たちはみんな二人を目で追いかけます。

 なんという心地よさ。なんという開放感。これまで自分を縛り付けていた全ての物から解放され、フタバちゃんは雲を踏むような心地で街歩きを満喫するのでした。

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