フミヨの御伽噺2 ザビエルの襟巻き
母親も仕事を持っており、忙しかったのに違いありません。後で片付けるつもりでそこに置いたまま、慌ただしく出かけたのでしょう。
ロクロウ少年は竹輪を葉巻のように咥えたまま、何気なく洗濯物が山盛りになった洗濯籠を覗き込みました。
なんだろうー
何かがロクロウ少年の興味を惹きつけました。ロクロウ少年は竹輪をもぐもぐやりながら籠を覗き込みます。
籠の一番上、洗濯物の山の一番上に置かれていた、紺色の襞々が連なった襟巻き状の布。ロクロウ少年はその布を手に取って眺めました。
その瞬間、ロクロウ少年の身体は洗濯籠を見つめたままの格好で固まってしまいました。
あっー スカート
そうです。紺の蛇腹の襟巻き(社会の教科書に出てくるフランシスコ・ザビエルの襟巻きのイメージです)と見えたそれは、姉の制服、プリーツスカートだったのです。
ドクンッー
生まれて初めて感じる胸の高鳴り。下半身をギュッと握り込まれるような感覚。何か得体のしれないものが腹の底でモゾモゾと動き出すような、何とも言えない感覚を味わったのです。
短いスカートから伸びる白くて長い姉の足。姉はロクロウ少年よりも背は低いのに、その足はロクロウのそれよりもずっと長いのです。
長いだけではありません。雪のように白くてふわふわと柔らかそうで、どこからどう見ても全てが柔らかな曲線で出来上がっており、どうしてこんな綺麗な形をしてるんだろうと、ロクロウ少年は不思議でなりませんでした。
その反対にロクロウ少年の足ときたら、太くて短くてゴツゴツしていて、ロクロウ少年はいつも自分の足が恥ずかしくてなりませんでした。もし柔道という競技が短パンで行われる競技であったなら、ロクロウ少年はとうに柔道をやめていたことでしょう。
ロクロウ少年の咥えた竹輪の穴から、トロリとした涎が一筋垂れて姉のスカートを汚しました。
「わぁっー」
ロクロウ少年は思わず声を上げて、慌ててシャツの裾で涎を拭き取りました。
そこで再びロクロウ少年はハッとしました。手に取ったスカートの下に、カラフルな泡のような小さな布切れを発見したからです。
「あっー」
ロクロウ少年は再び声を上げます。そこにあったのは姉のパンティでした。
ロクロウ少年の体の中で黒くて濃密な何かがすごい勢いで膨れ上がり、しゃがみ込みそうになるほど激しく心臓が脈打ちました。
咥えていた食べかけの竹輪をズボンのポケットに押し込み、洗濯籠の中から小ぶりなシュークリームくらいの大きさの、黄色と緑の模様が入った布の塊をそっと掬い上げました。
姉ちゃんだー
それは姉そのものでした。可憐で儚げで、羽根のように軽く、ロクロウ少年の掌の上て出来たてのプリンのように揺れています。
おまけにそれは爽やかな果汁のようなよい匂い、いつも姉から漂ってくるいい匂いを放っています。
無意識のうちにロクロウ少年はその可憐な泡に鼻面を突っ込んでいました。慌てる豚のように鼻を鳴らして息を吸い込みます。
なんていい匂いだろうー
ロクロウ少年は陶然としながら姉の香りを楽しみました。
その時です。姉の香りに酔ったせいでしょうか。ロクロウ少年の脳裏に素晴らしい、悪魔的なアイデアが閃きました。まさに神の啓示、天の声だったのかもしれません。その声さえ聞かなければ、彼にはもっと違った人生があったことでしょう。
もしこの時誰かが家に居たなら。母親が洗濯物を放り出していなければ。洗濯物の一番上に置かれたのが姉のスカートでなければ。
そうすればロクロウ少年にはもっと別の、例えば父親と同じように家庭をもち、自分の子に柔道を教えるような人生があったのかもしれません。
しかし、残念ながら、姉のスカートと下着を目にした瞬間、ロクロウ少年の歩む道は決まってしまったのです。
ロクロウ少年の脳裏に閃光のように浮かんだアイデア。それはー
このスカートとパンティで俺も姉ちゃんになれるー




