腕を探せ
セーラー服姿で微笑む双葉六郎の写真を矯めつ眇めつ眺めていたアケチは、写真の端を指で示して、
「この、横の子」
とナミコシに写真を見せる。ナミコシは顔をしかめて胸ポケットから老眼鏡を取り出した。
「双葉の隣のですか?」
ナミコシは写真に顔を寄せる。微笑む双葉の横に、セーラー服の袖とプリーツスカートの一部が写り込んでいる。
「そう。その子です」
「んー、これで人物を特定するのはちょっと難しいでしょう。雰囲気からすると女性でしょうが」
諦め気味に答えるナミコシに、アケチは再び写真の一部を小指の先で押さえる。
「ほら、ここ。この袖の色合い。それから袖のステッチ」
ナミコシはちょっと困ったような不思議そうな顔つきになる。
「色?ステッチですか?」
「そう。この色味、ステッチの感じは聖隷女学院の制服だと思うんですけど」
ナミコシは目を見開いて額をツルリとひと撫でする。
「そんなの分かるんですか?」
アケチは小さく頷きながら顎に指先を当てる。
「双葉さんの隣の子が聖隷女学院の生徒だとして、個人を特定するのは少し骨だな。校門前で張り込むしかないかな」
ナミコシが慌てたように言う。
「いやいや、待ってください。個人を特定って、顔も名前も分からんのですよ?」
アケチは写真を指先でつつく。
「この腕を探せばいいんでしょ?」
確かに写真には僅かに女子の二の腕が写り込んでいる。
「まさかそんなことがー いやいやアケチ君、そもそもこの子もコスプレと言うんですかね、借り物の制服を着ているだけかもしれませんよ?」
アケチは写真を回したり傾けたりしながら観察を続ける。
「借り物じゃないと思いますよ。服がちゃんとこの子の体の形になってるみたいだし」
「そんなの分かるんですか!?」
驚きと喜びでナミコシ警部は酔っ払ったように顔を紅潮させている。
「無茶なダイエットとか怪我とかしてなければ多分」
ナミコシは握った拳を振る。
「素晴らしい!学校側の許可を取りましょう!首実検ならぬ腕実験をすればいい!」
ところがアケチは乗り気ではない。
「できればこっそりやりたいですね。僕のことも知られたくないし」
ナミコシはもう浮かれ顔で、
「何を言ってるんです。こっそりばれずに確認できるよう学校側に配慮させますから」
「いい手があるよ」
ヒロがエプロンで手を拭きながら言う。
「要はアケチ先生が学院内で生徒の腕だか胸だかを確認できればいいんでしょう?」
アケチはちょっと顰めっ面で尋ねる。
「どんな手を使うんだ?」
ヒロは思わせぶりな微笑みを浮かべてアケチを見つめる。
「高等部でいいんだよね?」
「あぁ」
アケチは面白くなさそうに返事をするが、目は光を帯びている。
「もうすぐ学園のバザーがあるんだ。バザーはもちろん授業の一環だから全員参加さ。病欠とかじゃなければね」
アケチはムスッとした表情のまま。
「で?古着でも売りに行くのか?」
「中等部に知り合いがいるんだ。招待状を譲ってもらえるよ。もちろんタダじゃないけどね。招待状を持って生徒の家族として堂々入るんだ。どう?」
ナミコシがパンと手を叩く。
「素晴らしい!それでいきましょう!」
ヒロはニッコリと微笑んでナミコシに尋ねる。
「招待状のお金、経費で出してもらえるよね?」
「もちろんですとも!えーと、いかほどかな?」
ヒロは人差し指をピンと立てて口元に当てる。
「その子には一万円。それから」
ヒロはアケチを笑顔で見つめる。
「僕にはどんなご褒美を貰える?」
アケチはムスッとした顔で視線をそらす。不承不承といった感じでアケチは尋ねた。
「何が欲しいんだ?」




