美少女幽霊さんのお引越し②
「いやー土足!土足でした!!あははは。これはこれはすいませぇーん。」
おじさんは靴を脱いで私を見る。
まったく!!土足で入るなんて!失礼しちゃう!!
ん⋯⋯そんなことじゃなかった!聞きたいのは。
「あの。色々聞きたいことがあるんです。」
「ええ?なんでしょう?彼女の有無とかですかぁ?」
「ち、違います!!」
もーやだこのおじさん!
私はぐったりしつつ、おじさんから顔をそらして大きくため息をついた。
なんか疲れたなぁ。
そらそうだよ。真夜中じゃん。
「あのですね!まず。その掃除機なんなんですか?あとエリさん?すごく悲しそうな顔しててなんか気になりますし⋯まって、なんでそもそも私の家なの?!」
「あーそのへん今頃気が付かれましたぁ?いやー自分何も言わず家に入れてくれたんで、はじめどうしたもんかなぁ?とおもってたんすよねぇ。」
「えええ?!なら言ってください!」
「いやぁ~聞かれませんでしたからぁ~自分、聞かれないこと答えない主義なんすよ〜。」
おじさんはにっこり笑って私を見る。
なんなのこの人っ。
「で。美鈴さん。ご質問にお答えしないとですよねぇ。んー美鈴さん、今お仕事は?」
「?は?ヤブから棒になんですか?いきなり。」
「んふふふ。ヤブからスティックですねぇ。」
「スティック?えっと。ごめんなさい。ちょっと意味わからなくって。」
このおじさんは、ほんとよくわかんないことを言うのよね。
持ちネタかしら?
「あっそうかぁ。わかりませんかぁ。年齢差を感じますぅ。」
シューンと悲しそうな顔をされたけど。なんなの?このおじさん。
私はそんなのほっといて、聞かれたことに答えた。
「今の話に関係は全くないと思いますが!今私は無職です!」
ふんっ。つい先ほど解雇されました!
思い出しちゃったじゃん。あのやな言い方!!
電話を3コールでとったくらいで怒鳴りつけられてさぁ。
ほんと、やめてよかった!
嫌なこと思い出している時に。
おじさんがニコニコしながら私の目の前でウインクした。
「なんとまぁ。そうですかぁ。いやはや。そしたらアリですねぇ。ふむふむ。」
そして
持っている掃除機を床に置くと。
「いやーねぇ。美鈴さん。掃除機は、うーん企業秘密なんでねぇ?ちょっと説明はできないんすけどねぇ。
エリさんが?なんでここにいるかってこと?そこからですかねぇ。」
えー掃除機は教えてくれないの?企業秘密の掃除機ってなによー!
掃除機を見つめながら私は説明を待つ。
「ん~~まずですね。美鈴さん。ここに幽霊さんくるのは。まぁそういうとこだから?ですね。」
「は?」
何を言ってるんだろうこのおじさんは。
「そんなキョトーンとした顔してぇ!もう!教科書に載せたいくらい完璧なキョトーン顔ですねぇ。」
「⋯⋯」
「あっと。続けましょう。だって美鈴さん。じゃー例えばお隣。お隣とお会いしたことは?」
おじさんがいきなり問いかけてくる。
んー??お隣?
「お隣は中年?の男の方と、ちょっと若い女性の方の二人だったかなぁ?夜帰って来るとき女の方は時々玄関先で見かけるんで、挨拶しますよ。感じの良い方。男の方はほとんど見かけないなぁ。夜のお仕事なのかな?」
「ほうほう。じゃーそのお隣は?」
「え?うちの隣の隣?」
「はい。」
おじさんにそんな個人情報話していいものなのかしら?
まぁ。知ってるってことは。やっぱ大家の関係の人なのかもね。
「んと。ですね。隣の隣はおばあさんが住んでらして。夜帰ってくるときに、挨拶よくします。時々みかんとかくれますよ。昨日は、バナナもらいました。私帰り遅いんで。『大変だねぇ』ってよく言ってくれるんです」
ほんと、おばあちゃんいい人なんだ。メロン!くれたこともあるんだよぉー!
でもおばあちゃん夜型だよねとか思いながら、早朝仕事行くときも玄関の前にいたりしてさぁ。
お元気なの。
お孫さんとかいらしてるのはみたことないけど。私は昼間は仕事してたしなぁ。今度私から何か差し入れしよーっと。
しみじみ思い出しながら答え終わると。
「はい!今出てきたお二方!幽霊です!」
「⋯⋯⋯は?」
おおお?おじさん?
私は全く意味がわからずポカーンと。おじさんを見つめる。
「おっ。この顔も教科書に載せられる完璧なキョトン顔となりますねぇ。すばらしいっ!」
「おおおおおじさん!ちょっともう一回いってください!」
「はい。もう一度ですね?すばらしいキョトン顔です!!
あ、あと自分、刹那です!」
「ちがーう!お二人が幽霊ってとこ。」
「あ~そっちぃー?ならそういっていただかないとぉ。はい。お二方とも幽霊さんですね。お隣はまだ日が浅い感じはしますが。そのお隣はだいぶ長いですよ。」
えええ⋯⋯
「ここ事故物件だったの?!」
だから家賃が安いのかな?確かに駅から徒歩圏内だし。ちょっと古いけど家賃は安いもんね⋯⋯。
「いやいやいや。美鈴さん!といってもちゃんと生者はすんでますよ!ナマモノ!」
「えー」
「美鈴さんの下の階はご存知ですぅ〜?」
「え?あー小さいお子さんとママさんのとこですかね?お子さんに時々⋯あれ⋯夜とかに、おね〜ちゃーんって言われ⋯⋯」
「はい!幽霊です!でもでもでもぉ〜ご安心ください!そのお隣とそのお隣はナマモノですから!」
ナマモノ⋯人間って言いたいのかしら⋯⋯。
私は衝撃の事実に声がでなかった。
そりゃそうだよ。こんなに幽霊さんがいるなんで。
まさか!大家も幽霊だったりして!
「美鈴さん?大丈夫ですか?顔色が若干悪いですよぉ?まぁでもね。ここ、集まりやすいとこなのかもしれませんねぇ。
でもねぇ危険には危険なんですよね。ナマモノと幽霊と一緒にいるのはね。」
おじさんはゴソゴソとポケットを探ると。
「はい!美鈴さん!退職祝いですこれ!」
私の首に何かをかけた。
え?
触るとネックレス?
しずく型の透明な石のついたネックレスだった。
「なんですか?これ。」
「はい。これは、幽霊が幽霊っぽく見えるものなんですね。ちょっと特別なネックレスです!
ほら、美鈴さんって、平気でミカンなんかもらっちゃってるってことは、幽霊もナマモノも同じに見えてるってことですよねぇ?
それって危険なんですよぉ。といってもねぇ、あちらさん⋯幽霊さんたちは、幽霊ってわかってもらえないならなんにもできないんですけどねぇ。」
「え?どういうことですか?」
「?きになりますぅ?幽霊さんってわからない人にとりついたって、お願いしたって、わかってもらえないからですよぉ。」
ええええ?!
そういうものなの?!
なんかもう何がなんだかだよ⋯⋯
「と、いっても、危険には危険です。恋人になったら幽霊だった。とかね。そういうのは避けたいじゃないですか?で、そのネックレスした今、エリさん見てみてください。ほらほらどうぞ!どうぞ!」
背中をグイグイ押されて、幽霊さんの方を向かされると。
「あれ?なんか少しだけど透けてない?」
そうなの。さっきと見え方が違う!!!
「おおお!すばらしい〜弊社の秘密兵器だけありますね!それ。幽霊さんの見え方がかわりました〜?いや〜よかったぁ。」
おじさんは、うんうんと頷いて、私をみる。
なんか不思議な感じなんだけど⋯⋯⋯。
てか、秘密兵器って何よ⋯⋯。
でも。幽霊って本当にいるのね。
透けてるもの。ホントびっくり!!
私はちょっと悪いかなぁと思いつつ、幽霊のエリさんをジロジロ見ちゃった。
「透けてるってびっくり。」
「そうですねぇ。よい発見になりましたね!いやぁ〜うんうん!!よかったよかった。
これで自分から怪しいものに近づくとかしないようにしましょうねぇ。色々いますのでねぇ。が、ナマモノも危険ですがねぇ〜。」
「は、はい⋯⋯」
でもたしかに自分の目でみて、薄かったら近づかないもんね⋯
見て見ぬふりしよう今後は⋯⋯。
「さ、てと。次はエリさんのお話にうつりましょうか。」
刹那さんがニコニコしながら私を見る。




