美少女幽霊さんのお引越し①
掃除機をどーんと振り上げてドヤ顔で立つおじさんを、見つめ⋯⋯
もう、ドラにしかみえないよ。よく見るとお腹のとこに大きなポケットあるじゃん⋯⋯
服は青い色のつなぎ。
お腹にポッケ!
掃除機とほうきをもったおじさん。お掃除業者かなぁ?
「あ、あのぅ⋯ところで何をしてるんでしょうか?」
掃除機だし、お掃除をするんだろうけど⋯
私深夜に掃除はいるのとか聞いてないもん。
私の質問に、この世のものとは思えないポカンとした顔でおじさんは答える。
「いや。お仕事ですけど?みてわかりませんかね?」
えーよくわかんないから聞いてるのに⋯
「あー申し訳ない。美鈴さん。自分、説明省いてましたね。えーと美鈴さんちにね今いらっしゃる方のことなんですけど⋯あー」
言いにくそうにつぶやいて、目をそらすおじさんを私は見つめながら、答えた。
「あぁ、あの座ってる女の人?お知り合いですか?私びっくりしてて、ここ私の部屋なんですね。いきなりいるので。部屋お間違えじゃないかって。」
ほんとにそう。ボロアパートだから、隣の部屋の鍵とかであいちゃったのかも。
ほら!うちの前の会社
⋯辞めた会社を、前の会社なんて言ってる私だわ⋯
で、そこのロッカーが、どの鍵でもみんな空くのよ!!
だからそういうこともあるのかも。
なんたってボロアパートだし。
そんなこと思っておじさんを見ていたら。
刹那さんは、びっくりした顔で私をみた。
「えー美鈴さんってば。見えるんですね?!そらびっくり仰天ですよー。いやいや」
「は?」
なにいってんの?このおじさん。
おじさんはお腹のポッケからピンクのタオルを出すと顔を拭う。
⋯タオルはいってたんだ!(笑)
「で!でね!美鈴さん!お部屋にいる方なんですけど、実は、幽霊なんすよ!」
はあ?なにいってんの?このドラ。
真夜中に家の前で掃除機持って何言ってるんだろう⋯⋯
「ややややや!その目はなんですか!自分、歓喜や尊敬の目でみられるのは慣れてるすけど。そんな目で見られるのは初めてですよ?!」
えー⋯⋯
「あのおじさん⋯」
「刹那です!」
「あー⋯刹那さん⋯ちょっとまってください」
「え?!どこで待ちます?」
にこっと笑いながらおじさんは私を見つめる。
なんかもうよくわかんないことになってるよ。
「あの、ド⋯じゃなかった。おじ⋯あー刹那さん?」
「ちょっと美鈴さん!あなた!刹那です!せ、つ、な!」
「あー刹那さん。もう一度さっきの話していただけます?」
「え?私はせ、つ、なですか?」
ちがう!ちがうんだよ。
もー何このおじさん。
私、頭痛くなっちゃった。
「あ!美鈴さん。もしかして!お部屋にいる幽霊の件でしたかねぇ?」
「はぁまぁそんな感じです。」
つぶやく私の前でおじさんはポケットからメモを取り出した。
「えーあの方はですね。関東に在住のエリさんですね。ご年齢は⋯あ。非公開ですね。性別は女性。」
「はぁ」
おじさんはそう言ってメモを見つめながら続ける。
「えーとですね。半年前に車にひかれて亡くなってますね!赤いミニバンですね。いやー即死だったそうですよ。車の信号無視のスピード違反だそうで。でもねーこんなこいったらあれですけど。車はねー痛いんですよ!スピード出してるのにぶつかるとね。痛い痛いって亡くなるよりは即死のが、まだ救われますよ。」
おじさんはうなずきながらタオルで顔を拭う。
そしてメモをポケットにしまうと、私を見た。
「て、わけで、美鈴さんのお部屋にいるわけなんですね。」
「?!ちょっとまってください!」
「えー?どちらで待ちますか?」
このおっさんもういい加減にしてほしい。
私はおじさんの顔をにらみつける。
「えぇー美鈴さんっ怖いですよ〰️可愛い顔でにらまないでいただけますぅー?」
「あのね!おじさん!人の部屋の前で何をしてるのかって言うの!幽霊とかよくわかんないから!そんな話はもういいんです!」
「え?そのあたり省略してよかったですか?あっ!あと自分刹那です。」
「は?」
「ややや。すいません。いやはや⋯それならそうとはじめにいっていただければ。」
にこっとわらっておじさんは私を見たあと。
掃除機をどーんと前に出し
「というわけで、お掃除していきますね!」
ウインクした。
おじさんは私の部屋の扉を開けると、ズカズカと入り込む。
ええ⋯⋯家主に断りもなくおじさん⋯⋯
しし、しかも土足土足!!
「あっどうもどうも〜エリさんですね?自分、如月刹那と申します。あ、こちら名刺です。」
部屋の中。
座っている女性(幽霊さん)に向かっておじさんは名刺を渡して話しかける。
本当、だれにでもあんななんだなぁ。
感心しちゃう。
私は、後ろで2人をながめる。
「え⋯⋯おじさまは⋯誰ですか?如月さん⋯⋯」
エリさんと呼ばれたその幽霊さんは、半分おびえたような目でおじさんを見つめる。
そりゃそうだよね。いきなりだよ。
名刺なんか渡して⋯⋯
びっくりしちゃうよね。
しかも。名前もねぇ⋯⋯
「いや、いやいやいや?そんな感じの目!今日2回目ですよ?先ほども美鈴さんからいただきました。自分、憧れの目で見られるのはよくありますが、そういう目で見られるのは初めて⋯2回目ですねぇ」
「はぁ2回目⋯⋯」
「あー!あと自分、刹那でいいですので。」
「はぁ」
また、名前呼びを押し付けてる⋯⋯
ポカンとしている幽霊さん
そりゃそうだよ。なんでここにいるのー?とか、
あなたは誰?とか⋯⋯。
理由じゃないもんね。
普通なんでこんなとこに幽霊がいるか?だよ。
しかも私!家主じゃん!
でも。よく考えて⋯今朝いたっけ?この人⋯⋯
毎日終電始発だったからなぁ⋯⋯
そんな物思いにふけっていると。
「さて!」
おじさんは背中にしょっている掃除機をふりかざすと。
「では!!ではでは!!エリさんお引越しですよぉーー!!!」
掃除機をエリさんの前に向けてスイッチを入れる。
ゴゴゴぉぉぉぉ!!
大きな音がして⋯⋯
え?!なになに?なにいきなり。
つ、ツッコミどころが満載で!!私は大きな声を出してしまった!
「ええっ!おじさんちょっとまって!!!」
「自分、刹那です。」
「あー。せ、刹那さん!!ちょっちょっと待ってください!!!あと、掃除機止めて!!」
「はぁ。どこで待ちますか?」
ガコんと音を出して掃除機を止めて答えた。
⋯⋯このおじさんは何度これをやれば気が済むの!
私はなんかもう慣れちゃったやりとりにうんざりしながら。
次はちょっとまってじゃなくて。ちょっと止まってください!とか言おうかなぁ?でも目上の人に失礼かなぁ⋯⋯と、ちらっと考えていた。
「ででで?美鈴さん。なんなんですぅー?お仕事の邪魔をされたら困ります。真夜中ですよぉ。お肌に悪い。さっさと終わらせてくださいよぉ。」
不服そうな顔をしながら私に向かって文句を言っているけど。
だって何がなんだかわかんないの。
いきなりおじさん。しかも掃除機!
あ。あと幽霊!!
説明していただかないと!私は家主なんだから!!
「刹那さん!私、説明を先にしてほしいです!あと靴!ぬいでください!!」




