↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/30

強制撤去④

「さてと。刹那!後の処理はまかせたからね。強制撤去は手続きが面倒だから。よろしくねぇ〜♪」

ルーク社長はそう言ってから私の目の前に立つと。

「美鈴ちゃん。お腹すいたから、なんか食べに行こう〜!」

私の手を引いて、アパートを出た。

外に出るともう辺りは暗くなっていた⋯⋯。


「あのばーさんはさぁ。」

ルーク社長は、夜の街の街灯に照らされながら、私の手を引っ張ったまま軽やかな足取りで歩いていく。

「あのばーさん、元々は戦後の貧しい時代に、小さな食堂を一人で切り盛りしてたんだよね。最初はただ、お腹をすかせた人を助けたいだけの、親切で大人しいおふくろさんだったんだって」

「えっあの人が⋯⋯?」

「うん。でもね、旦那に先立たれて、大事な子供にも先立たれて⋯⋯ずっと一人で店を守るうちに、頭のネジが壊れちゃったんだ。

誰も救ってくれないなら、私が奪う側になってやるってね。最初は身寄りのない行き倒れの人から。最後は近所の子供まで⋯⋯。

喰らえば喰らうほど、自分の中に誰かが居続けてくれる気がしたのかな⋯⋯死んでからも止めることができなくてさ⋯⋯もう手がつけられなくなってた。」

ルーク社長はそこまで淡々と語ると、ちらりと私を振り返った。

「人間なんてさ、ちょっとした絶望と孤独で、いくらでも化け物になれちゃうんだよ⋯⋯。」

「そう⋯⋯なんですね⋯⋯」

「生まれながらの悪はいないんだよ。何かに狂わされていってしまってさ。ああなってしまった。」

⋯⋯そうなんだ。

でも。だからって正しいことをしてるとは思えない。

やってはいけないことをしている。

「うん。そうだね。やってはいけないことをあれはした。そして死んでまでなお、狂い続けるのはダメだね。」

私の心を読んだかのように、ルーク社長は頷いた。

「あのおばぁちゃんは⋯⋯生前に罪は償ったんですか?」

「?あぁ。それが、罪が発覚する前に病気で死んでしまった。そして、死んでもなお止められない狂った亡霊になったんだよ。

だから、ここから罪を償わないとね。あれは⋯⋯これから償いが始まるんだよ⋯⋯」

そう言ってルーク社長は私を見て笑った。

ゾクッとする微笑み。

目は笑っていない。


「でさ、深い絶望と殺戮の記憶って、一番毒が強くてね。普通の人だったら、さっきみたいにダイレクトに見たら脳が焼き切れて狂っちゃうんだよね⋯⋯あのバーさんの記憶みて、よく大丈夫だったよね。美鈴ちゃん。」

え?

「ええっ?!脳が⋯⋯?焼き切れる⋯⋯?」

血の気が引いていくのが自分でも分かった。

じゃあ、さっきのあの吐き気と激しい頭痛は、ただの恐怖じゃなかったってこと?そういうのだったってこと?!

「ルーク社長が⋯⋯すぐ消してくれたから。私はなんともなかったんですね⋯⋯ありがとうございます。」

私はホッとして社長を見る。

「うーん。それもあるけどね。でも、消すまでの数秒間、美鈴ちゃんはあの罪と狂気の濁流を自力で受け止めてたでしょ? 」

ルーク社長は立ち止まると、振り返って私を見上げた。

私の手を握る手に力を込めてギュッと握った。

街灯の光を背にして浮かび上がるその笑顔は、相変わらず無邪気で、そして恐ろしく美しい。

「美鈴ちゃんにはね、そういう素質があるんだよ。だから僕、美鈴ちゃんのこと一目で気に入っちゃったんだ!」

「え?素質?!何の素質ですが?」

「うん。色々なね♪」

「ええええっ?何のですか?!」

パニックになって手を振り払おうとしたけれど、ルーク社長の小さな手は、まるで万力のようにびくともしない。冷たい指先から、不思議な圧迫感が伝わってくる。

「大丈夫!大丈夫!僕がそばにいるし!」

ルーク社長はそう言って悪戯っぽく片目を細めた。

「えぇ?!」

私はその可愛らしい仕草をするルーク社長を呆然と見つめていた。

「さ、て!お腹すいたね〜。明ちゃんのとこで、なんか食べようか〜。何がいいかな♪」

ルーク社長はそう言って、私の手を引いて、歩いていく。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。