強制撤去①
「プリンとチョコパフェ美鈴ちゃんはどっちすき?」
ルーク社長は私にそう聞く。
「プリン好きです。」
私が答えると
「そっかぁ。じゃーデザートは!プリンパフェ!」
ルーク社長がそう言うと明子さんが、ルーク社長と私の前に、美味しそうなプリンパフェをドン!と置いた。
わぁぁぁー美味しそう!
すごい!
プリンがたっぷりのって、フルーツがのっているパフェ!!
メロンとマンゴーのってる!
私は目を輝かせてパフェを見つめてしまった。
「食べながら聞いてね。今日これから行くのはさ。美鈴ちゃんが前住んでたアパートだよ。」
え?!
「昨日もそこに行きましたよ?」
私が首を傾げてルーク社長を見ると。
「うん。そうなんだよね。代わり映えしない場所ばかりでごめんね。変なのばっかのアパートだよね。もう昔っからいる、あれを強制撤去なんだよねぇ今回はさ。さっさとやらないと、良くないんだよね。」
ルーク社長の赤い瞳がキラッと光った。
ん??どういうこと??
強制撤去って何?
「うん?いつまでも退去してくれない⋯⋯何をしてもお引越ししてくれない人を強制的にお引越しさせることだね。」
まるで私の心を読んだかのようにルーク社長は答えた。
わぁ。そんな人あのアパートにいたの?
プリンを一口、口に運ぶ。
美味しい〜!
あまさ控えめなのに。おいしい!!!
カラメルも美味しいー!!
「幸せなお顔ありがとう〜。プリンは美味しいよねぇ。」
ルーク社長もプリンをほうばるとニコニコする。
「ルーク社長?それで、アパートの強制的にお引越しさせる方?なんですけど。」
「うん?」
「そういう迷惑かけてそうな人はあのアパートにさすがにいなかったような気がして⋯⋯。」
うん。まぁ?クセ強めな人はいたけど。
隣の人は、昨日お引越ししたじゃない?
角の部屋のおばちゃんは、幽霊だったって最近知ったんだけども、メロンとかミカンとか、イチゴとか⋯⋯会うたびにいつもくれる優しい人なんだよなぁ⋯⋯。
いつもニコニコしてるやさしそうなおばちゃんだったよねぇ。
あと下の階の人は⋯⋯
確か⋯⋯
私が思い出していると。
「その、おばあさんなんだよね。」
え?
ルーク社長はそう言うと立ち上がる。
「さぁ。美鈴ちゃん。行こうか!あ。そのままでいいよ。あのユニフォームダサいからさぁ。」
ルーク社長は私に手を差し出すと。
私の手を引いて、歩き出した。
⋯⋯社長なんだけど。可愛い男の子にエスコートされて。なんかほっこりしてしまう〜。
『美鈴っち!社長!いってら〜』
明子さんがお見送りしてくれた。
「ルーク社長。何も持っていかなくていいんですか?」
手を引かれながら歩いていると。
「うん?社長の僕がいたら問題ないよ。後処理は、ポンコツにさせたらいいしね。」
ルーク社長はニコニコ笑うとそう言った。
えー刹那さんに?
大丈夫かなぁ?
「ルーク社長!そのおばあちゃんのことなんですけど。いつも果物とかくれる人で。
あ⋯⋯幽霊ってわかっていなかったからなんですけど⋯⋯。なんか悪い人にはみえないんですよねぇ?」
私はおばあちゃんを思い出す。
いつもニコニコしてて。夜遅い私が歩いてるときとかに声かけてくれて。
『お帰り〜これ食べる?持ってきな〜!』って果物とかくれたの。
変な人には見えないんだけどなぁ⋯⋯。
思い出すほどに、やっぱりあのおばあちゃんが「強制撤去」されるような悪い幽霊にはどうしても思えない。
「ルーク社長。本当にそのおばあちゃん、強引にお引越し?させるんですか⋯⋯?」
歩幅を合わせながら私が尋ねると、ルーク社長は繋いだ手に少しだけ力を込めて、ちらりと私を見上げた。
「強引? ふふ、美鈴ちゃんは優しいねぇ。だから付け込まれるんだよ?」
「え?」
赤い瞳の奥が光る。
え?どういうこと?
「この世に未練のある幽霊なんか、ろくなものじゃないってことだよ。」
「え?ろくなものじゃない?」
ルーク社長の言葉が、私の頭の中で冷たく響いた。
「だってさ、美鈴ちゃん。死んだ人間がいつまでもこの世に留まるなんて、自然の摂理に反してるでしょ? 生きてる人間に執着して⋯⋯長く居座るほどその存在自体が『毒』になるんだよ。しかもあのばーさん何のために居座ってるのか⋯⋯」
ニコニコと笑っていたルーク社長の顔から、子どもらしい無邪気さが綺麗に消え去っている。
「そのもらった果物さぁ。美鈴ちゃんは美味しく食べたかもしれないけれど。それ、美鈴ちゃんの『生気』と引き換えに貰ってたとしたら?」
「え⋯⋯っ」
思わず足が止まりかけたけれど、ルーク社長に引かれている手はそのまま前へと進んでいく。
「あれが、いいことをしようとして果物をあげるわけないんだよね。だからね、さっさとお引越しさせてあげるんだ。これ以上誰かに毒を撒き散らさないためにもね。」
え?!どういうこと??
私は意味がわからなくてただルーク社長の後をついていくだけだった。




