元締め?!
『大変だったんだって?美鈴っち〜。ほらほら食べな〜。』
「はい⋯⋯。」
明子さんはそう言って、私の前にオムライスをトンっと置いた。
わ!美味しそう〜。
お仕事が終わって、お腹がぺこぺこなので、カフェでご飯を食べることにしたんだけど。
刹那さんは、急用で出かけてしまって、私ひとり。
『ここんとこクセのあるのにあたったんだってねぇ。おつかれ~!』
確かに、ちょっとクセ強めの幽霊さんだった。
みんなお引越しはしちゃったけど。
色々な事情があるんだなぁと、感じちゃったよ。
結構皆、私がいま想像しているよりずっと大変な事情があった⋯⋯。
私は一息つくと、オムライスを口に入れる。
「わぁ。美味しい!」
すごーく美味しい!!ふわふわ卵〜。デミグラスソースが激ウマ!!!
『んふふふ。沢山お食べ。デザートも用意するね!』
すると
お店の扉が開いて。
「どーもー」
人の声。
振り返ると、子どもがいた。
小学生低学年かなぁ?くらいの男の子。
ピンク色の髪の毛で、赤色の瞳。引き込まれるような濃い赤い瞳⋯⋯。
ちょっと⋯⋯小学生っぽくない子ども。
でも、将来絶対にイケメンになります!っていう感じ⋯⋯。
『あらぁ。お久し〜!』
明子さんがその男の子に向かって声をかけた。
ピンク色の髪の隙間から覗く赤い瞳は、まるで人の奥底まで見透かすみたいに、妙に大人びて⋯⋯というか、ちょっと人間離れした光を宿している。
「んと。君は?もしかして⋯⋯。」
男の子は私を見てそう尋ねた。
『あー美鈴っちよ。美鈴っち。刹那ちゃんの部下ね。』
横から明子さんが説明をしてくれる。
「あぁ。やっぱり。」
その男の子は私の前の席に座って頬杖をついて、私を見た。
「あ。こんにちは。えっと⋯⋯」
男の子を見ると。
「どうも。美鈴ちゃん。」
男の子はそう言って明子さんを振り返る。
明子さんは
『はいよー!』
って言いながら、その男の子の前にパングラタンを置いた。
「うんうん。これこれ!これが食べたくなるんだよねぇ〜。」
明子さんがニコニコしながらその隣にオレンジジュースを置く。男の子はフーフーと大きな息を吹きかけながら、パングラタンの上のとろ〜り溶けたチーズをフォークで上手に絡めとった。
「ん〜! これこれ、この濃厚なホワイトソースがたまんないんだよね!いくらでも食べれちゃう。」
はむっと口に含んで、幸せそうに頬を緩ませる姿はどこからどう見ても普通の男の子。
⋯⋯なんだけど。
「あの⋯⋯お名前は⋯⋯?」
私が恐る恐る尋ねると、男の子はチーズをびろーんと伸ばしたまま、赤い瞳をちらりと私に向けた。
「ん?あぁ。ごめんね。自己紹介まだだった。僕はルーク。よろしくね。」
「はい。よろしくお願いします。」
大人びた赤い瞳に引き込まれて。つい。敬語が出てしまう。
「聞いてるよ、美鈴ちゃん。ブラック企業をクビになって、ウチのポンコツに拾われたんだって?」
ポンコツ⋯⋯。
刹那さんのことかな?
『美鈴っち、ルークは刹那ちゃんの上司だよ。』
私の耳元で、明子さんがコソコソっと耳打ち。
え?!
「あ。紹介まだだった?グループの社長やってます。元締めみたいな感じかな?よろしくね!」
えー?
しゃ、社長?!社長?!子ども!
「しゃ、社長ぉぉぉお!???」
私は思わず素で叫んでしまい、オムライスを喉に詰まらせかけて
「ゲホッ、ゲホッ!」
と激しく咳き込んだ。
「ふふっ、良いリアクション。みんなこの姿見ると最初そうやって驚くんだよね〜。美鈴ちゃん。大丈夫?」
ルーク社長(?)は、オレンジジュースをストローでちゅーっと吸いながら、悪戯っ子のように赤い瞳を細めて笑った。その顔は完全に子どもなんだけど、漂う空気感がやっぱり違う⋯⋯。
「ああっ。清水美鈴です。あの。新入社員です。よろしくお願いします。」
慌てて立ち上がって頭を下げた。
「あぁ〜。そんな硬い挨拶いいよいいよ〜。話は聞いてたからねぇ。」
ニコニコと微笑みながら、ルーク社長は私を見た。
「で? 刹那のポンコツはどこ行ったの?」
え?!ポ、ポンコツ?!
「あ、はい! 急に急用ができたとかで、バタバタと慌てて出かけてしまって⋯⋯私ひとりでお昼ごはんを食べていたところです。」
「ふーん。相変わらず落ち着きのないやつ。せっかく面白い案件を持ってきたのにさぁ。」
そう言って、ルーク社長は私を見てニヤリと笑う。
「ま、いないならいいや。美鈴ちゃん。僕と一緒にお仕事しようか〜。」
ええええっ?!
ななな何を?!
『まず落ち着いて食べてからにしな!』
横で明子さんが呆れたように私達を見ていた。




