掃除機の使い方②
「あ〜この辺りですねぇ」
事務所から少し行ったところにあるビル。
三階建の小さめのビル。
入り口は新聞会社。
配達の自転車とかバイクが数台並んでる。
2階は⋯⋯
ん?
人の気配を感じない。
あれ?2階3階は空いてるのかな?
よくよく見るとものさみしげなビル。
階段を上がっていくと。
刹那さんが口を開いた。
「さて。今日のお引越しはこのビルの3階です。」
「あ。今日のお引越しはどんな方なんですか?」
そういえば聞いてなかった。
私は、ウエストポーチからタブレットを取り出そうとすると。
「あ〜今日は名前はありません。」
なぬ?
名前はない?
「ん?名前ない?」
「はい。名前はありません」
どういうこと???
幽霊さんに名前がないってこと?
名前のない人なんかいないのに?
名前を捨てたひと!?とか??
まって、名前は捨ててもあるよねぇ?
呼ぶとき困るじゃない。
ん〜、まだ名前のない人⋯⋯。
いやまって。そんな人はこんなビルに幽霊さんになることない?かな?
うーーーん。
「んふふふ。たくさん妄想してますねぇ。
まぁ。わかりますわかります〜。名前ないなんて驚きますよねぇ〜。」
そう言って刹那さんは3階に向かう。
「あ。ここですねぇ。」
刹那さんはそう言って、3階の部屋を開けると。
「え」
そこには
たくさんの犬さんと猫さん。
ええ?!
んんんん?!犬と猫!
んんん?しかも、みんな薄い⋯⋯。
ま、さか。
「動物の幽霊さん?」
「大正解で〜す。」
えええええ?!
「そういうのもあるんですか?!」
「はい。幽霊は人だけではありませんよぉ?
生きてるものは、みんないつか幽霊になるんです。
まぁ。引っ越し業者に引っ越しさせられることは限られた人ですけどぉ。」
でも。犬さんと猫さんとは⋯⋯。
部屋には犬さんが2匹。猫さんが3匹。
こっちを見ている。
「どうもどうも〜私!こういうもので〜す。」
刹那さんは名刺を犬さんへ見せる。
犬さんは見てやしないよ。
クンクン鳴いてる。
名刺なんか読めないよね。
犬さんと猫さんは知らんぷり。
「さてさてぇーお引越しさせていただきますねぇ?
さぁ!お引越し開始でーす!美鈴さん!
さぁさぁ。遠慮せず!
吸っちゃってくださぁい。」
刹那さんの掛け声で
私は掃除機を持ち上げる。
けど。
ええええ。いきなり?!
動物を吸うのはなんか可哀想な感じがしちゃって私には無理だよ⋯⋯。
どうしようって止まっている私に向かって刹那さんは言い放つ。
「美鈴さん?この犬さんと猫さんは、無責任に多頭飼いされて、めんどくさくなった飼い主に放置された子たちなんですよぉ。
ほんととんでもない。
この子たちはこんなとこにいても幸せにはなれないので。さっさとお引越しさせてあげないと。かわいそうです!」
そうなんだ。
無責任が一番いけない!!
『くーんくーん。』
『にゃー』
『ぐるるるる』
私を見て後ろに下がる犬さん猫さん。
私にそんな掃除機で吸うなんかできないよぉ。
掃除機を持ち上げて電源を入れた瞬間
カチ。
掃除機が動き出す。
んんんん???!
体から力が湧き出す!
「!!!!なにこれっ。」
私は犬さん猫さんに向かって掃除機を向け、吸い出した。
ゴオオオォォォォ。
大きな音を出して掃除機は動き出す。
すごい力!
犬さんを一匹掃除機で吸う。
スポン。
簡単に吸い込んだ。
お!
おおおっ?!
「なにこれーすごい力!!」
次!
どんどん犬さん猫さんを吸っていき。
最後の一匹。
ゴオオオォォォォ
大きな音をたてて。
吸い込んだ。
「やだ⋯みんな吸っちゃった!」
あっという間に犬さんと猫さんは目の前からいなくなった。
「⋯⋯人がかわりましたねぇ。掃除機持つと。」
刹那さんがぽそっとつぶやいた。
「あああ。いなくなってしまいました!!!」
私は何もなくなった部屋を見つめる。
「はい。そりゃ〜吸いましたから!」
「刹那さん?犬さん猫さんは吸ったらどこへ行くんですか?」
そうなの。ちょっと気になってた。
掃除機で吸ったらどこへ行っちゃうの?って。
刹那さんは
ニッコリ笑うと。
「え?どこに行くかって?引っ越し先にですが?」
当たり前のように答えた。
うーん。
やっぱドラだ。ドラ。
四次元にでも繋がってるのかな?掃除機⋯⋯。




