安アパートのシンデレラ①
「美鈴さん。今日はですねぇ。美鈴さんの前に住んでいたアパートでお仕事なんですよねぇ」
1階のカフェで、パングラタンをほおばりながら刹那さんが言った。
小さめな食パン一斤をくり抜いて、なかにシーフードのマカロニグラタンがはいってるのね。
たっぷりのチーズがかかっていて。
ボリューム満点なのに!
もたれない!!!
なにこれいくらでも食べられちゃう〜。
しかも!エビがプリプリ〜!!ホタテも入ってる!!
とってもパングラタンが美味しくて、もひもひ食べてたら。
いきなりだから。
グラタンに惚れ惚れしてて、はじめ聞き漏らしちゃうかと思っちゃった。
え??なんだって?!
前のアパート?!
みんな住民だと思って過ごしてたけど。
ほぼ、幽霊さんが住んでいましたというあのアパート⋯⋯。
「えっと、と、いうことは、隣のお姉さんですか?」
私は隣のお姉さんを思い出す。
⋯⋯
あのアパートに住んでたときは、毎日が終電で。
365日働いてた⋯⋯。
毎日毎日怒られて、無茶難題押しつけられて⋯⋯。
いつも夜中の12時頃私はアパートに戻ってきていて。
もうぐったりで。
コンビニで買ったおにぎり食べてお風呂入ってすぐ寝よう。
明日も始発じゃん⋯⋯
っていつも思いながらアパートの部屋に向かう途中に、その時間にちょうど出勤する男の人がいたんだよね。
そうすると隣の部屋のお姉さんが玄関の前によくいて、出勤する男の人の後ろ姿をみているの。
髪の毛が長くて、スラッとしたスタイルで、いつもニコニコしていた。
その時によく夜会うから。
お姉さんとは「こんばんは〜」って挨拶をしてたんだよね。
年の離れた仲良し夫婦にしか見えなかった。
⋯⋯
「でも今考えてもあのお姉さんが幽霊さんとは⋯⋯。」
「お姉さんだけではないですけどね〜。その隣のおばあさんもナマモノ(生身)ではないですよ〜。」
あぁ⋯そうでした⋯。
「で。今回の方ですが。その女性のお名前は、鈴木サキさん。」
ふむふむ。
私はいつもすれ違うだけの人を思い出しながら⋯⋯
確か、その女の人⋯⋯サキさんより結構年上に見えた。
ガタイのいい男の人だったと思う。
顔をあまり見ないから。きちんとはわからないんだよね。
「一緒に年上の男の人と住んでると思うんですね?その人は?」
刹那さんに聞くと、
「あ〜はいはい。その方はナマモノです!」
うん。前言ってたよね?
⋯⋯でもさぁ。
まってまって、幽霊さんと人間の同居ってこと?!
えええぇ。
なんかどんな暮らしなの?!
「その人幽霊さんと住んでるんですか⋯すごい⋯⋯」
「あらあらあら〜?自分だって家に幽霊置いてたくせにぃ〜。」
ギグっ。
たしかに⋯⋯。
でででも、私の場合は、勝手に居座られたかんじじゃない?
お隣は夜お見送りするんだもん。
完全同居だよね?!
でも、幽霊さんと人間との生活って⋯⋯。
ご飯とか⋯⋯幽霊さんは食べない?よねぇ?
寝たりとか⋯⋯どうなんだろう⋯⋯。
着替えとかするのかな?!
⋯⋯
「美鈴さん!美鈴さん!妄想中大変申し訳ないんですけどお〜?お話続けていいですかぁ?」
「あああっはい!」
「えー。ではでは。それでですねぇサキさんですけど。ただの同居ではないみたいですね。お相手のナマモノ⋯⋯健一さんですね。その方は、サキさんの存在わかってないですね!」
えええええ?!
じゃー居候?!
でも毎晩見送りしてるよね?
どういう関係なんだろう。
「信用機構によりますと。」
刹那さんはタブレットを眺めながら話し始める。
「ん〜。なんかですね。これはストーカーです!」
えええええっ?!
随分話しが変わるじゃないの!
どういうこと?!
なんか事件の匂いがしてくるんですけど?!
「刹那さん!ストーカーってどういうことですか?!」
「ん〜それは本人に説明していただきましょう!」
刹那さんはそう言ってお茶を飲みほして。
「ん〜今日は夜の仕事になりますねぇ。それまで少し仮眠しましょう〜。あ。その前にデザートまだですかぁ?特大プリン・ア・ラ・モードが食べたいですねぇ〜!!」
『あんたーまだ食うの?!見た目正方形になってるからね?!』
奥から鋭い声がした。




