第1話 ②
「面白い話聞かせてもらったから、ここはお姉さんに奢らせて」
合コンのあと、凛子さんたちはそう言って俺と翔馬に財布を開かせてくれなかった。
確か、五つほど向こうが年上で立場も学生と社会人だ。それでも合コンで女性に奢ってもらうということに若干の後ろめたさを感じてしまう。
そんな俺の感情をかぎ取ったのか、凛子さんが俺の耳元でこうささやいた。
「でもその代わりと言ったらずるいんだけど、私幸多郎くんのこともっと知りたくなっちゃったな。
この後二人で呑み直さない?」
もう一人の女性はお手洗いに行っている。翔馬は居酒屋の店長と知り合いらしく、何やら話し込んでいた。
凛子さんは年上の魅力あふれる美しい女性だ。
このシチュエーション、並の男性なら飛び上がって喜ぶのだろうが。
俺の心と股間は、やはり平静を保っていた。
「ん-、ここまで冷静な反応されちゃうとさすがにちょっとショックだな」
この手法を何度か試したことがあるのか、凛子さんは俺の反応を見て本当にショックを受けているようだった。
「さっきも話した通り、俺には心の問題があるので二人で呑んでも楽しくないと思いますが?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない
少なくとも凡百の男よりは楽しめそうじゃない?」
「凛子さんって恋愛経験豊富なんですか?」
「何ビッチっていいたいの?こう見えても、ガードは固いのよ」
少し赤くなった顔でころころと笑う。
まだ出会って数時間しかたっていないが、あけっぴろげな性格であろうことは十分に分かったし、何より話していて楽しいと感じる自分がいることにも気づいていた。
俺は確かに人間の女性に性的な興奮を覚えることはない。
だがそれは、女性が嫌いとか女性のことを怖いと思っているということではない。
むしろ、楽しい人なら積極的に仲良くなりたいと思う。
そして、今目の前にいる凛子さんは、仲良くなりたいと思える女性だった。
「つまらない夜になっても知りませんよ」
「そうこなくっちゃ!
そうと決まれば……翔馬くん!私幸多郎もらって帰るからミナのことよろしくね」
凛子さんは店の奥によく通る声でそう告げると、俺の腕をつかんで歩き始めた。
店の奥では目を丸くした翔馬が俺たち二人をじっと見送っている。
俺が凛子さんにつかまれていない方の手で謝る仕草をすると、ようやく事態を飲み込めたのか、今度はニタニタと悪そうな笑顔で親指を立ててきた。
「日本酒のおいしいお店を知ってるのよ」
凛子さんは、ずんずんと夜の街を進んでいく。
*****
頭が痛い。
それと体が揺れている。
ここがどこか思い出せない。
目を開けるとその先に天井があった。
天井がくるくると回っているように見えるのは、たぶん俺が酔っ払っているからだ。
そこまで認識したタイミングで声が聞こえた。
「おはよう、意外とお早いお目覚めね」
誰だ?っとおもった1秒後に気付いた
「凛子さん?」
声は足元のほうから聞こえてきた。
それでようやく自分が天井を向いて横になっていることに気が付いた。
体を起こそう。
そう思って手足を動かそうとしたが、動かない。
いや正確には動かせない。
そのことに気付いてようやく俺は、自分がベットの上に大の字で拘束されていることに気付いた。
「え、ちょっと、なんですかこれ」
もっと強く力を込めたが、両手首、両足首につなげられた錠がそれを拒む。
SMなどで使われる道具なのだろうが、当然俺にそんな趣味はない。
「幸多郎くん、女の子で興奮できないってことは当然童貞だよね。
こういうところに来るのもはじめてなのかな?」
こういうところ、と言われて初めて、今いる部屋がやたら淡い色の照明で照らされていることに気付いた。
あと、壁の大部分が鏡でおおわれていることにも気づいた。
鏡には俺の姿も映っている。
それを見てもう一つ気づいたことがある。
「なんで俺パンイチなんですか!」
「さあなんででしょう」
驚く俺を面白がるように、凛子さんが近づいてくる。
その凛子さんの姿を見て俺は再度叫び声をあげた。
「なんで下着姿なんですか!」
そこには上下とも真っ赤なランジェリーを身に着けた凛子さんが立っていた。
スレンダーな印象だったが、こう見ると胸もお尻も出るとこは出ている。
凛子さんは俺の視線を誘導するように、自分の太ももから胸にかけて右手の指を滑らせる。
「あの後私たち楽しくおしゃべりしたじゃない?
けど最後は幸多郎くんの電池がきれかけちゃって、休憩のためにここに入ったんじゃない」
そうなのか?ちっとも覚えてない。
「私もあの後詳しく聞いたから、河童を見たって話は信じてる。
だからここにきても何もないのはわかってたのよ?
けどさ、さすがに部屋に就いた瞬間寝られちゃったらねぇ?」
分かるでしょ?問いたげな眼でこちらを見ないで。
何もわかりませんから
「せっかく面白いアイテムもあることだし、ここはひとつ幸多郎くんの殻破りチャレンジの手助けをしてあげようかなとおもったの」
そういって凛子さんは腕を後ろに回してブラのフォックを外す。
「ショック療法よ」
露になった二つの乳房を見せつけながら凛子さんが言った。




