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裸の河童にしか発情できないのってやっぱりどこかヘンですか?  作者: 沖田 了


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第3話 ③

地下の空間を改めて見渡す。


岩をくり抜いて作ったようなその空間には、真ん中に大きな柱があり、その下には池があった。

池の周りにはベンチがあり、グラスを持った河童たちがたむろしている。


ドーム球場の2階席のように、二層に分かれており、2階にはテーブルと椅子があるようだ。


一回の内壁沿いにはカウンタカーがいくつも並んでおり、ドリンクやフードが提供されているようだ。


俺たちの場所の反対側にはステージのようなものがあり、音楽に合わせて踊る河童の姿も見える。


ドーム状の空間には流行りの音楽が流れており、誰も俺と凛子さんが入ってきたことに気を止めていなかった。


凛子さんは慣れた足取りで進むと、一番手前のカウンターにお酒を作っていた若い男性に声をかけた。

この時気がついたことだ、カウンターの内側で働く人はみんな普通の人間の姿をしていた。


「奥空いてるかしら?」


「あ、凛子さんいらっしゃい。

 昨日はどうでした?いい玉取れましたか?」


「それがねぇ。超上玉だと思って念入りにした処理したのが大外れ。

 そのせいで欲求不満なんだよね。

 ね、また今度友達紹介してよ」


「嫌ですよ!凛子さんって玉取る前にも結構サービスしちゃうタイプでしょ?

 そんな羨ましいこと友達に回せませんよ。僕じゃダメですか?」


「河童の玉とったってしょうがないでしょ。

 馬鹿なこと言ってないで、奥空いてるの空いてないの?」


「空いてますよ。お連れさんと二人ですか?」


男性が俺の方を見て凛子さんに訊ねる。


「そうよ。できれば個室でお願い」


「えっとお連れさんは、失礼ですが河童じゃないようですが」


「大丈夫、彼匂いが弱いけどちゃんとこっち側だから」


凛子さんと男性がよくわからない話をしている。

俺はよくわからず曖昧な苦笑いを浮かべる。


「凛子さんがそう言うなら」


男性はいかにも渋々と言った様子で俺の方を見る。

値踏みをされているようなその視線に居心地が悪くなる。

しばらくして男性は目を外し、手元のタブレットを覗き込んだ。


「いつもの席が空いてます。

 お飲み物はどうされます?」


「私はいつもの、彼にも同じものをお願い」


凛子さんは注文を終えると、カウンターの横にある扉を開けた。

着いていくとそこにはまた別の空間があった。


椅子やテーブルが並び、居酒屋のような場所だ。

どうやらカウンターの横にはそれぞれこのような飲食用の空間があるようだ。


凛子さんはその中のさらに奥の個室に入った。

よくある居酒屋の個室で、真ん中にテーブル。左右に二人がけの椅子がある部屋だった。

凛子さんが奥に座ったので、俺はその正面に座る。


居酒屋で凛子さんに腕を引かれてから、目まぐるしく変わる状況に何とか食いついて来ていたが、腰を落ち着けたことでその緊張の糸が緩んだ。

糸が緩むと、胸の内に秘めていた疑問がとめどなく溢れて来た。


「何なんですかこの空間は!

 俺たち落ちましたよね?それもかなりの対空時間があったんでめちゃめちゃ落ちましたよね?

 で、水に落ちて……何で無事なんですか?普通死んじゃいますよね?!

 で、あの水なんですか?なんかすぐ乾いたんですけど、変な化学薬品とかじゃないですよね?俺ちょっと飲んじゃいましたよ。

 あとここなんですか?何で地下にこんな空間があるんですか?

 それと河童ってこんなにいるですか?俺なんて小さい頃から追い求めて追い求めてようやく昨日出会えたって言うのに!

 て言うか凛子さんは河童なんですよね?

 河童って人間に化けれるんですか?それとも人間がベースで河童に変身ができるって感じなんですか?」


あとそれから、と続けようとした口を凛子さんに摘まれた。

俺の唇を三本の指で摘む。

摘まれた口は河童のように飛び出した。


「うるさい口ね。

 話せることは全部話すからちょっと待って」


ちょうどそのタイミングでさっきの男性が入って来た。手にはビールジャッキを二つ持っている。

が、中にはビールではなく、カルピスを極限まで薄めたような半透明の液体が入っていた。


「いつものお二つお待ち

 っと、お邪魔でしたか?」


男は俺の口を摘む凛子さんを見て訊ねた。


「いいえ、ちょっとこの後輩くんを躾けてたところ」


凛子さんはそう言ってあしらうとジャッキを一つ手に取った。


「ま、沢山聞きたいことがあるんでしょうけど、確かめたいことがあるのは私も同じ。

 特にあなたが何者なのか、とかね。

 けど、夜は長いのよ、まずは乾杯しましょ」


俺は促されてもう一つのジョッキを手に取った。


「また疑問が一つ増えたんですけど、これはなんですか?」


凛子は案の定俺の質問には答えず、カンパーイと景気よくジャッキをぶつけた。

半透明の液体が少し溢れる。


俺は意を決してジョッキに並々注がれたその液体を飲んだ。


お酒だ。だが、日本酒なのか焼酎なのか、はたまた泡盛なのか、なんのお酒なのかわからない。

口当たりなにめらか、よく冷えており喉越しもいい、わずかに発泡している。鼻に抜けるフルーティな香りはよく磨かれた日本酒を思わせるが、ジョッキで飲んでも咽せない程度に度数は低いようだ。


得体が知れないお酒ではあるがその味は


「美味しい」


思わず漏れ出たその感想に、凛子さんはイタズラっぽくニヤッと笑った。


「今日は先にダウンしないでよね」







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