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裸の河童にしか発情できないのってやっぱりどこかヘンですか?  作者: 沖田 了


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第3話 ②

「お母さん、この子私のお客さんなんだ」


凛子さんは俺を指さしてそう言った。


「あらそうだったの。

 気付かなくてごめんなさいね」


おかみさんは、そう言って俺の前に出したおしぼりを片付ける。


「こっちよ」


凛子さんが俺の腕を掴んで歩き出す。

逆らえない強さではなかったが、俺のはその手に引かれるまま歩き出す。


凛子さんは居酒屋の裏口から外へ出た。

そこには商店街側からは想像できない程度に広い裏庭があった。

凛子さんは歩みを止めず裏庭を突っ切る。


「あの」


声をかけても振り返ることはない。

裏にはには小さな石造りの池があった。今は枯れて水がないが、その池から昨日の河童の姿が連想された。


今の一瞬で聞きたいことが増えた。

さっきの大将とおかみさんは凛子さんのご両親なのだろう。と言うことはあの二人も河童なのか?

河童が人間の社会に溶け込んでいるってどういうことなのか?

そもそも凛子さんは、本当に俺が想像している河童なのか?実は宇宙人でした。とか、全く別の存在だったりしないのか?


昨日の出来事と合わせると、聞きたいことで頭がパンクしてしまいそうになる。


だけど、凛子さんそんな質問の隙を全く与えずに裏庭を突っ切ると、その隅にある小さな物置小屋の前で足を止めた。


慣れた手つきで扉を開ける。

すでに日が暮れている為、小屋の中は真っ暗で何も見えない。


「入って」


急に凛子さんが腕を強く引いた。

身構えていなかった俺は小屋の中は半ば投げ飛ばされるように転がり込む。


「何を!」


文句を言う隙もなく、転がった俺の上に凛子さんが馬乗りになり小屋の扉を閉めた。

仰向けになった俺のお腹の少し下あたりに凛子さんのお尻がなる。

少し尖ってるんだな、とか、河童の姿だったらよかったのにと思うまもなく体に大きな衝撃を感じる。


まるで、落とし穴にでも落ちたかのような浮遊感が体を包む。

真っ暗な小屋の中では、本当に自分が落ちているのかただの錯覚なのかな判断もつかない。


ただお腹の上凛子さんのお尻と、脇腹を挟む太ももの感触だけ感じ取ることができる。


浮遊感は数秒かあるいはもっと短かったかもしれない。


「息。止めといた方がいいわよ」


凛子さんのアドバイスはかなり遅かった。

その言葉が聞こえた直後、俺の体は水面に叩きつけられた。

常温よりも少し冷たい水が全身を包む。

息を止めるのは間に合わず、たくさんの水が口と鼻から入ってくる。


慌てて空気を吸おうともがくが、どちらが上なのか分からない。


もう息が続かないと思ったその時、腕を掴んで引き上げられた。


「足がつく浅瀬で溺れないでよ」


腕を掴んでいたのは凛子さんだった。

凛子さんは全身ずぶ濡れの俺と違い、俺の腕を掴んでいる右手以外濡れていなかった。


そこで俺は凛子さんの姿が見えることに気がついた。

あたりはさっきまでの暗闇ではなく、薄い光が満ちている。


俺は今、とても大きな井戸の底のようなところにいた。

上に続く大穴は先が見通せないほどの闇で覆われている。

俺が立っている井戸の底のは、俺の胸くらいまでの水があった。

その水より少し高い位置にこれまた大きな横穴が空いており、凛子さんはそこから手を伸ばして俺のことを掴んでいた。


俺はプールから上がる要領で、凛子さんが立つ横穴に這い出た。


「え、乾いていく」


横穴に出た瞬間、体を濡らしていた水が全て乾いていった。

ドライヤーで乾かされていると言うより、アルコールなどの揮発性な高い液体のように、それでいて気過熱を奪われて体が冷えるわけでもなく、ただ音もなく消える。

まるで初めから濡れていなかったかのような。


俺は凛子さんが濡れていなかった理由を理解した。


「さ、こっちよ」


凛子さんはまた何の説明もなく横穴を歩き始めた。

車高の高い車でも一台は通れそうなほど大きく、電球などの光源がないのに壁全体がうっすらと光を放っているかのような微かな光で満たされていた。


俺は尋ねるのを諦めて黙って凛子さんの背後を歩く。


横穴には100メートルほどで終わった。

突き当たりには金属製の扉が一つ。


凛子さんはまた躊躇いもなくその扉を開けた。

扉を開けた瞬間、奥から騒々しい音楽と人の声が聞こえてきた。


こっちよと言う言葉もなく、凛子さんが扉の奥に消える。

扉が一人でに閉まりそうになり、俺は慌てて後を追った。

扉を超えた先には、ドーム上の空間が広がっていた。

フットサル場を二つ並べたくらいの広い空間には、カラフルな光の粒が弾け飛び、空間全体をエレキな音楽が響き渡っている。


どこからどう見てもクラブ。

だがただのクラブではなかった。


地下にあるとは思えないほど広いこの空間にはざっと五十人以上の客が集っていたのだが、音楽に合わせて踊る客の大半が人間ではなかった。


彼らは服を着ていたので細部はわからないが、服から飛び出た腕や脚は緑色に輝き、口は嘴のように大きく飛び出し、その後頭部にはもれなく皿がついていた。

どこからどう見ても昨日の凛子さんと同じ河童だった。


ここは河童たちが集う地下の秘密クラブだった。










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