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ep.8 海路を行く

 翌日、日が昇る頃に俺たちは甲板へと昇り、海風を浴びながら、二人で自前の干し肉と乾パンを食べていた。

 出される食事や水を正直に食するのは危険が伴うからだ。

 周囲に人がいないことを確認して俺は知らない祖国のことをエルマから聞いていた。


「周辺国からすると小国ですから豊かな生活が出来た訳ではありませんが、国政は公正で、国民はみんなで支えあい、作物を育て、貿易や商売をし、平和な日常がありました。

 私は平民出身でしたので、子供の頃は、よく街を駆け回っていました」


「私の両親はどんな人?」


「陛下は誠実で強い方でしたし、王妃様もお優しい方です。

 お二人とも国民から慕われておりました。

 もちろん・・・」


 人の気配を感じたため、エルマは言葉止めた。

 複数の船員が、甲板へと上がって来た。


「姉さん、これから行くテイザークってどんなところ?

 私、行ったことないから教えて」


 エルマは、船員たちにおかしな動きがないか伺いつつ応じる。

「自由都市テイザークは、海に面した大きな城塞都市で貿易や商売が盛んな国。

 大きなマーケット、多くの建物や工房があるわ。

 王様はいなくて、複数のギルドがあって、それぞれのギルドの長が議会で政治つまり国の物事を決めていくの」


「へえ~王様がいないんだ」


「ただ、テイザークでは、キーとなる二人の有力者、フォン兄弟がいるわ。

 弟のセイリュウ=フォンは、商船ギルドの長で議会の議長。

 兄のセキリュウ=フォンは、軍の総司令官」


「会えるかな?」


「さあ、えらい人たちだから簡単には会えないと思うけど、運が良ければ会えるかもね」


「いい人だったら、会えるといいな~」


「そうね」


「なあ、そこの姉さん」

 そう言ってエルマに声を掛けて来たのは、ひげ面の男、ブルックだった。


「私に何か?」


 ブルックは、エルマの全身を舐めるように見やって言う。

「剣を持ってるが、傭兵か何かか?」


「余計な詮索は無しじゃなかったか?」


「そうだったな。

 じゃあ、別の相談だ。

 一晩いくら出せばいい?」


「悪いがそういった商売はやってない」


「船代、チャラにしてやってもか?」


「何度も言わせるな」


「そうか、そりゃ残念だ。

 どうだ、せめて一緒に酒でも飲まないか」


「悪いが、それもけっこうだ」


「つれねえな・・・」

 ブルックはそう言うと、片手をあげて去っていった。


 入れ替わるように違う男の船員が声を掛けて来た。


「なあ、お嬢ちゃん」


(お、俺か?)


「この子に何か?」

 エルマが代わりに応じる。


「いや、良かったら面白いものを見せてやろうと思ってな」


「面白いもの?」


「ああ、見てろよ」

 男はそう言うと、腰にある短剣に手を当てた。

 エルマがとっさに、剣に触れる。


「まてまて、誤解するなよ、襲う訳じゃねえ。

 俺は、昔、雑技やってたからよ、ナイフ投げに自信があるんだ。

 それを見せてやろうと思ってな」

 そういうと男は、短刀を取り出した。

 エルマは警戒を緩めない。


「見てろよ、お嬢ちゃん」


 男は五メートルくらい離れた樽に狙いを定める。


「はっ!」


 と言うと樽に向かって飛んでいき樽に弾かれた。


「あれ、腕が落ちたかな・・・」


(確かに、面白い見世物だ・・・)


「当たるだけでもすごいよ、おじさん!」

(俺、ナイスフォロー)


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