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ep.7 戦慄と残痕

 日が沈む前に俺たちの乗った武装商船は帆をはり出港した。

 風を切り、船は順調に進んでいるようだ。


 俺たちにあてがわれた船内の部屋には、他にも複数の乗客と思われる人々がいた。

 皆が訳アリなのか、室内は静かだった。

 俺たちは部屋の片隅で腰を下ろし寄り添っていた。


 エルマは周囲を見回して確認すると俺の耳元で囁いた。


「今のところ怪しい動きはない、私が見張っているから少し休んで」


「分かった」

 俺はエルマの言葉に従い、目をつぶるとあたりは暗闇に包まれた。

 こちらに来てから周りを囲まれて休むのは初めてだ、少し安堵を感じる気がした。


 船の揺れを少し感じながら、俺は闇に身をゆだねた。


(静かだ・・・)


 ゆっくり時間が過ぎていく。


 ・・・・・・・・・


 突如、暗闇の中で何かがくるような気がした、衝動?


(俺は人を殺した!


 殺されるかもしれない?


 なぜ俺はここにいる?


 ここはどこだ?


 元の世界はどうなった?


 俺は戻れるのか?


 俺はどこに行くのか?)


 暗い恐怖の戦慄が俺の心臓を容赦なく掴んだ。


(痛い、苦しい・・・)


 繰り返す衝動と戦慄・・・


(痛い、苦しい・・・)


 ・・・・・・・・・


 俺は、はっと目を開いた。


 エルマが心配そうな表情でこっちを見ている。

「ずいぶん、うなされていたけど大丈夫?」


 俺は自分の額を拭うと、大量の脂汗が手についた。

 乱れた呼吸、脈打つ鼓動、思わず深い息を吐く。


 大量の恐怖と残痕・・・


 再び訪れる恐怖の戦慄。


「俺とて武術家の端くれ・・・」

 痛みをごまかすためか、


「俺とて武術家の端くれ・・・」

 恐怖を紛らわせるためか、俺は自分に言い聞かせた。


 エルマは心配して俺の肩を包み込んでくれた。

 ぬくもりが伝わってくるが、俺はエルマに構う余裕がなかった。


「今まで、俺なりに死ぬ気で生きて来た・・・

 その経験、知、武、我が兵法、人生は総合力、すべてをかけてやるしかない・・・」


「俺とて武術家の端くれ、今をやるだけだ!」


 エルマはさらに強く抱きしめて言ってくれた。

「大丈夫、私がいる・・・」


 和らいだ、消えはしないが、和らいだ、彼女の声に俺は救われた気がした。

 俺はハッとした。


 再び汗をぬぐい俺は言った。

「姉さん、ごめん、少し怖い夢をみた・・・」


「大丈夫、あなたは強い、そして私がいる・・・」

 エルマは、優しく、そして力強く言ってくれた。


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