ep.85 モアレス川会戦1
王都・ケルスと城塞都市バギルを分かつように、南北にモアレス川が流れている。
人が徒歩で歩ける程度の深さであるが、流れと川幅はそれなりにあり、何とか渡れるといった程度である。
「橋を落とせ!」
バールダム公軍は、川を渡ると橋を落とした。
「これで簡単にはこちらに来られまい。
我らは、こちらに布陣する」
バールダム公軍は、川を挟んで東側に布陣する。
西側からエムリア王国軍が進軍してくるのが見えた、その数およそ1800。
エムリア王国軍は、エルマが将として率いていた。
「川を挟んでの布陣となるな」
レキが応じる。
「ああ、渡河して疲れたところを叩くという戦術だろう。
非常に真っ当な考えだ」
「どう対処する?」
「正攻法でいえば、迂回して北の橋を渡るだが、橋を渡って戦場に行くには一週間は掛かかり、現実的ではない」
「では、どうする?」
「とりあえずは、こちらも西側に布陣して機を伺うしかあるまい」
「敵が諦めて、東進して距離が開いたところを、渡河するか?」
「それもありだな」
「悠長な話だな」
「ああ、悠長な話だ。
まあ、戦争に焦りは禁物だからな」
日が沈む頃、お互い川を挟んで野営陣地を展開することとなった。
バールダムは言う。
「闇夜に紛れて渡河して来ぬようしっかりと見張れ」
「はっ」
川のあちこちにかがり火を焚き警戒を強める。
対岸で俺はかがり火を見ていた。
(川を照らす不吉なイルミネーションか・・・)
「これじゃあ、簡単には近づけねえな」
「あ、レッド」
「月も炎の明かりも綺麗なのに、やってることは戦争なんだね。
人間ってつくづく愚かな生き物なのかもしれない」
「アニス、難しいこと、あんまり考えるな。
ほどほどにしとかないと息が詰まっちまうぜ」
「そうかもね」
「ああ、そうさ。
それよりも、新鮮な川魚が採れて焼いてるんだ、あっちで食おうぜ!」
「うん、そうする」
俺が、レッドの焚火の辺りに来くると、塩をまぶした川魚が美味しそうな匂いを発している。
「うわ~、美味しそうな匂い!」
「うまそうだろ、さっ、座って食え!」
俺は、一つを手に取って食ってみる。
(塩が利いてうっまい! 臭みもなくアユの塩焼きみたいだ・・・)
「うわ~、美味しいね、レッド」
レッドも旨そうに食っている。
「だろ?よくガイが魚とか獣とか採って食わしてくれたんだよな」
「ガイって?」
「ああ、俺がいた雑技団でピエロやってる奴で、良く分からない奴だったけど、魚とか獣とか採るのが得意な奴でな。
あと植物にもやたら詳しくて、色んな食べ物を調達してくれて助かったな」
「ピエロハンター?」
「それじゃあ、ピエロを狩るんじゃないか?」
「そっか、ハンター・ピエロだ」
「おお、まさにそれだな、わははは」
本陣テントでは、レキとエルマが座って話をしていた。
レキが言う。
「さっき早馬で連絡があった」
「それで決行は?」
「3日後の夜だ」




