ep.84 王都・ケルス防衛戦5
バールダム公軍の伝令が伝わるより早く、ウオレス伯軍は動いた。
ウオレス伯が叫ぶ。
「全軍、突撃、バールダム公軍の本陣を落とせ!」
ウオレス伯軍が、反撃態勢の整わない、右翼側面に食らいついた。
(ウオレス伯軍が裏切ったのか・・・)
バールダム公軍に混乱と戦慄が走る。
ケネウスが、歯ぎしりしながら言った。
「おのれ~、裏切り者が・・・」
ケネウスが言うと同時に王都の東門の上に武聖出陣旗が掲げられると、東門が開いた。
「突撃!」
俺は、兵を率いて突撃する。
仲間の裏切りと俺たちの西からの強襲に、バールダム公軍は浮足立った。
俺は先陣を切る。
向かってくる兵の槍を弾き、体勢が崩れたところに馬の突進力を活かした突きを胸元に入れる。
「やっ!」
ぐっと抜くと血が滴る。
矢が飛んで来たので、体を反らして躱した。
俺は馬から飛び降りた。
「行かせるか!」
目の前の敵が槍を突いて来きたので回転するように弾くとそのまま腹に突きを入れる。
「死ね!」
背後から来る剣を石突で弾きつつ、振り返りざまに切りつけると頸動脈から血が噴き出した。
俺が作った傷口から、兵たちがなだれ込み傷口を広げていく。
俺は再び騎乗し、兵とともに突撃する。
「突撃せよ!バールダム公の首をあげよ!」
敵の騎馬が槍を手に迫って来ると突然横に吹っ飛んだ。
仲間の弓矢の援護射撃だった。
「行け~!」
俺は馬の体当たりで歩兵を二人吹き飛ばした。
バールダム公軍の本陣も戦況がつかめず、混乱していた。
ケネウスが叫ぶ。
「態勢を!陣形を立て直せ!」
ケネウスの言葉も虚しく、バールダム公軍は、ますます混乱が広がる。
それどころか、金属音と怒号が、徐々に本陣に近づいてくる。
ケネウスが言う。
「父上、ここも危ないかと、ここは私が指揮をとりますので一旦、後方へお下がりください」
バールダムは言う。
「うむ、やむを得ぬ、ケネウス任せたぞ!」
「はっ、父上!」
ケネウスは近衛兵を連れて、勇敢にも前進しつつ兵にむかって叫んだ。
「下がるな、押し返せ!」
剣を抜き、再び叫ぶ。
「下がるな、押し返せええぐぶお・・・」
飛んで来た短槍がケネウスの胸を貫いていた。
「おおおおお!」
ケネウスは、胸に刺さった槍を抜こうとするが上手く力が入らない。
隣の近衛兵に言う。
「この槍を抜いてくれないか・・・」
そう言うと、馬から落ちた。
「えいっ!」
俺は、走り抜けながら、騎兵の足首を短刀で切った。
「ぐああっ!」
側面から向かって来る兵、懐に飛び込み背負って投げると、地面に叩きつけると同時に喉元に短刀を突き刺す。
「おおおおお・・・」
次の敵が前面から斧を振り上げる、振り下ろしに合わせて側面に躱しつつ手首を切る。
「うあああ・・・」
敵は、北と西からの挟撃により総崩れとなり、後退する。
「追撃せよ!」
俺たちは逃げるバールダム公軍の背を切りつけ更なる出血を強いた。
しばらくすると、ドーン、ドーン、ドーンと退却の太鼓の合図がなった。
俺たちは、東門へと撤退した。
ウオレス伯軍も北門から入ることを許可した。
俺は馬を見失ったので歩いて、門をくぐった。
また、髪は紅く染まっていた。
俺は、ギリアスを伴い、ウオレス伯と対面した。
ウオレス伯は、真っ赤に染まった俺を見てたじろいだ、そして跪く。
「アニスティア王女ですか?」
「そう」
「はじめまして王女、ウオレス=トールマンです。
遅くなりましたが、参陣致しました」
「本当に遅かった・・・
次、裏切ったら、もう容赦はしない・・・」
「はっ、申し訳ありません」
ギリアスが言う。
「ともあれ、こちらの陣営に来て頂いたのだ、歓迎するぞ。
ウオレス伯」
「はっ、ありがたき幸せ」
(これだけ脅しとけば、簡単には裏切らないだろう・・・)
バールダム公軍は、主力の東軍が壊滅的な損害を受けたため、軍の再編のため、西と南の門の兵も下げ、王都の東で合流した。
バールダムが言う。
「息子が討ち取られた上、4000の兵が2400にまでなってしまうとは・・・」
副官が問う。
「閣下、バギルに撤退しますか?」
「いや、相手が追って来るならモアレス川の橋を落とし、川を挟んでの会戦とする。
川を渡って弱っているところを叩くのだ。
このままではすまさぬ・・・」




