ep.80 王都・ケルス防衛戦1
その一報は、俺が王の部屋にいる時にやって来た。
将軍・ギリアムが入って来て、言う。
「陛下、殿下、バールダム公の軍4000が、バギルを発し、モアレス川を越えて進軍中とのことです。
また、併せて、アイル城砦・ウオレス伯の軍1000が、こちら向けて進軍を開始致しました」
王が言う。
「そうか、とうとう来たか・・・」
「心配なさらず、お父様も民も王都も国も私が全て守ってみせます」
「娘よ、いざとなったら、余や王都を置いて落ち延びよ、よいな」
「はい、でも私は負けませんから」
俺はそう言うと、ギリアムと共に王の寝室から出た。
俺とギリアムが作戦会議室に入るとエルマ、レキ、レッド、キース、スワリス及び武官たちが既に着席していた。
俺たちが席に座るとレキが言った。
「防衛の配置及び作戦は既に皆に周知している通りだ」
エルマが問う。
「北から来る、ウオレス伯は信用できるのか?」
「分からん、だが信用するしかない」
レッドが言う。
「こっちを裏切ったら、俺がぶっ殺せばいいんだろう?
難しいことじゃねえよ」
エルマが言う。
「東門は、おそらく最激戦区になる。
判断を誤るなよレッド」
「わかってるよ」
「状況に応じて、アニス様とスワリスが援護に向かうから、一人で背負いすぎるな」
「だから分かってるって言ってんだろ」
それから数日後の昼頃、砂煙とともに軍勢が目視で確認できるところまで来ていた。
破城槌やカタパルトといった攻城兵器も携えている。
東門のレッドからは、その姿がありありと見えた。
「おお、すげえ数が来てるな、こりゃ戦いがいがあるぜ」
ガームダム公の陣営からも王都が見えていた。
息子で将軍のケネウスが言う。
「さすがは王都、外壁の高さ、広さがバギルとは違いますな」
「そうだ、今後は我らが寄って立つ地だ、そうであって貰わねば困る。
だが、あの広さだ、敵軍はたった1500の兵で守るのは大変であろうな」
「そうですね、父上。
こちらは総勢5000、秘策もありますゆえ負けはございますまい」
「いや、油断はするな。
油断は隙に繋がる、まして武聖などという得体の知れぬ者も敵にはいるのだ」
「はい、申し訳ありません、父上。
そろそろ陣形を整えますか」
「うむ、そうしよう」
ケネウスが叫ぶ。
「陣形を整えろ!」
命令が発せられると、人の群れが四角いいくつかの塊に変わっていく。
バールダム公の兵によって東門の前には、何かが並べられていく。
レッドは、それをじっと見た。
「趣味の悪いことをしやがる」
並べられたモノは、グラウド=ハウマン侯とその家族の首だった。
ドン、ドン、ドン、と太鼓を叩く音がすると、一騎の騎馬が東門の前にやって来て叫んだ。
「古い時代は終わった。
降伏し我らの創る新しい国の一員となるのであれば、命までは取らぬ。
だが、もし抵抗するのであれば、この愚か者の首とともに並ぶこととなる!
返答は如何か?」
レッドが、東門の上から叫ぶ。
「今なら降伏が間に合うぞ!
死にてえならかかって来い!」
「いいだろう、死をもって償うとよい!」
騎馬は、陣営へと下がって行った。
王都を巡る攻防が今始まる。




