ep.78 王都・ケルス防衛戦 戦略
俺たちが、顔つなぎをしている頃、レキとマリーヌは、客間で話をしていた。
レキが言う。
「禅譲という形ではないが、アニスが義理の娘となり皇太子となって、正当な継承権を得る形とはなった」
「当初の予定とは異なりますが、とりあえずは、大義名分を得たということですね。
大義名分、武聖の力と兵力、アルタージュ王国の後ろ盾、これらをエサにしてどこまで味方についてくれるかですね」
「どこか見込みがあるところはないのか?」
「北のアイル城砦の守将であるウオレス=トールマン将軍が、情勢からバールダム公に従っているが、折り合いが悪いとの噂があります。
今、姉のアルラが、調略を行っています」
「それが、うまく行くと、だいぶ有利にことが運ぶな、引き続き頼む」
「はい。
それとフレイヤを通じて、ミゼル王国の情勢を探っていますが、同国はアムゼント帝国への対応で良くも悪くも、ガームダム王国に関与することは出来そうにないようです」
「それに関しては、ミゼル王国の関与が無いだけで良しとしよう。
ただ、アムゼント帝国が、これ以上ミゼル王国に食い込むのは避けて欲しいところだ、情けない話、運頼みだが・・・」
「はい。
それとテイザークですが、経済・貿易協定の締結は無事終わっており、造船技術支援、港の建築支援についても合意をすることが出来ました」
「ということは、軍事同盟は、まだ渋られているということか・・・」
「はい、我らの国力、兵力、海軍力が軍事同盟するには値しないと思われているのかもしれません」
「ガームダム王国を統一して、国力の底上げをするしかないか・・・」
「それとカルガポルの貿易状況なのですが・・・」
その後も、二人は夜通しで話をしていた。
アイル城砦では、守将・ウオレス=トールマンは、食堂で副将と憂鬱な酒を酌み交わしていた。
「また、情勢が動き始めた、陛下がエムリア王国の武聖と手を組んだようだ。
エムリアの後ろにはアルタージュ王国がいるようだしな」
「数的にはまだ不利のようですが、武聖の力、どの程度か分かりませんな」
「反面、サルト城砦に籠るグラウド侯が、落ちるのも時間の問題。
そうなれば、やはりバールダム公の有利は決定的なものになる」
兵士が入って来る。
「失礼します」
「どうした?」
「エムリア王国の使者・アルラ=テラレイマ殿が、面会を求めております」
「どうします」
「話の内容は分かるが、とりあえず会うだけ会おう。
客間にお通ししろ」
客間で、ウオレスが待っていると、扉をノックする音がした。
「ルイのアルラ=テラレイマです。
入ってよろしいですか?」
「どうぞ、お入りください」
アルラは、入室すると挨拶した。
「ウオレス殿、お久しぶりです」
「これはアルラ殿、以前よりまた、美しくなられた」
「あら、嬉しいことをおっしゃいますね。
座っても宜しいですか?」
「どうぞ」
アルラは席に座る。
ウオレスが言う。
「それで、ご用件は?」
「はい、既にご存知かと思いますが、陛下とエムリアのアニスティア王女は、親子の契りを結んでおり王太子となっております。
正当な王と後継者があり、私を含む南部の諸侯は、お味方させて頂いております。
また、アルタージュ王国からもそれを歓迎して頂いております。
どうか、ウオレス殿にも我が陣営に加わって頂きたく」
「ふたつ気掛かりなことがある。
一つは、その継承者なるのがエムリアの王女が何者か良く分からないこと。
もう一つは、バールダム公の力は、既に強大であるということだ」
「ごもっともな話かと思います。
ただ、一つ目に関しては、陛下と正式な親子の契りをされていますし、エムリア王家出の者であることに間違いはありません。
また、人柄も出来ており、民の生活や国の発展を優先した政治を心掛けておられます」
アルラが続ける。
「二つ目は、ウオレス殿がついてくだされば、その兵力的な差は、覆せる程度に縮まります。
また、武聖の力は強大であり、軍略にも明るく、幾度の劣勢の戦いを跳ねのけておいでです」
「ふむ。仮についたとして領土の安堵は保証されるのかな?」
「それは勿論です。将軍は、北の守りに欠かせないお方であることは、王国中の者が存じている事実です。
私が責任をもって、そこは保証させて頂きます」
・・・・・・
しばらくの議論の後、ウオレスが言った。
「わかりました、陛下にお味方させて頂きましょう。
バールダム公からは、王都攻略の際は北門を攻めるように言われておりましたが、如何しましょう」
「バールダム公の主力はやはり東ですか?」
「さよう、バールダム公自身が出陣してくるかと」
「それでは、北から東の軍の側面を奇襲して頂けますか?
それに合わせて我が軍も東門より兵を出し挟撃します。
如何でしょうか?」
「ふむ、それであればバールダム公もひとたまりもあるまい」
「では、その手筈でお願い致します」




