ep.71 アムゼント帝国 皇帝
アムゼント帝国帝都・ガルエドにある城の玉座には、豪奢な金髪碧眼の美丈夫が、座っていた。
皇帝・オーラ=ブラウゼである。
脇には長い金色の髪と碧眼の美女、妹で軍師でもあるヒュース=ブラウゼが控える。
オーラが問う。
「ゾルド、未だグレ城砦が落ちぬのはなぜか?」
玉座の前に跪く、中年の男が応える。
「はっ、グレ城砦は、ミゼル王国の防衛の要でもあり要衝、想像以上に守りが固く」
オーラは冷たい目をして言う。
「グレ城砦とお前の首、落ちるのはどちらが早いかな?」
ゾルドは冷や汗を搔きながら応じる。
「必ずや、落としてみせますので、もうしばしお待ち下さい」
「私は気が長いほうではない、下がれ」
「はっ」
ゾルドは、深く一度頭を下げると退出した。
「ヒュースよ、ゾルドも存外、大したことは無いな」
ヒュースは静かに応じる。
「ゾルド将軍は、攻守ともに優れた戦術家であらせられます。
かの御仁を持って落とせないのであれば、他の手を考えなければならないかと」
「お前は、いつも甘いな。
ところで、セリエンを攻めている、ジストのほうはどうなっている?」
「テイザークの非公式の支援があり、トールロイの攻略に思った以上に時間を要したため、これからの攻略になるようです」
「帝国の宿将と言われるわりには、こちらも仕事が遅いな」
「兄上、ミゼル王国は、有能な諸将と頑強な兵を有する大国です。
一筋縄では行かないかと思われます」
「ヒュースよ、つまらぬ正論だな。
そう言えば、エムリアから落ち延びた王女が、ガームダム王国の辺りをハエのように飛びまわっているとの話を聞いたが・・・」
「はい、話は私も聞いておりますが、今は関わる必要はないかと」
「なにも戦を仕掛けるわけではない。
こちらもトールロイを手に入れたのだ、一つ貿易でもしてみるのも面白いのではないか?」
「はい、それは問題ないかと思います。
相手も心情的には面白くはないでしょうが、そこまで子供でもありますまい」
「ただ、お遊びはほどほどに、今は、ミゼル王国に集中すべきかと思います。
こちらも迂闊ですと足元をすくわれかねない相手です」
「たかだかミゼル相手にこのざまか。
まだまだ脆弱だな、我が帝国は・・・」
「・・・・・・」
「時間は限られておるのだ・・・」
「時間ですか?」
「ヒュースよ、覚えておけ、我、この世に生を受けたからには、覇をとるか、地に堕つかである」




