ep.70 情勢分析
それからしばらくして、俺たちはカルガポルでマリーヌと合流した。
俺とレキ、エルマ、マリーヌは、応接室で紅茶を飲みながら話をしていた。
レキが問う。
「それでマリーヌ殿、コルンはどうですかな?」
「コルンは、若干の混乱はありますが、落ち着きを取り戻しております。
キース殿も何をするかよく心得ておられました」
俺は思った。
(キースってあんな野蛮で雑な感じなのに、意外と政治も心得ているんだな・・・)
「それと姉がラベスとラントルに、エムリア王国の傘下に入るように説き伏せに行っております」
「さすがに対応が早いですな。
それが実れば一番被害が少なくてすむ、勝算はおありですかな?」
「ラントルとルイは親しい間柄ですし、貿易の観点からみてもおそらくは大丈夫かと思います。
ラベスは、ラントルが付けば、可能性はございますが、五分五分といったところでしょうか」
「そうですか、朗報を待ちましょう。
そういえばテイザーク筋の情報なのですが、ミゼル王国の港街トールロイが帝国によって陥落したとのことです。
トールロイの主だった者は、船で北のウルカに逃げ込んだそうですが」
エルマが言う。
「そうなると、港の防衛力強化と海軍の創設が必要となるな」
「その通りだ、テイザークとは、経済・貿易協定については、合意の連絡が来ているのだが、その件については、まだ、議会で議論中とのことだ。
ただ、トールロイ陥落の件で、話が進む可能性が出て来た」
「良い方向に進むといいが・・・」
レキが紅茶を一口のみ言う。
「ところでガームダム王国の情勢について教えて頂けないでしょうか」
「ガームダム王国は、3つの勢力があります。
とはいっても、東の城塞都市バギルを拠点とするバールダム=アギレス公爵の一強となりつつあります。
バギルから北のアイル城砦に至るまでを勢力圏においているようです」
マリーヌが紅茶で口を湿らすと続ける。
「正当な王家、リハリド=グレイス王は、病に倒れている上、後継者であった3人の王子と1人の王女は、全員暗殺されています。
王の片腕であったバールダム公の仕業であったようですが、気付いたのは事が全て終わってからのことだったようです。
現在は、王都ケルス周辺の小規模地域のみが勢力圏内です」
「もう一つは?」
「はい、グラウド=ハウマン侯爵です。
バールダム公爵とバギルの奪い合いをしていたのですが、今は劣勢でサルト城砦付近まで押し込まれているようです」
「なるほど、早い話ですが、八軍閥の国を抑えた後は、ガームダム王国へ向かいたいのですが、糸口はおありですかな?」
「まだ、はっきりとは申せませんが、王都にあるのではないかと考えております。
現時点では、まだ情報が足りず、これ以上は・・・」
「分かりました、助かりました」
その後、話が政策内容の詳細になって来たので、俺とエルマは退席した。
俺たちは、ごったがえした、商業地区を見て歩いた。
「更に活気が出てきていますね。
商品の種類も増えて貿易の街らしくなって来ているかと」
「うん、見たことの無い、食べ物とかも並ぶようになったね」
「シアタ、コルン、ルイへの道も解放されたので、ガームダム王国への貿易も盛んになるでしょうね」
「見て、イチゴジャムのクレープだって、美味しそう!」
俺たちは、クレープを食べながら歩いた。
(こうやって見てると、エルマは若い乙女だ、それが戦場に身を置いて剣を振るっている・・・)
「エルマ、世界から争いを無くすのってどうすればいいんだろう?」
「ふふふっ、アニス様、覇道を行かれますか?」
「エルマ・・・」
冗談ぽく笑ったエルマの目は笑っていなかった。




