ep.60 兄弟の会話
テイザークのフォン家の居間では、セキリュウが紅茶の香りを楽しんでいた。
「やあ、アルタージュ産のこれはコクがあるなあ~」
「兄さん、裏で傭兵や物資を支援しているけど、そろそろトールロイが限界なんじゃないですか?」
心配そうに問うのは弟のセイリュウ=フォンだ。
「ジスト=バーグシュタインは、帝国の宿将だ、派手さはないが、確実に追い詰めて来ている、落ちるのも時間の問題だろう」
「そうなるとトールロイを拠点として、テイザークを攻めるなんてこともありうるんじゃ?」
「ありうる、だが、現時点では可能性は低いだろうね」
「なぜです?」
「これからは、対ミゼル王国に戦力を割かなければならない。
仮にテイザークに攻めて来たとして、テイザークとやりあえるほどの海軍力は今の帝国にはない」
セキリュウは、紅茶を飲みつつ続ける。
「ただ、トールロイを手にした後、時間は掛かるが、軍船の増産、海軍力の強化を図ってきた場合は、脅威となりうる」
「どうすればいいのです?」
「軍人の僕が言う事ではないけれど、我々も軍の強化を図ることと、海軍を持つ国との同盟を考えなければならないと思う」
「どの国が?」
「アルタージュ王国、ミゼル王国、クエルス帝国・・・
そう言えばレキから親書が来ていたな」
「え?あのレキさんから・・・」
「ああ、エムリアが、経済・貿易協定、海軍増強支援及び軍事同盟を結びたいとあった。
議会にかけてみるかい?」
「経済・貿易協定はともかく、海軍増強支援及び軍事同盟は、あんな小国と結んだところでメリットが薄いんじゃないですか?」
「それはどうかな?
今は小さい、だが、それが恒久的なものとは限らないさ。
まあ、将来を見越して投資するかは、議会の判断さ」
「う~ん・・・」
「旧市街の妄想癖のある変な男が、小国とはいえ、宰相兼軍師にまでなっているんだよ、セイリュウ、時代は動いている」
セキリュウは、護衛のサーラを伴い、旧市街名物の一つであるケバブバーガーを食べに来ていた。
二人席に掛け、セキリュウは、バーガーを頬張る。
「いや~、やっぱりここのバーガーは美味しいな~」
サーラは、注文したレモネードを、飲んでいる。
「ここのはレモネードもさっぱりして美味しいけどね」
サーラが続ける。
「まさか、皆から誇大妄想癖のレキと言われていたあの男が、一国の宰相とはね」
「僕は彼の友人だから分かるんだ。
彼は、その程度の器じゃない、きっと、もっと大きくなるよ」
「それにしても、あの時のお嬢ちゃん達が、国を興すまでになるなんて、時代が動いているのを感じるわ」
「その通りだ、テイザークも変わっていかないと取り残されることになる。
その時、時代は容赦してくれない」
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『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』




