ep.59 カルガポルの生活
領主の館にある浴場でエルマと湯船に浸かった後、俺は寝室のベッドの上に転がった。
「極楽~」
エルマが言う。
「アニス様、こちらに来てください。
髪をとかしてから横になるのですよ」
「は~い」
俺は面倒臭そうに返事をしながら、エルマの促す椅子に座った。
エルマが、ブラシで髪をといでくれる、本当はこれが大好きだ。
「アニス様、今日も素敵な髪ですよ」
エルマ専用の部屋もあるのだが、俺がわがままを言って、一緒に過ごしてもらっているのだ。
「今日は私が、エルマの髪、といであげるね」
「あら、本当ですか、じゃあ、お言葉に甘えて」
俺は、ブラシでエルマの長い髪をといだ。
「エルマの髪も素敵だよ」
「ふふふ、ありがとうございます」
俺は次こそとベッドで横たわった。
「あ~幸せ~」
エルマが俺の横に横たわる。
俺はいつもねだる。
「エルマ、少しでいいからギュッとして」
エルマは微笑み、抱きしめてくれる。
(これが無ければ、俺はとっくに壊れていただろう、恐怖と後悔、罪悪感につぶされて・・・)
翌日の昼、レッドが美味しい串焼きの店を見つけたというので連れていってもらうことにした。
レッドがあからさまに嫌そうな顔をして言う。
「なんで、俺がオシメも取れてねえガキのお守しなきゃなんねえんだよ」
(おいおい、オシメは取れとるわ・・・)
しぶしぶながら、レッドは、俺をお勧めの串焼き屋に連れていってくれる。
俺たちは、二人掛けのテーブルに座ると、レッドが注文する。
「よお、また来たぜ!
羊の串焼き4本とネギと玉ねぎ串を2本、牛肉串2本、それとビールと羊のミルク」
(お前がミルクだろうな!)
いい匂いを放ち、俺たちの前に串が並べられる。
そしてミルクは当然のように俺の前に置かれた。
「アニス、とりあえず食ってみろよ」
「うん、ありがとう」
俺は、羊肉の串を食べる。
(来た~外カリカリの中ジューシー・・・)
「おいしい~」
「ああ、ビールがうめえ!」
(それは、お前だけだよ!)
・・・・・・
「それにしてもお前チビのクセによく食うよな」
「チビは食わねば育たない」
「そりゃそっか~、わはははは」
(こいつビールでハイになってるな・・・)
「ねえ、レッド、前に言ってた迎えに行きたい人って誰?」
「なんだ、ガキがませたこと聞きやがって」
「いいじゃん、別に」
「しょうがねえな、ミストっていってな、雑技団で手品と歌をやってるんだ」
「港街セビアで歌ってた、あの水色の髪の女の子?」
「ああ、そうだ」
「あんな可愛い子、レッドには勿体なくない?」
「まあ、なんだ、だから俺も大きくなんなきゃ、ダメなんだよ」
「向こうは、ちゃんと気があるの?」
「お、おう、たぶんな・・・」
「はいはい、ごちそうさま」
「お前が訊いて来たんだろ!」
俺は、兵の訓練場へと足を延ばした。
今日は、クラインが稽古の指揮を執っているようだった。
クラインは俺に気付くと稽古を中断し、やって来た。
「これはアニス様、如何なさいました?」
「稽古の様子を見に来たの。
ところで足のケガはどう?」
「はい、もう大方治りましたので問題ありません」
「そう、それは良かった。
稽古の進捗はどう?」
「はい、アルタージュ王国軍の方が、模範となってくれるおかげで、だいぶ動きが良くなって来ました。
また、兵も順調に集まってきております」
「クラインが来てくれて助かることばかりね。
本当にありがとう」
「滅相もございません。
近々、また戦ですかな?」
「レキやエルマと相談してからになるけど、そうなると思う。
備えをお願いね」
「はっ」




