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ep.5 港町トールロイ

 先の傭兵との戦闘の後は、何人か街道を行き交う者もいたが、争いにはならず、俺たちは順調に進んでいた。

 日は昇り、辺りは明るい。

 しばらくして、エルマが前方を指さして言った。


「アニス様、前方にトールロイが見えてきました」


 俺はエルマの脇から前方をのぞき込むと、石造りの壁に囲まれた街が見えて来た。


(中世ヨーロッパの石壁といった感じだな・・・

 と考えると文化レベルもそれぐらいと察するべきか・・・?)


 エルマが恭しい様子で言う。

「アニス様、周囲の者に素性がバレないために、これからしばらくは私のことを姉さんと呼んでもらえますか?

 私もアニスと呼ばせてもらいますこと、ご容赦ください」


「わかった、エルマ姉さん」


「トールロイから船でテイザークへと向かいます。

 着き次第、すぐに港に向かいましょう」


「わかった、それと敬語は不要よ」


 エルマは、少し驚いた顔したが、優しく微笑んだ。


 トールロイの石壁には、大きな木の扉があり、そこから人々や荷車が出入りする。

 今は、門は開かれており、往来はあるものの、戦争の影響もあり、普段よりは数は少ない。


 エルマは、門の前にたどり着くと馬から降り、俺を抱き下ろした後、馬を引き始めた。


 エルマが言った。

「ここからは歩いて行くよ」


 俺は、エルマに付き従うように歩いた。


 門をくぐると港町がひらけて見えた。

 海を背景に、広場にはマーケット、両脇には石造りの建物が軒を並べている。

 戦争の影響があるものの、それでも活気はそれなりにあるようだ。


(けっこう広いし、何より気になるものがたくさんあるな)


「アニス、急ぐよ、今日出向の船を探さないといけないからね」


「分かった、姉さん」

 エルマにたしなめられた俺は、慌てて歩を合わせる。


(観光気分で浮かれている場合じゃないな、今は命が掛かってるからな・・・)


 エルマはこの街を良く知っているのだろう、無駄のない道のりで足早に港を目指している。


「どうだい良いものが揃ってるよ」


「これ美味しいよ~どうだい?」


「今日の宿は決まったのかい?」


 途中、色んな商人に声を掛けられるが、全て無視して進む。


(正直、空腹のため、食べ物屋にはよりたい・・・)


 俺がそう思った時、エルマが串焼き屋の前に止まって、屋台の商人に言う。


「その肉と野菜を刺したやつはいくらだ?」


「1本で銅貨3だ」


「4本で銅貨8なら買う」


「10が限界だ」


「面倒だな9なら買う、ダメなら他をあたる」


「わかった、9でいいよ」


 エルマは、串焼きを4本受け取ると、銅貨を支払った。


 エルマが、串焼きを2本俺に渡して言った。


「時間がないから、歩きながら食べるよ」


 俺は、口の中がよだれで溢れるのを感じつつ、早速に食らいついた。

 もぐもぐ、外はカリカリ、中はジューシーな羊肉だった。


「んっめぇ~」


「えっ?」


「ちょっと熱かった、とっても美味しいよ、姉さん」


「そう、それは良かった・・・」


(あぶねえ、素が出るところだった・・・)


 俺たちはしばらく歩くと、目の前がひらけた、港についたのだ。

 桟橋には、いくつかの帆船が並んでいる。

 辺りでは、船員たちが荷積みに忙しそうだ。


 エルマが、荷運びの指示を出している男に話しかけた。


「テイザークまで行きたいが、乗せてくれる船をしらないか?」


「うちの船はいかねえな。

 悪いが他をあたりな」


「そうか、忙しいところすまない」


「船のことなら、そこの酒場のおやじにでも訊いてみるといい」


「わかった、ありがとう」


 俺たちは他にあてもないため、酒場へと向かう。


「アニス、中で話をしてくるから、少しの間、馬を見ておいてもらえる?」


「わかった」


「でも何かあったら馬なんて放っておいて、私のところに来るのよ」


「大丈夫だよ、だって私も戦力でしょ」

 俺がいたずらっぽく笑うと、エルマも微笑んだ。


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