ep.4 戦力として
女傭兵の鋭い槍の斬撃をエルマは剣で受け止めた。
「今のを受け止めるとは、へえ、やるね」
「善良な行商じゃなかったのか?」
エルマは、騎乗で剣を構えながら言った。
「今の時勢、エムリア王国の方から女二人が来たら、高確率で落ち延び人だ。
報奨金の対象か、そうでなければ奴隷にしちまうのが普通だろ」
「お前の普通は異常だな。
つきあってはおれん」
言うや、エルマは馬を走らせた。
「逃がすかよ!」
女傭兵も馬を走らせ、並走させてくるや、槍を薙ぎ払う。
エルマの剣が再び槍をはじく。
(この傭兵、なかなかの手練れだ。
私の利き手と反対側に執拗に馬を付けてくる)
エルマは振り切ろうとするが、女傭兵はしつこく追撃し槍を振るう。
何合もの金属の合わさる音が響き渡る。
俺の視界は、さらにやばい状況になるものを捉えていた。
(やばい、敵が向こうから二騎来るぞ・・・
一つは剣、一つは弓か!)
ひゅっと音がしたかと思うと矢が頭上を越していく。
女傭兵が叫ぶ。
「へまして私に当てるなよ!
馬を狙え!」
俺は、片手でエルマを持ちつつ、上半身を後方に向けると、矢をつがえた男の傭兵が叫ぶのが見えた。
「次は外すかよ!」
ひゅっという不吉な音とともに矢が、馬の尻に目がけて飛来する。
「アニス様!」
エルマは叫ぶ、
(俺がいるから、そこはエルマの剣が届かない・・・)
俺は風を切り飛来する矢をじっと見る。
一瞬感じた。
(まるでスローモーションだ・・・
一か八か・・・)
ビッという音とともに俺は掴んでいた、矢を・・・
矢を放った男が愕然とした顔をするのが見えた。
もう一騎の男の傭兵が、剣を振りかざして後方より迫りくる。
(追いつかれる!)
その瞬間、俺は指で挟んで持っていた矢を、脱力した手の振りで傭兵の顔面に向けて放った。
「ぐわっ!」
それほどの威力は無いが、眉間に薄く刺さり、男傭兵は、バランスを大きく崩し、後退する。
再び矢が、背に飛来するが、俺は同様にそれを捉えた。
指で挟んだ矢を、エルマと交戦している女傭兵の背に向けて放った。
女傭兵は、振るっていた槍の石突で矢をはじく、その瞬間、エルマの剣が空いた首を狙い水平に走る。
上半身を後方にのけ反らし女傭兵はかわすが、かわしきれず左肩を剣がかすめる。
(浅い・・・)
女傭兵は、手綱を引き、馬を減速させ、俺たちと間合いをとるや叫んだ。
「攻撃中止!
こいつら二人とも手練れだ!」
エルマは減速せずそのまま馬を走らせた。
俺は後方に、三騎の傭兵が遠のいていくのが見えた。
・・・・・・・・・
しばらく駆け、十分に距離をとった後、エルマは速度を落とした。
「アニス様、お怪我はありませんか?」
「私は大丈夫、エルマは?」
「お気遣いありがとうございます、私も大丈夫です。
アニス様・・・」
(先ほどの戦い、やはり、武聖の血が覚醒したと考えたほうがいい・・・)
「どうした?」
「先ほどはご助力ありがとうございました。
おかげでなんとか退けることが出来ました」
「いや、ただ必死だっただけで、
それに私こそ、エルマを頼ってばかりだ・・・」
「そんなことはありません
先ほどの矢を捉えて反撃されたことや、城を脱出の際の戦闘はお見事でした。
失礼ながら、この先、アニス様を戦力としてみてもよろしいでしょうか?」
(俺が戦力・・・?)
「えっ、まあ、出来る範囲で頑張る・・・」




