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ep.3 記憶喪失?

 俺は、エルマを混乱させるかもしれないと思いつつも訊かざるを得なかった。


「アニスって誰?」


(記憶喪失・・・

 投石を受けたからか、幼い年頃でこのような悲劇を目の当たりにしたからか・・・

 それとも代償?)

 エルマは考えつつ応じた。


「アニスティア=フォン=エーメガルド。

 エムリア王国第一王女にして、武聖の血の継承者。

 それがあなた様です、アニス様」


(俺が王女?まるで冗談の類のようだ・・・

 エムリア王国、少なくとも元の世界で聞いたことの無い国だ・・・

 武聖の血の継承者?前の戦闘でなんか妙に体が動きやすく感じたのはその影響か?)


「戦っている敵は?」


「アムゼント帝国。

 同国の現皇帝は、オーラ=ブラウゼ。

 此度、攻めてきた総大将は、同国将軍のジスト=バーグシュタイン。

 総勢三千対三百の兵力差の劣勢での戦いでした。

 我らは、籠城戦を試みましたが、力及ばず・・・」


「武聖の血とは?」


「エムリア王家の当主となるお方が代々継承されているのですが、世代によりその影響の濃淡に違いがあるそうです。

 亡き王は、それほど濃くは無いと仰ってましたが、それでも一騎当千の武人であらせられました。

 王が病で亡くなったのを機に攻めて来たのではないかと思われます」


「その血が私に?」


「はい。

 王は、アニス様には偉大な血が流れているとおっしゃられ、物心ついた頃から厳しい稽古を付けておられました」


(武聖の血というのは、疑わしいが、その厳しい稽古のおかげでこの体は動きがいいのか?)


「今、私は何歳?」


「アニス様は、十歳です」


(若っ・・・)


 エルマが問う。

「アニス様は、ご両親のことや、国のことなど、なにか覚えておられませんか?」


「残念ながら、何も・・・」


(覚えるというか知らない・・・)


 ・・・・・・・・・


 エルマが小さく呟いた。

「しまった。行商の者か・・・?」


 街道の先から荷馬車が三台向かって来ているようだ。

 荷馬車の両隣には、騎馬が二騎ずつ付いて護衛をしているようだ。


(小規模な行商人のようだが、こちらは女二人、余計な気を起こさなければよいのだが・・・)


「アニス様、良くない気配がすれば駆けますので、しっかりつかまっておいて下さい」


 俺は、エルマにギュッとしがみついた。


 俺たちは、徐々に行商人の馬車の一行へと近づく。

 その距離二十メートルくらいになった時に、相手の騎馬の一騎が駆けて来た。

 紫のクセのある髪、短槍を手にしている。


 エルマが剣に手を掛ける。


「ちょっと待った!争う気はないよ。

 こっちは善良な行商だからね。

 何か買っていかないかい?」

 声を掛けてきたのは女性の傭兵のようだった。


「いえ、先を急ぐので不要です」


「ああ、そうかいそれは悪いことしたね!」


 言うや、女傭兵は手にした槍で鋭い斬撃を繰り出した。

 エルマの剣がそれを受け止めた。


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