ep.53 八軍閥の国メエラ 攻略戦
八軍閥の国メエラの主都市を守る、守将・ハッサム=ブロインは、憂鬱だった。
執務室のテーブルで紅茶を一口飲むとため息をついた。
「そうでなくても主力がいなくて、兵が少ないというのに・・・」
(お尋ね者を取り逃がしたあげく、多くの兵を失った。
ドワイト様にお叱りを受けるのが目に浮かぶ・・・)
「あ~、なぜ、私が留守を預かっているときに限ってこのようなことが起きるのだ・・・」
扉を叩く音がする。
「入れ」
「失礼します」
兵士が入って来る。
「アルタージュ王国の軍船が2隻接岸し、約200の軍がこちらに進軍中」
「アルタージュ王国がここに進軍だと!
急ぎ、門を閉じ、防衛態勢を取れ!
それと、ドワイト様に早馬を送れ!」
「はっ」
(あ~あ、なんという日だ・・・)
ハッサムは、外壁の城門付近にやってきて、向かい来る軍を見ていた。
時間と共に、軍は城門前に布陣する。
副将がハッサムに声を掛ける。
「ハッサム様、あの旗・・・」
「アルタージュ王国のものであろう」
「もう一つのほうです。
エムリア王国、武聖出陣旗かと」
「アルタージュのホマウド王子とエムリアの王女が義兄妹の契りを結んだとは聞いていたが、そいつらが、ここにやって来たというのか・・・」
「そのようかと・・・」
陣の中から、騎馬に乗った男が出てくる。
「我らは、エムリア王国・アルタージュ王国の同盟軍である。
都市の中の兵が少ないことも知っている。
無駄な争いは好まないので、降伏されたし!」
ハッサムは、副将に問う。
「籠城するとして、ドワイト様は間に合うと思うか?」
「こちらの兵は50とちょっと、厳しい局面ではありますが、2、3日耐えれば、ご帰還されるかと。
そうすれば、こちらは合わせると300になりますので有利になります」
(気が進まないが、戦うとするか・・・
あのドワイト様のために・・・?)
「何物も、この地には踏み入れさせん!
お前達こそ、おとなしく帰るがよい!」
「それが返事か?
後悔するぞ!」
キースは、本陣に戻り、相手が交戦するつもりであることを告げた。
レキが言う。
「降伏してくれれば、楽だったんだが・・・」
エルマが問う。
「アニス様、宜しいですか?」
俺はうなずいて叫んだ。
「ここからの戦いは、傭兵団・紅い髪の少女ではなく、エムリア王国としての戦いである。
攻撃を開始せよ!」
エルマが叫ぶ。
「前衛進軍開始!
梯子隊前へ!
弓兵は、矢を放ちけん制せよ!」
物陰から見ていたレッドが言う。
「はじまったな。
梯子が掛かり次第、一気に飛び出すぜ」
スワリスが応じる。
「昨日の仕返しも兼ねて暴れてやろうかね」
傭兵が言う。
「どうする?
開門を狙うか、この前のように梯子を守るか?」
「相手の人数は多くねえ、門を開いてやろうぜ!」
「よし、今だ!」
スワリスが言うと同時に、レッドを先頭に一斉に走り出す。
レッド達は、敵の脇をすり抜けて、一気に門へと向かうと、外壁の階段を駆け上がった。
「な、なんだ?」
門のハンドルを守る兵は、3人、不意をついたレッドは、剣を二振りで、首と腕を吹き飛ばした。
スワリスが突きで一人を倒す。
「なんだ貴様ら!」
気が付いた兵が叫び、兵士たちがやって来る。
「俺とスワリスで守る、お前らは門を開けろ!」
傭兵たちはうなずきハンドルを回し始める。
「前面は俺だ!」レッドが飛び出す。
槍の突きをかわすや、下段、敵の足を叩き切る。
「ぎやあああ」
悲鳴を上げて兵士が転がる。
次の兵士の鼻を、剣の柄で打ち付け、怯んだ隙に胴を水平に切る。
血しぶきが舞う。
「次!」
迂回してレッドをかわした兵士とスワリスが打ち合う。
スワリスが薙ぎ払った槍を、相手は剣で受け止める、石突で相手の顔面を狙うが、バックステップで躱される。
相手が剣を振るあげ切り下すと見せかけて、突きをくりだす、スワリスが槍を回転させるようして弾く。
「へえ、やるじゃない」
「門は開けさせんぞ!」
ゴゴゴゴゴ、鈍い音がして門が開門した。
エルマが叫ぶ。
「門が開いた突撃せよ!」
「私に続け!」
俺を先頭に騎馬隊が一斉に突っ込む。
騎馬の突撃が、歩兵を弾き飛ばした。
(ほとんど、兵がいないな・・・)
「まて、降伏する!」
城門の上から男の声がした。
「降伏だ。
全員、攻撃を停止せよ!」
ハッサムが叫ぶと、兵たちは、剣を下ろした。
スワリスと剣も交えていた中年の男が言った。
「なんだ、せっかく楽しくなって来たって時に、終いか」
「あんた、強いね、名は?」
「オリバ=アルガセリン。
お前は?」
「スワリス=メルティガ。
あんた傭兵かい?」
「なぜわかる?」
「太刀筋が行儀悪い」
「ふん、人のことが言えた義理か」
「腕を見込んで、うちで雇いたい。
悪い話ではないだろう?」
「こっちは降伏したのだろう?
断る義理もないが、俺は高いぞ」
「雇い主はお姫様さ、なんとでもなるだろうさ」
エムリア・アルタージュ同盟軍は、次々とメエラの門をくぐった。
これは、エムリア王国が陥落以来、はじめて領土を手に入れた瞬間であった。




