ep.52 8対33の死闘
尻軽男亭の二階が宿屋になっていた。
部屋は狭く、一部屋に二人が限界だったので、俺たちは四部屋を借りていた。
レッドはスワリスと同じ部屋で、床に転がっていた。
ベッドに寝転んだスワリスが言った。
「あんたもベッドに入ったら、どうだい?
私はかまいやしないよ」
「俺は馬車の床でよく寝てたから、こういうところで平気なんだ」
「まっ、無理にとは言わないけどね。
ところであんた、女を抱いたことはあるのかい?」
「ねえよ、そんなもん」
「じゃあ、教えてあげようか、私の体で?」
「そんなの、いらねえよ」
「うぶだね、あっはははは」
「うるせえっ!」
時間は深夜2時になった。
兵長の男が言った。
「お前らは入り口を固めろ」
「はっ」
兵士たちは、兵長に従い、酒場へと入る。
「スワリス達は、端から4つ目までの部屋を借り切っていて、一番端にスワリスがいる。
まずは、その部屋からはじめろ、スワリスは手練れだからな。
それと全員殺してかまわん、行け」
兵たちは、物音を立てずに、部屋の前に行くと静かに扉を開ける。
「抜いてるからには、殺されても文句はねえよな」
声がした瞬間、兵士の体を剣が貫いた。
「みんな起きな!! 敵襲だよ!!」
スワリスが叫ぶ。
「なんだてめえら!」
「殺せ!さっさと殺せ!」
状況は分からないが、各部屋から金属音と怒号が聞こえはじめた。
レッドは、廊下に出ると、不意をうたれてうろたえる兵士の喉を水平に切り裂いた。
「どけ」
そいつを押しのけて、次の兵士に切りかかると、打ち合いになる下段で相手の攻撃を受けた時、レッドの顔の横から短槍が飛び出し、相手の男の顔面を貫いた。
スワリスの槍だ。
「礼はいらないよ」
レッドが、顔面から血を噴き出す相手を蹴飛ばすと、手すりを越え、一階の床に叩きつけられた。
レッドは、隣の部屋に入ると狭い部屋でつかみ合いになっている兵士の背後から刃を突き立てた。
「こいつら手練れだ、一旦さがれ!」
兵士たちは、強敵とみるや、一旦間を取ろうと、一階へとさがっていった。
スワリスが叫ぶ。
「みんな無事か?」
「ああ、なんとかな・・・」
「こっちは一人殺られた・・・」
部屋から、傭兵たちが剣を手に出て来た。
スワリスは、傭兵たちをちらりと見た。
(一人殺られ、一人が腕を負傷・・・)
兵長が言った。
「武器を捨てて降伏せよ!
そうすれば命までは奪わん!」
「命を奪って降伏を勝ちとってみろよ」
レッドが不敵に笑う。
レッドがゆっくりと階段を降りると、兵士たちも後ずさりする。
「投降しろ!」
「行くぜ!」
レッドは、半包囲する敵に突っ込むと鋭い突きで、胴を貫く。
側面から襲い来る刃を、抜いた剣で受け止める。
背後から迫る敵には、短槍が弧を描いて側頭部を打ちつけた。
血をまき散らしながら兵が吹っ飛ぶ。
「簡単にはやらせないよ」
他の傭兵たちも突撃し打ち合いとなる。
酒場内を金属音が激しく響き渡る。
「何をしている囲いこんで始末しろ!」
兵長が叫ぶ。
レッドは、眼前の敵を切り伏せると、落ちている剣を拾い二刀となる。
切り込んでくる剣を受け止め、もう一方の剣で斜め袈裟に切る。
次の敵を突き、受け止められると、もう一方の剣で側頭部を打ちに行く、かわされるが、前蹴りで吹き飛ばした。
スワリスはテーブルを蹴飛ばし、相手が怯んだ隙に突きを刺し込んだ。
兵士と打ち合う傭兵の後ろから他の兵士が切り込む。
別の傭兵がタックルをして、吹き飛ばしそれを救う。
酒場には、血と死体、そして痛み呻く兵士で溢れた。
レッドが息を乱さずに言う。
「半分以上は、殺ったかな?」
「そうだね、まだぜんぜん食いたりないけどねえ」
スワリスが、呼吸を乱しながら応じる。
兵長は思った。
(スワリスは手練れだが、あのガキは化け物だ・・・)
「いったん、撤退だ、援護を要請するぞ!」
兵長が叫ぶと、兵士たちは酒場から我先に出て行った。
スワリスは残った仲間をみた。
(犠牲は2人か・・・)
「とにかく、私らも逃げて、姿を隠すよ!」
レッド達も酒場を後にした。




