ep.51 港町アケンからの出港
俺たちは、西への十数日の行軍を経て港町アケンへとたどり着いた。
アケンは、セビアよりも小さな港町であったが、それでも田舎の漁村とは違い、商船や軍船が停泊している。
グルガスが言う。
「姫殿、船の準備は既に出来ております
乗船なさいますか?」
「レッド達を待たせるわけには行かない
早く出発しましょう」
二隻の軍船にわかれて俺たちは、乗り込み、帆をあげた。
俺とエルマには、一部屋の船室があてがわれた。
「次の戦いは、自分たちの拠点を得るための戦い、今までとは少し意味が違うね」
「そうですね」
「ねえ、エルマ、侵略されて故郷を追われた私たちが、故郷を取り戻すために他国に侵略するってどうなんだろうね?」
「それは・・・」
エルマが顔を曇らせた。
「本当は嫌だろうけど協力してくれるエルマに感謝している。
この責任は、全部、この選択をした私のもの、エルマじゃないよ」
「アニス様・・・
いえ、その責任、私も一緒に背負います」
「ありがとう。
でも、これは、王女として私が背負わなければならないものなの。
そうで無ければ、一緒に命を懸けてくれる人達に申し訳が立たない・・・」
(そう、この責任は俺が背負うべきもの、エルマや他のみんなに背負わせるものではないんだ・・・)
湿っぽくなったので俺は話を変えた。
「そう言えば、イズアラを出立するとき、ホマウド様が愛しの妹よ~とか言って、何度も抱き着いて来たのが、面倒だったな~」
「ふふっ、そうでしたね。
殿下はよっぽどアニス様がお気に入りなのでしょう」
「お気に入りか・・・」
(本当にウザかった・・・)
レッドたちは、ガームダム王国のサルト城砦を抜け、南下し八軍閥の国メエラへと無事たどりついていた。
安宿兼酒場の尻軽男亭で、レッド、スワリス達、八人の傭兵が食事をしていた。
スワリスが、ラム酒を飲みながら言った。
「明日か明後日には、アニスたちが来るから、それまで目立つことやらかすんじゃないよ」
「そうだぜ、気を付けろよ」
「レッド、あんたが一番心配なんだけどね」
別の傭兵がラム酒を手に言った。
「それにしてもラッキーだったな。
メエラの主力が、隣のカルガポルとの小競り合いで出払ってるみたいだしな」
レッドが言う。
「今なら、俺たちだけでも、制圧できるんじゃないか?」
「こらこら、私がさっき言ったこと忘れたのかい?
余計なことするんじゃないよ」
「分かってるよ」
骨付きのスパイシーチキンにかじり付いた。
少し離れたところで飲んでいた男が、席を立ち勘定をすると酒場から出て行った。
男は、大通りを抜けて、兵士の詰め所に入った。
詰め所の兵士が言う。
「なんだ、お前、今日は非番じゃなかったのか?」
「以前に野盗をやってたスワリスが、尻軽男亭にいる。
俺の兄貴もあいつに殺された」
「あのお尋ね者、証拠にもなく戻って来やがるとはな」
「あいつは手練れだ、仲間含めて8人いる、兵は集められるか?」
「多くが出払っているが、かき集めれば、3、40はいるだろう」
「よし、集め次第、寝込みを狙って確保しよう」
「ああ、罪人たちだ、殺してもかまわん・・・」




