ep.42 首都イズアラ
アルタージュ王国・首都イズアラの城の玉座の間では、ルカセン=バイヤーグンが、まずそうに葡萄酒を飲んでいた。
「まずい酒が続くな・・・」
ルカセンは、アルタージュ王国の第一王子でホマウドの兄、王国の東を領土としており、スレン城砦を奪還されたとはいえ、首都イズアラも抑え戦略的には未だ優位に立っている。
また、第一王子であることから、王位継承の正当性を訴えていた。
この年、38歳で野望と活力に溢れている。
脇に立つ、将軍兼参謀・マルセル=クライアスタが、応じる。
「まさか、あのドロイゼン将軍が討たれるとは予想できませんでした」
マルセルは、歴戦の名将で謀略にも長けている。
先王、死去の際には、葬儀の守備と称してルカセン軍を首都にいれ、そのまま占拠したのもこの男の策である。
ルカセンは苦々しい様子で言う。
「此度は、ホマウドのやつが滅亡した小国の小娘と義兄妹になったとかいうではないか。
バイヤーグン家の面汚しにもほどがある」
「ですが、武聖の力を侮ってはなりません。
ガルム平野会戦及びスレン城砦での戦いでは、人を超えた強さであったとの報告も入っております」
「ふん、血で髪が染まるから、紅い髪の少女か、まるでおとぎ話だな・・・」
しばらくすると、女将軍・カトリーヌ=ボースターブが、玉座の間に入って来た。
「申し上げます。現在、首都周辺地域は未だ我らが制しており、商人、傭兵の流れも滞りございません」
「ここでの戦もそう遠くはなかろう。
しっかり準備しておけ」
「はっ」
マルセルが声を掛ける。
「カトリーヌ殿。御父上のことは残念だったが、あまり気負わないようにな」
「はい、ご配慮くださりありがとうございます。
ですが、私は問題ございません、殿下のご期待に応えるまでです」
(父上の無念は、私が必ず・・・)
首都イズアラの酒場・愛しいあの娘亭では、傭兵たちがたむろっており、物々しい雰囲気が漂っている。
一つのテーブルでは8人組の傭兵たちが食事を楽しんでいた。
女傭兵が麦酒を飲みながら言う。
「なかなかいい雰囲気の酒場じゃないか、酒もまずくて最高だね」
男傭兵が言う。
「まあ、姐さん、我慢してくださいよ。
どこも傭兵で溢れていて、宿とるのも大変なんですから」
少年傭兵が言う。
「おい、目的を忘れんなよ。
第一が城門、それが無理なら外壁の上で味方が上がって来るのを援護」
女傭兵が、ウサギ肉の香草ソテーをフォークで刺して食らいつく。
「そんな話を今するかね?
忘れる訳ないだろう、それに城門も援護も両方してやれば報酬アップだ。
それぐらい出来るつもりでやらないでどうするんだい?
お前、女抱いたことないだろ?」
「はぁ?いきなり何だよ?」
「あそこが小さいと言ってるんだよ」
周りの傭兵たちが大笑いする。
「うるせえ、面白くねえよ」
そう言うと少年傭兵は、スパイスの効いた骨付きチキンにかぶりついた。
「しっかり食って大きくなれよ」
「だからうるせえって」




