ep.37 傭兵団創設
翌朝、ホマウド軍は、スレン城砦奪還のために、5000の兵を動かした。
スレン城砦は先の戦闘でかなり破壊されているので、その修繕が済む前に叩くという戦略である。
バロックからスレン城砦までは約5日の行軍となる。
俺たちも当然に従軍していた。
1日目の行軍が終わり、野営地で俺とエルマ、レキが食事の準備をしていると、レッドが十人ほどの男たちを連れて来た。
「よお、アニス、連れて来たぜ」
「えっ?誰なのその人たち?」
「俺たちの仲間候補だ」
「仲間?」
キースが言う。
「おいおいレッド、俺たちに嬢ちゃんの子守りでもしろってのか?」
エルマが厳しい口調で言う。
「アニス様に失礼な」
キースは考える。
(レッドはもとより、この姉さんも相当の手練れだな、あっちの男は参謀と言ったところか・・・)
「なあ、武聖のお嬢ちゃん、あんた何したい?
失った国を取り返したいってのか?」
レキが割って入って来る。
「現在、軍の再編をしている。
先の目的は軍事機密いえ明かせぬがな。
求める人材は少数精鋭だ、お前達こそ、子守りをするだけの実力があるのか?」
「こいつらの実力は俺が保証する」
レッドが言った。
「おじさん、私はね、仲間や民、大陸の人々が少しでも安心して暮らすことが出来る世界が来ればいいなって思っているの。
私の子守り、命懸けで大変だと思うけど、付いてきてくれると嬉しいかな」
・・・・・・
少し間があってからキースが笑いながら応えた。
「はっはっは、命懸けの子守り依頼か、面白え依頼が舞い込んで来たもんだぜ。
いいだろう、俺含めて11人だ、お前らの団に入れてもらおうか。
俺はキース=オルバンだ、こいつらのまとめ役みたいなもんだ。
ちなみに団名は何だ?」
「団?」
(そんなの俺らにあったか?)
レキは、アニスが戦場から戻って来たときの姿を思い出していた。
「傭兵団・紅い髪の少女だ。
お前たちを歓迎する。
キースには、十人隊長として引き続きそいつらの面倒を頼む」
(傭兵団・紅い髪の少女? 初めて聞いたぞ、エルマのことか?)
エルマが確認する。
「アニス様、本当に宜しいのですか?」
「うん、仲間が増えて嬉しいよ」
レキが言う。
「キース、早速だが、腕があってある程度は信用できる傭兵を紹介して欲しい」
「どっちかだけならともかく、どっちもとなるとそう簡単じゃねえからな・・・」
別の傭兵が言う。
「そういや、スワリスを戦場で見かけたぜ」
キースが言う。
「おいおい、スワリスは、腕は確かだが、性格がな・・・」
「性格が少し歪んでるが、いい女だ・・・」
「会って判断したい、紹介してくれるか?」
「分かった、会ったら声かけておくぜ」
エルマが言う。
「我が団では、名を貶めるような略奪、暴行の類は一切許可しないのでそのつもりでいて貰おう」
「いいだろう、その代わり働いた分はきっちり払って貰うぜ」
「そのつもりだ」
キース達が自分たちの野営場に戻っていった後、エルマはレキに話しかけた。
「私たちは、いつから傭兵団・紅い髪の少女になっていたのだ?」
「さっきだ。
団が無いのに入れも何もないから、とっさに思いついた」
「紅い髪の少女って私のことではないだろうな?」
「アニスのことだ、戦場帰りのアニスを傭兵風に表現したつもりだ」
「アニス様に失礼ではないか?」
「傭兵団だ、それくらいおどろおどろしい方が向いているさ。
それにアニスは洒落が分かる子だ。
それよりも人数規模と資金だ、まずは百人程度には増やさなければならないし、資金も今回の活躍で相当出るがまだ不十分だ」
「そのために、ホマウドに協力している」
「その通りだ、あいつは野心家だが、金払いは悪くないしな」
「そう言えば、ホマウドからアニス様と義兄妹の契りを結びたいとの申し出あったのだが、どうすべきか?」
「ほう、そんな申し出が?
今はまだだ、後のカードとしておいておこう。
少し考えたいとか言って引き延ばしておけばいいさ」




