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ep.36 戦勝祝い

 敵は総退却を開始し、戦況は掃討戦に突入していた。

 ホマウド軍は、逃げ惑う敵兵を背後から討ち取っていく。


「終わった・・・」


 俺は、グルガスを伴って、本陣へと帰還した。

 俺の白い髪は、紅に染まっていた。


(殺した・・・何人殺したのかも覚えていない・・・)


 俺は、呆然と空を見上げた。


「いや、見事であったぞ、さすがは武聖の血の継承者だ!

 此度の戦、我が方の完全勝利だ!」

 ホマウドが、歓喜の声を掛けて来た。


 俺はじっとホマウドを見つめた。

 ホマウドが見つめ返す。


「アニスティア王女、あなたは、強くて、そして美しい」


(はぁ?

 こっちは必死で、死にそうで、しんどい・・・)


 俺はホマウドに一礼した後、レキに声を掛けた。


「レキ、エルマとレッドは?」


「エルマは、まだ前線で指揮を執っているはずだ。

 レッドは、まだ戻っていないが、どうやら総大将を討ち取ったようだ」


「レッドが総大将を・・・

 それは、すごい・・・」


 ・・・・・・


 しばらくしてエルマが本陣へとやって来た。


 将軍・ティノールが声を掛ける。

「カリンズ殿、見事な指揮でしたな」


「もったいないお言葉、恐縮でございます」


「エルマ、無事だったのね、よかった・・・」


「アニス様もよくご無事で、戦場に出られたと聞いて心配しておりました」



「よお、アニス。

 そっちも派手にやったみたいだな」


 レッドがやって来た、全身血でずぶ濡れだ。


「レッドも無事でよかった~」


(俺も大概だが、こいつも相当だな・・・)


 参謀・ノベアスが言う。

「皆さん、とりあえずは血と汗を洗い流して、戦勝の祝杯をあげましょう」




 俺たちは一旦、バルロックへと入り、簡易的であるが戦勝式が行われた。

 俺は、純白のドレスに着替えさせられていた。


(着せ替え人形じゃないんだが・・・)


 一通りのあいさつと勲功が述べられた後は、無礼講の自由な時間がやって来た。

 ホマウドは、俺がお気に入りなのかずっと隣の席にいる。

 逆隣にいるエルマも少し困り顔だ。


「アニスティア王女、この度の活躍には本当に感動したぞ。

 強くて、美しいまるで芸術じゃないか」


「はあ、ありがとうございます。

 そう言って頂けると嬉しいです」


(もう何度目だ、この手の会話・・・)


「この小さく、繊細な手で、どこにあのような力を秘めているのか」

 言いながらホマウドは、俺の手を握る。


(キャバ嬢じゃねえよ・・・)


 ホマウドが真顔で言う。

「そこで私から提案なのだが、アニスティア王女、私と義兄妹の契りをしないか?」


「えっ?」


(はぁ?)


「すぐに答えを出さなくても良い。

 配下の者ともよく相談してから返事してくれればよい」


「お言葉ありがとうございます。

 配下の者と相談の上、あらためて話をさせて頂きます」



 レッドは、自由時間になるとともに、窮屈な会場である城の食堂を抜け出していた。


 城の外では、傭兵たちがあちこちで円陣を組んで騒いでいる。


 レッドは、一人で飲もうと酒場に向かっている時に、円陣を組んでいる傭兵から声を掛けられた。


「レッド、こっちに来て一緒にやろうぜ」


 振り返ると、戦場で一緒に戦ったあの中年の傭兵だった。


「おお、おっさん、景気よさそうじゃねえか」


「お前ほどじゃねえけどな、まあ、悪くはねえさ。

 とりあえず座れよ」


 レッドは、十人ほどのその円陣に入った。


「まあ、景気づけだ」


 レッドは、渡された安物のラム酒を飲む。

「う~、染みるな~」


「俺はキース、この十人ばかりの奴らを率いて小せえが傭兵団をやっている」


「へえ~、そうなのか」


(みんな、そこそこ腕が立ちそうな奴らだな。

 戦場でも何人かは見た顔だ・・・)


「俺は、腕のある奴しか仲間にしねえからな、なかなか団が大きくならねえ」


「そいつはいい考えだな、すぐ死ぬ奴に入られても困るだけだからな」


「その通りだ。

 そこでだ、ぜひお前と一緒に戦いてえ、仲間にならないか?」


「悪いな、俺は既に仲間とつるんでるからな」


「そうか、それじゃあ仕方ねえなあ・・・」


 レッドは考えた。

(いや、待てよ、逆にこいつらを俺らの方に引き込めないか?

 腕は確かな連中だ・・・)


「なあ、キース、お前らまとめてうちに来ないか?」


「お前のところに?

 俺たちをまとめられるほどの人物かよ?

 俺たちはお行儀が悪いぜ」


「うちのリーダーは、たぶん俺よりも相当強いぜ」


「お前より強いのか?

 どんな化け物だ?」


「武聖とか言われてる奴だ。

 もちろん働けば報酬は出す。

 どうだ?」


「安くはねえぜ俺たちは。

 俺たちが入るに値するか、一度会ってから決めるでいいか?」


「ああ、その方がお互いにとっていいだろう。

 相性ってものもあるからな」


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