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ep.35 ガルム平野会戦2

 ルカセン軍の将軍・ドロイゼン=ボースターブのもとに兵士より報告が入る。


「右翼のアスセンド千人隊長が討ち死に!

 右翼に大きな混乱が生じております」


 傍らに付く副将が言う。

「閣下、このままでは敵左翼より側面攻撃を受けますぞ」


「慌てるな、中央軍は我が方が押し込みつつある、このまま中央突破をはかる。

 念のため、ガーゼン隊を敵左翼に備えさせろ」


「はっ」



 ホマウド軍の中央軍では、ホマウドが兵士の報告を受ける。


「中央第一防衛ラインが崩されました!」


 次に来た兵士が報告する。


「中央第二防衛ライン苦戦、第三防衛ラインへの援護要請有り!」


 ホマウドは、唇で人差し指を噛みながら言う。

「う~む、中央が崩され始めておる、左翼の戦況はどうなっている?」


 ・・・・・・


 しばらくして兵士がやって来る。


「敵右翼の将・アルセンド=オルテイを討ち取ったとのこと!」


「左翼がやったか!」


 将軍・ティノールが叫ぶ。

「左翼はすぐに敵中央軍に攻撃を仕掛けよ。

 雑魚には構うな!」


 独特な角笛が鳴り響く。


 ホマウド軍左翼とルカセン軍の右翼、中央軍防衛隊が入り乱れての混戦となっていく。


 兵士が報告に来る。


「中央第三防衛ライン崩されました。

 最終防衛ラインが交戦中!」


 参謀・ノベアスが言う。

「殿下、このままでは左翼が中央を叩く前に、我が中央軍が突破されますぞ!」


「予備兵力を防衛にまわすしかあるまい」


 レキが進言する。

「恐れながら、アニスティア様に百人お貸し願えないでしょうか。

 敵を押し返しに掛かります」


「いいだろう、グルガス百人隊長、アニスティア王女の指揮下に入れ」


「はっ」


「アニス行けるか?」


「行ける、私は行ける」


(怖いがやるしかない・・・)


「私に続け!押し返すぞ!」

 俺は叫ぶと馬を走らせた。

 それにグルガス率いる兵たちが続く。


 最終防衛ラインの崩れかかっているところに俺は突っ込んだ。


「えいっ!」


 他の兵とやりあっている敵兵を側面から短槍で突き刺して仕留める。


 反対から向かってくる敵の剣を石突ではじき態勢を崩させると、短槍を180度回転させて左肩から胴にかけて切りつけた。

 血しぶきを頭からかぶる。


「押し返せ!」


 俺は、敵の指揮を執る百人隊長らしき者を見つけ、短槍を手に突進する。


 護衛する3騎が向かってくる。


「なんだこのガキは?

 さっさと討ち取れ!」


 1騎目、突いて来る槍を、体を反らして躱し、斜め下から顎を吹き飛ばす。


 2騎目、上から振り下ろされる偃月刀を、槍を掲げて受け止め、回して払いのけると石突で側頭部をぶん殴る。


 3騎目、突いて来る槍を、左手で受け止めて、引き寄せて相手の態勢が崩れたところで、胸を突く。


「こいつ化け物か!」


 俺は鮮血のトンネルを抜け、敵の百人隊長に切りかかった。

 百人隊長は、槍でそれを受け止めるが、その反動で態勢が崩れる。

 俺は、空いた脇腹へ槍を突き刺した。


 百人隊長は、馬から落ちてもがいている。

 俺は、上から背を貫いた。


 槍を抜くと、血が噴き出した。


 右側面! 俺の顔に向かって飛んで来た矢を左手で掴み、近くの敵兵に投げると背に突き刺さった。

 振りかえったその顔面を槍が貫く。


 俺が付けた傷口を、グルガス達百人隊が、広げていく。


 敵に明らかに恐怖が芽生えはじめ、敵が後退を始める。

 後退するもの、前進するものが入り交じりルカセン軍の中央軍は乱れに乱れ始めた。



 ルカセン軍・将軍・ドロイゼンのもとに兵士から報告が入る。


「中央軍前衛が押し返され混乱が生じております」


 次の兵が来る。


「敵左翼によりガーゼン百人隊長討ち死に!」


 ・・・・・・


 副将が言う。

「閣下、このままでは前方と側面から挟み撃ちに遭いますぞ!」


 ドロイゼンは、静かに言う。

「全軍、撤退する。

 今日の戦いは、明日の戦いで挽回すれば良いだけのことだ」


 ・・・・・・


「閣下、お逃げ下さい!」


「何事だ!」


「傭兵かと思われますがあっ!」


 そう報告した兵士の背に矢が突き刺さる。


「逃がさねえよ、おっさん!」

 馬も全身も血まみれの少年が剣と斧を振るってやって来る。


「何者だ、貴様!」

 副将が剣を抜いて立ちはだかろうとする。


「おっと、お前さんの相手は俺だぜ」

 髪を振り乱した中年の傭兵がぼろぼろの剣を振りかざしながら突進し打ち合いとなる。


 ドロイゼンが問う。

「若いな、名は?」


「レディアス=ローベルク、行くぜ!」


 ドロイゼンは、剣を抜くとレッドに向けて水平に剣を走らせる。

 レッドの剣がそれを受け止めると同時に斧で手首を叩き折った。


 ドロイゼンの右腕がだらりと垂れ下がる。


「ぐう、強いな・・・はははははっ

 我、地に堕つか・・・」


 投げた斧が腹に突き刺さり、水平に走る剣が、首を飛ばした。


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