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ep.34 ガルム平野会戦1

 遠くに見える小さな人の集団が、徐々に大きくなって来る。

 ルカセン軍5000の軍団が、左翼、右翼、中央軍の陣形を整えて進軍して来たのだ。


 隣で震える傭兵にはお構いなしでレッドは言った。

「あの数のやつら全員が俺をぶっ殺しに来るのか、面白え、やってやるぜ」


 逆隣の中年の傭兵が言った。

「威勢のいい声がするかと思ったら、ガキじゃねえか。

 そんなに張り切ってたら、小便漏らすだけじゃすまねえぞ」


「言ってくれるな、おっさん。

 俺はレッド、一生忘れられない名前になるぜ」


「バカもここまで行くと大したもんだ。

 まあ、せいぜい死なねえこったな」


 エルマは敵兵を見つつ思った。

(戦の指揮を執るのは、城が陥落したあの時以来か・・・

 ここから、始めるのだ・・・)



 ルカセン軍・総大将・ドロイゼン=ボースターブは、戦巧者の異名を持つ60歳手前の初老の将軍である。


「ホマウド様は、スレンが落ちてもまだ諦めぬのか・・・

 同じ国の軍がぶつかって喜ぶのは他国だというのに、分からんお人だ」


 傍らに控える副将が言う。

「閣下、敵中央軍に見慣れぬ旗が・・・」


「確認せよ」


「はっ」


 ・・・・・・


「閣下、確認したところ、あの旗は、エムリア王国・武聖出陣時に用いる旗のようです」


「エムリア王国の武聖だと・・・

 なるほど、落ち延びてホマウド様を頼ったか」


「如何致します。

 武聖が相手となると兵たちの士気にも影響が出るやもしれません」


「やることは変わらん。

 士気が高い今、全軍を前進、押しつぶす」



 ホマウド軍中央軍では、俺の傍らにレキが控えており、正直心強い。


「アニス、大丈夫か?」


「うん、大丈夫、いざとなったらいつでも行けるよ」


「強くなったなアニス」


「みんなのおかげだよ」



 ホマウドがティノールに手をあげて合図を送る。


 将軍ティノールが叫ぶ。

「弓隊、放て~!」


 ホマウド軍から一斉に矢が放たれると同時にルカセン軍からも矢が放たれ、両軍に出血をしいた。


 ルカセン軍の全軍が前進してきて圧迫してくる。


 ティノールが叫ぶ。

「前衛部隊は、前進、応戦せよ!」


 両軍の前衛部隊がぶつかり、金属音と怒声が混ざり合う。


「始まりやがった」

 レッドが不敵に笑う。


 ・・・・・・


 エルマは、自軍左翼と敵軍右翼との接点を注意深く探る、どこかに歪みが生じないか・・・


 ・・・・・・


(ん!?

 右前方に小さいが歪みが出来た!)


 エルマが叫ぶ。

「縦隊、右前方へ突撃せよ!

 続け!」


 エルマの後を、騎馬を先頭に歩兵も続く。

 騎馬の突進力が歪みのある敵前衛を食いちぎった。


「そのまま、突撃せよ!」


 縦隊は、敵右翼本体に突撃を敢行する。


「どけどけ!」

 レッドは、馬を駆り、右に左に剣を振るうと歩兵を鮮血とともに吹き飛ばす。


 エルマが敵騎兵と打ち合いになるが、レッドは構わずエルマを追い抜き、右翼の将へと向かう。


「俺に続け!

 狙うは敵将の首だ~!」


 縦隊はレッドに続き突撃を続ける。

 想像を超えた突撃の強靭さに、敵右翼の動きに乱れが生じる。


 レッドは、その乱れを感覚的にとらえて、隙に切り込む。


 騎兵が立ちふさがる、槍の斬撃を剣で受け止めるや、脇で槍を抱えて折る、そのまま相手の喉を突き刺す。


 血が舞い、レッドの顔面を濡らす。


「突撃~!」


 エルマも相手を切り伏せ、レッドに続く。


「行け、あの少年に続け!」


 レッドの前に右翼の将であろう千人隊長らしき男が現れた。

 護衛に騎兵四人が張り付いている。


「いかせんぞ!」


「知るかよ!」


 敵の槍を剣で受け、突くが受けられる。

 相手が水平に切り込む、剣を縦にして受け、そのまま剣を回して槍をはじくと水平に走らす、男の首が吹き飛んだ。


 横からの別の騎兵が槍をしごいて来るが、エルマが立ちはだかり、打ち合いとなる。

「行かせん!私が相手だ!」


「ガキ、やるじゃねえか!」

 中年の傭兵が騎兵とぶつかる。


「行けえ~!」

 他の傭兵たちも騎馬へと切り込む。


 レッドは、敵将に突っ込む。


「俺がレッドだ~!」


「ふん、下賤の輩が・・・」


 敵将は、槍でレッドの馬を突く、レッドは馬を槍の方向に突っ込ます。

 その勢いで、馬の胸に槍が深々と突き刺さる。


(抜けぬ・・・)


 馬がいななき立ち上がるよりも早く、レッドは馬の背から宙を舞い、敵将の頭に強烈な一撃を振り下ろした。


 ガゴン、鈍い音


 兜ごと頭が変形し脳しょうがこぼれ落ちた。


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