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ep.38 あの日の傭兵

 翌日も俺たちはスレン城砦に向けて行軍をし、夕方になったので野営を始めた。

 キース達も近くに野営を設置している。


 俺とエルマはテントの中で体を拭いた後、エルマが髪を櫛でといでくれる。


「久しく湯に浸かっていないので、湯船に入りたいですね」


「うん、そうだね」


(そういや、こっちに来てから湯に入ってリラックスとか無かったな・・・

 温泉のもとを入れて浸かるのも考えると結構贅沢なのかもしれない)


 テントの外からレッドの声がする。


「串焼きが出来たぜ、出て来いよ!」


 俺とエルマが、テントの外に出ると、レッドとレキが焚火を囲んでいた。

 焚火の周りには、羊肉や干魚、野菜の串焼きが地面に刺さっている。


「わあ、美味しそう」


 俺は近くにある石の上に座ると、エルマが取ってくれた干し魚の串焼きを食べた。


(香草と塩がきいて美味しい・・・)


 レッドは、地面に座り込み、ラム酒を飲みながら、羊の串焼きを食べている。


(うわっ、美味そうにやってるな、そう言えばレッドって・・・)


「レッドっていくつなの?」


「ん? 俺か、14だぜ」


(酒飲んだらダメなやつだろ・・・

 いや、この世界に飲酒の年齢制限の法律があるのか?)


「じゃあ、私も一杯飲みたいな~」


「アニス様、どうぞ」


 エルマが、ヤギのミルクを持って来てくれる。


「ありがとう、エルマ」


(越えられない壁がある・・・)



「おい嬢ちゃん」


(ん?)


 キースが声を掛けて来た。

「腕の立つ傭兵を連れて来たぜ」


 キースの後ろから四人、傭兵が姿を現した。

 一人は紫色のクセのある髪をした女傭兵だ。


 女傭兵とエルマの目があい、場が膠着する。


「お前は!」

 二人の声が揃う。


 キースが問う。

「なんだ知り合いか?」


 エムリアから脱出した後、すぐに戦闘になったあの女傭兵だった。

 仲間の一人の額には傷があり、俺が投げた矢が刺さった痕だ。


 女傭兵は笑いながら言った。

「なんだい、あの時の続きでもやりたいのかい?」


「なんだ喧嘩か?

 だったら俺も混ぜろよ!」

 レッドが訳も知らないのに入って来る。


(ややこしい・・・)


 エルマは考えた。

(腕は確かだが、性格に難があるか・・・)


「キース、この娘たちの仲間になれって話かい?」


「ああ、そうだが。

 嫌なら無理にとは言わねえよ」


「いや、私はいいよ。

 払うもの払ってくれるならね。

 それにそこの男前が気になるしね」

 女傭兵は、レキのほうに目配せをした。


「どうする嬢ちゃん?」


(俺が決めるの・・・?)


 俺はエルマのほうを伺った。


 エルマが言う。

「腕が立つのは分かる。

 だが、信用できるのか?」


「金と勝利が続くなら裏切らないさ。

 でもねお嬢ちゃん、信用がそんなに大事なんだったら傭兵稼業なんてやめちまいな」


 レッドが口を挟む。

「いいじゃねえか、分かりやすくて。

 もし、おかしなことすれば、俺がたたっ切ればいいんだろ?」


「言うね、ぼうや」


「ああ、それだけの腕があるからな」


「今は腕の立つやつが欲しい。

 アニス、いいだろ?」


(レキがそう言うなら、いいか・・・)


「いいんじゃないかな」


「よし、これで決まりだ。

 名は?」


「私はスワリス=メルティガ、こいつらは・・・」


 ・・・・・・


「これから、よろしくね」


(なんか、色々と大変だな・・・)


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