ep.31 西領の主
俺たちは、武器を没収された後、城の兵士に促され、客間から謁見の間へと移動していた。
なお、俺だけは、事前に別室にて女官によりドレスに着替えさせられていた。
(俺への配慮なのか? ホマウドへの配慮なのか?)
謁見の間の前には番兵が二人おり、俺たちが到着するとさっと扉を開く。
謁見の間は、石造りに赤いカーペットが敷いてある。
奥の玉座に座っているのが、アルタージュ王国の第二王子にして西領の主・ホマウド=バイヤーグンであろう。
両脇には、ノベアスと将軍であろう武官が控えている。
(ヤバい、緊張する・・・
でも、舐められてはいけない・・・)
玉座に近づくと、俺以外の者は、跪いた。
「私が、アルタージュ王国の正当な後継者・ホマウド=バイヤーグンである。
エムリアの王女よ、よく訪ねて来てくれた」
ホマウドは、そう言うと俺をジッと見ている。
(ほう、まだ幼いがかなりの美形ではないか・・・)
「お初にお目にかかります、ホマウド様。
私は、エムリア王国・第一王女・アニスティア=フォン=エーメガルドです」
俺はエルマに教わった通り、ドレスを両手で持ち、一礼する。
「エムリア王国に、これほど美しい王女がいるとは、知らなかったな」
「恐縮でございます」
「早速だが、大方の話はノベアスより聞いておる。
亡命ではなく、同盟をお望みとのことだな」
「はい」
「ところで武聖の血とは、本当の話なのであろうな?
その力が本物でなければ、同盟の前提条件が崩れることとなる」
「お疑いですか?」
「なにせ、私は見たことがないのでな。
試しても?」
「はい、構いません」
(マジか・・・)
脇に立つ武官が叫ぶように言う。
「グルガス百人隊長入れ!」
扉が開くと、筋肉質の中年の男が木刀を2本持って入って来た。
「お呼びですか?」
(俺は呼んでねえ・・・
て言うか、マッチョじゃねえかよ、大人気ねえな・・・)
「うむ、武聖殿の力を見せて頂くことになったので、お相手せよ!」
「はっ!」
そう言うと、グルガスは、俺に木刀を手渡し、一礼した。
俺も軽く会釈して返す。
俺とグルガスは、謁見の間の中央に立たされ、お互いに剣を構える。
ノベアスは、二人を見合う。
(グルガス百人隊長は、わが軍の猛将、アニス様はどう出るか?)
グルガスは、片手で剣を持ち振り上げ、空いた手を前に出し、間合いをはかる。
(なかなかの手練れ・・・)
端で見ているエルマは思った。
俺は、剣を正眼(中段)に構える。
武官が叫ぶ。
「はじめっ!」
グルガスが、一気に詰め寄ると、持ち前の力を活かして縦に横にと斬撃を繰り出す。
俺は、上下中段にて、それを受けとめるが、相手の剣圧で後ろに押される。
「よく凌いでいるが、防戦一方ではないか」
ホマウドは、肘を玉座につきながら、ほくそ笑んだ。
グルガスの、上段からの斜め袈裟切り・・・
俺は、上段でそれを受け流す、と、グルガスの体が少し前方に流れる、瞬間、
俺は宙に飛び、後ろ回し蹴りをグルガスのあごに叩き込んだ。
ゴッという音がすると、グルガスが前方に倒れこみ、俺はすかさず側面に飛び間合いをとる。
ホマウドが、呆然とその光景を見ている。
ヒューッ、レッドが小さく口笛を鳴らす。
しばらく間があってホマウドが言った。
「見事だ・・・」
俺は、再びドレスを持って一礼した。




