ep.29 ホマウド軍の参謀
俺たちは、ノベアス=ギルティード一家を護衛し、港町セビアに戻って来た。
俺とレッドが気に入った馬を選んだ後、レッドは、余った馬と武器を売りにマーケットへ出ていった。
ノベアスは、ケガをした使用人たちを医者に連れていくため、その後に星のしずく亭の食堂で待ち合わせをすることとなった。
星のしずく亭は、一階が食堂、二階が宿になっているが、月光亭より高級感がある。
壁や床も清掃が行き届いており、テーブルにはマットが敷かれ、ベッドも清潔だ。
ノベアスが来るまで時間があるので、星のしずく亭の前で俺は拾った短槍の動作を確認していた。
(穂先があるから杖とは少し違うが、大まかには同じような動作が使える・・・)
小さい子供が器用に短槍を使うからか、雑技と思われたのか、見物人が出て来たので、そろそろやめ時かなと思った時に、レッドが帰って来た。
「へえ、アニス、いい動きしてるじゃねえか」
「え、うん、ありがとう。
馬とか武器うまく売れた?」
「おお、大漁だぜ!」
(剣の腕も、商魂もたくましいな・・・)
夕方になるとノベアスが、星のしずく亭に姿を現した。
妻子は二階の宿に行ったようだ。
俺たち四人とノベアスがテーブルに着くと、ノベアスが食事を注文してくれる。
「白身魚の辛みスープ、羊肉の串焼き、香草の牛肉と野菜炒め、チーズピザ、葡萄酒を二杯とやぎのミルクを三杯貰えるかね」
(うまそう・・・)
「俺もミルク枠かよ・・・」
レッドは少し不服そうだ。
(ミルクは美味しいよ、ぼうや・・・)
ノベアスが改まった様子で言う。
「あらためて、この度は助けて頂き、ありがとうございました。
おかげさまで妻子ともに無事にここへたどり着きました」
「いや、当たり前のことをしたまでですよ」
(レキ、お前は何もしてないだろう)
そうこう言っていると、食事が運ばれてきた。
「さあ、どうぞお召し上がりください」
「いただきます」
俺とレッドの言葉が被る。
俺は羊の串焼きを取るとかじりついた。
(ミルクじゃなくてビール飲みてえ・・・)
レッドは、牛肉と野菜炒めをとるや、ガツガツと食らいついた。
レキがワインを片手に問う。
「ところでギルティード殿は、エルマやアニスとは知り合いだったのですか?」
「はい、以前に大使としてエムリアに派遣されていたことがありまして、その際にアニスやエルマとも会ったことがあります。
アニスの御父上にも懇意にして頂きました」
外では、正体をさらさないように、アニスとエルマを呼び捨てにするようにノベアスに事前に話をしていた。
エルマが問う。
「ギルティード殿は、何用でセビアへご家族と来られたのですか?」
「大きな声では申せないのですが、いよいよスレンの情勢が悪くなって参りましてな。
このままだと、バルロックが戦場になるのも時間の問題なのですよ。
そのため、セビアの領主に軍事、資金の援助の要請と合わせて家族を避難させていたのです」
「なるほど、今のお話からするとギルティード殿は、西領に属しておられるようですな」
「はい、西領の軍参謀を拝命しております」
「軍参謀を・・・」
「ところで、アニスたちは、なぜ、アルタージュ王国へ来たのかな?
亡命ですかな?」
レキが言う。
「いえ亡命ではなく、ホマウド殿に同盟を結んで頂こうと思って参りました」
「ほお、亡命ではなく同盟、ルカセン様でなくホマウド様に・・・」
「はい」
「同盟の内容とは?」
「当方に存亡の危機が生じた場合の支援、私兵団創設の容認と支援、武功に応じた資金援助」
「見返りはなんですかな?」
「西領に存亡危機が生じた場合の支援、武聖をはじめ我らの軍事支援、少数ですが、実力は見ていただけはずです。
また、エルマはロイヤルナイトゆえ将の器量を持ちます。
如何ですかな?」
「なるほど、断れば、ルカセン様のほうに行かれるのかな?」
「それは、結果を受けた後に考えることです」
「わかりました、私の一存では決めかねますので、ホマウド様にご判断を仰ぎます。
よろしければ明日の出発にてバルロックへご同行頂けませんかな?」
「アニス、エルマ、それでいいな?」
「ええ」
エルマが頷く。




