ep.27 野盗の襲撃
緊急事態につき、ノベアス=ギルティードは、港町セビアに馬車を走らせていた。
馬車は2台、ノベアスとその家族、主要な使用人だ。
(街まであと少しなのに、こんな事になるとは・・・)
ノベアスは、歯ぎしりをした。
腰にある使い慣れない剣を振るえた手で触る。
(わ、私が戦わないといけないのか・・・)
走る馬車を、10を超える野盗が取り囲んでいる、護衛についていた兵士は、ほとんどが討たれ、残すは2騎のみ。
ダン、馬車に矢が刺さる音がする、もう何本射られているか分からない。
「お父様、私たちどうなってしまうの?」
昨日15歳になったばかりの娘が不安そうに訊いて来る。
「あなた、私も武家の妻、辱めを受けるくらいなら、いつでも覚悟は出来ています」
妻は、自害に備え短刀を手にしている。
「あなたも辱めを受ける前に私がこの手で楽にしてあげる」
妻が娘に言うと、娘は泣きながら言う。
「お母様、私、まだ死にたくない・・・」
先程までしていた金属を打ち合う音が止んだ。
馬車の外から太い声がする。
「お前らの護衛は全滅だ!
おとなしく馬車を止めて降りてこい!
さもないと馬を殺して馬車をすっころばすぞ!」
それでも馬車は走り続ける。
後方から馬のいななく声と、馬車が転がる大きな音がする。
後方の使用人たちが乗った馬車の馬が殺されたのだろう・・・
「旦那様、これ以上は無理です。
降伏致しましょう・・・」
御者が、ノベアスに言った。
「諦めるな!走れ!」
「ぎゃ!」
声がすると、ドサッ、前方から人が落ちる音がする。
(御者がやられたか・・・)
馬は、徐々に速度を落としていく。
「私が戦う」
ノベアスは震える声で言った。
「お父様が戦っている間に私たちは、神様のところ行くのよ!
さあ、こちらへおいで!」
「いやだ、死にたくない!」
「若い女の声がするぞ!
これは、股がうずくぜ~!」
俺たちは、港町セビアを出発し、バルロックに向かっていた。
黒い馬には、俺とエルマが、白い馬にはレキとレッドが乗っていた。
前方から砂埃と怒声が聞こえてくる。
「馬車が襲われている!
レキ、馬から降りろ!」
レッドが叫んだ。
レキがいそいそと馬から降りるや、レッドは馬を走らせた。
「エルマ、私たちも!」
エルマは少し戸惑ったが、俺の意見に従い、馬を走らせた。
(馬が止まるか、馬車が倒れるか・・・)
ノベアスは剣を握りしめていた、汗で滲む。
妻は、娘を殺そうと手を引くが、娘は必死に抵抗している。
(まさに地獄絵図だな・・・)
「なんだ、お前は!
ぐわっ!」
(先程の野党の声だ、様子がおかしい)
「お前たち死ぬのは少し待て!」
ノベアスが叫ぶと、妻と娘はへたり込んだ。
金属の打ち合う音がする、誰かが野盗と戦ってくれているのだ。
(助けが来たのか、それとも他の野盗と獲物の奪い合いか?)
ノベアスがそっと馬車の外をのぞくと、白馬に乗った日に焼けた少年が剣を振るうと、短槍を持った野盗の腕が吹っ飛んだ。




