ep.25 軽業師の少年
露店のテーブル席でレキとガンザは、酒を酌み交わしていた。
ガンザは、ラム酒を胃に流し込むと言った。
「なるほど、そういう事情で旅か。
セキリュウにえらいものを押し付けられたものだな、ぐははは」
「まあな、だがあの二人は若いのによくやっているよ」
そう言うとレキは、豚バラ串を口に運んだ。
「まだ幼いのに大したものだ」
「なあ、ガンザ、一つ力を貸して貰えないか?」
「なんだ、わしらの持ってる情報ならさっきのぐらいだが・・・」
「そうじゃない、これからは戦いの連続になる。
この辺りで誰か信用できる手練れを紹介してくれないか」
「お前の話からすると相当の手練れでなければ死んじまうな」
「ああ、欲しいのは相当の手練れだ」
ガンザは少し考えた上で、言った。
「うちのレッドが、そろそろ独立することを望んでいる」
「レッドって、あの軽業師のぼうずか?」
「ああ、わしらの旅も危険なものだ、あいつも相当腕をあげて来た。
そろそろ本当の旅をさせる時かもしれんなあ」
「そうか、レッドなら信頼できる。
あいつが望むならぜひ一緒に来て欲しい」
翌朝、ガンザ雑技団のメンバーは、馬車の整備や荷物の買い出し、搬送など明日の出発に向けての準備をしていた。
ガンザは、馬車の横で椅子に座り、朝のお茶を楽しんでいた。
「団長、話って何だ?」
そう言ったのは、茶色の短髪で日に焼けた、活発そうな少年だった。
「おう、レッドか。
実はな、お前にはそろそろ独り立ちをさせようと思ってな」
「独り立ち?」
「そうだ、レキを覚えているか?」
「ああ、テイザークの?」
「そうだ、レキのやつ、事情があって手練れを探しているらしくてな。
わしはお前を推薦したんだ」
「俺を?
その事情っていうのは?」
・・・・・・
ガンザは、レキたちの旅について説明した。
レッドは、少し考えた様子だったが、言った。
「わかった、いいぜ」
その夜、雑技団のメンバーは食事を終えて、馬車で寝る準備を始める。
馬車に乗る直前、ミストは夜空を見上げて言った。
「今日は星が綺麗だな~」
「おい、ミスト、ちょっといいか?」
レッドは、ミストに声を掛けてきた。
「どうしたのレッド?」
ミストが応じる。
「ちょっと話があるんだ、来てくれるか」
二人は、街の広場にある泉を囲む縁に腰を下ろした。
レッドは、今日、ガンザから言われた独り立ちの話をした。
ミストが応じる。
「それで、レッドは、レキと一緒に旅に出ちゃうんだ」
「まあ、そうなる。
どう思う?」
「どうって?
レッドが決めたことなら、それでいいんじゃないの」
「旅がひと段落着いたら、ミストを迎えに来ようと思っている」
「・・・・・・」
ふっとミストは微笑んだ。
「って、何かおかしいか?」
「年下が生意気だなって思った」
「そ、そうか・・・」
「話はそれだけ?」
「ああ、それだけ・・・」
「じゃあ、馬車に戻ろうか?」
「ああ」
二人は、馬車に戻り歩き始めた。
それぞれの違う馬車に乗るため、わかれる間際、
「さっきの言葉、信じていいの?」
「ああ、もちろん」
「わかった、おやすみ、レッド・・・」
「おやすみ、ミスト・・・」




